4.アレルギー疾患について


<質問> (1) 教育現場における食物アレルギーへの対応について

 全国の学校で食物アレルギーを持つ児童生徒への対応が浸透しつつある中で、小学生の女児が給食を原因とするアナフィラキシーショックにより死亡するという事故が起きた。本県では、アレルギー問題に先進的に取り組むNPOと協働して、教職員に対し、アナフィラキシーショックへの対応方法等について研修を行っているが、今回の事故を受け、児童生徒のさらなる安全・安心のため、これまでの取組を検証することも必要である。
 そこで、今回の調布市の事故を踏まえ、県教育委員会として、これまで実施してきたアレルギー研修の効果をどのように捉え、今後の研修をどのように実施し、同様の事故の発生を防止していくのか、所見を伺う。また、今回の事故では、救急との連携にも課題が残ったと聞いている。教育現場と救急を担う消防との連携も重要と考えるが、併せて所見を伺いたい。


<答弁> 教育長

 教育関係について、お答えします。
 教育現場における食物アレルギーへの対応について、お尋ねがありました。
 今回、調布市で発生した食物アレルギーによる児童の死亡事故を受けて、子どもたちの命を守るためには、緊急時の救命措置を適切に行うことが、いかに重要であるかを改めて認識いたしました。
 県教育委員会では、平成21年度から毎年、教職員が食物アレルギーへの理解を深め、緊急時に適切な対応が行えるよう、NPOと協働して、研修事業を実施しています。      
 この研修では、アナフィラキシーショックの救命措置として有効なアドレナリンの自己注射薬、いわゆるエピペンを、教職員が適切に使用できるよう、医師の指導による実習を行っています。
 これまでの4年間で、公立小学校を中心に2,000名を超える教職員が研修を受講し、緊急時におけるエピペンの使用について理解を深めています。
 実際に、児童のアナフィラキシーの発症に直面した教員からは、研修を受けていたので、落ち着いてエピペンを使用できたとの報告もあります。
 そこで、新年度は、エピペンを処方された児童生徒が在籍する学校においては、子どもたちに一番身近かな学級担任等が、必ず研修を受講するよう、市町村教育委員会等と連携して取り組みます。
 そして、研修を受講した教職員が、校内研修を行い、全ての教職員が対応できるようにいたします。
 また、栄養教諭と栄養職員には、新たに、給食における食物アレルギーに  テーマを絞った研修を行います。
 さらに、アナフィラキシーの発症時には、エピペンを使用するとともに、救急隊員による速やかな処置と搬送が必要ですので、日頃から、学校と地域の消防機関との緊密な連携が重要です。
 そこで、県教育委員会は、エピペンを処方された児童生徒が在籍する学校に対して、保護者の同意を得た上で、地域の消防機関と児童生徒の情報を共有し、緊急時に迅速な対応をとるよう徹底します。
 こうした取組を通じて、食物アレルギーに伴う事故の防止に努めてまいります。


<再質問>
 教育長には、たいへん前向きで、積極的な答弁ありがとうございます。
 以前にも同じような質問をしましたが、教育委員会の取組みが、学校だけでなく、児童養護施設や保育の現場、私立幼稚園などにしっかり波及していくのかどうか。そうした施設は、児童に関する情報も不足しがちであると思いますが、対応についてどのように考えるか、伺います。


<答弁> 教育長
 食物アレルギーの研修ですが、平成21年度から5年間という期間で、市町村教育委員会等と協力して取り組んでいます。
 そうした中で、保育所の職員、公私立の小、中、高等学校、特別支援学校、幼稚園などの教職員も対象とした研修としております。



<質問> (2) アレルギー疾患に対する県の取組について
 本県の食物アレルギー対策に係る研修等については、NPOとの協働事業ということで、その財源を「かながわボランタリー活動推進基金21」とNPOの拠出に頼ってきたが、当該NPOとの協働事業も来年度をもって、終了する。本来、アレルギー疾患に関する正しい知識の普及啓発は、保健・医療行政の役割である。
 適切なアレルギー治療が受けられるよう、医療体制が整備されていることが必要であり、県では医療圏ごとにアレルギー専門医療機関の整備を進めていると承知している。しかし、アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に関する啓発、周囲の正しい理解は重要である。
 そこで、県として今後、アレルギー疾患に関する正しい知識の普及啓発や、患者やかかりつけ医をより専門的な医療機関につなぐための情報提供等が必要であると考えるが、所見を伺いたい。


<答弁> 黒岩知事
 アレルギー疾患は、全人口の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患していると言われており、症状によっては死に至ることもありますが、適切な治療や生活環境の改善によりコントロールできるとされています。
アレルギーの患者や家族の方にとって、予防や症状の軽減に関する正しい知識、また、適切な医療機関に関する情報が重要です。
 こうしたことから、県のホームページで、アレルギー疾患に関する情報提供を行うほか、各保健福祉事務所において相談支援を行っています。
 また、アレルギー疾患専門の医療体制として、中核的医療機関を2機関、地域における専門医療機関を県内すべての二次保健医療圏において29機関指定し、その情報を県民や医療機関に提供しています。
さらに、かながわボランタリー活動推進基金を活用して、NPO法人と協働で保育士等を対象とした研修や、県主催で保健師等を対象とした講習会を実施しています。              
加えて、ぜん息の発作や急激なアレルギー反応が起きたときに、かかりつけ以外の医療機関でも迅速かつ適切な治療を受けられるよう、患者本人の具体的症状や治療薬等を記入できる、携帯用カードを作成、配布しています。
 来年度も、アレルギー疾患の正しい知識の普及と、適切な情報提供を行うため、ホームページ等による情報提供の充実や、NPO法人と協働した研修、また県主催による講習会等を継続して実施してまいります。


<再質問>
 アレルギー疾患でありますが、来年度はまだNPOとの協同事業が続いていきますが、それ以降はいったん切れると言うことで、それ以降を私は危惧しているわけであります。神奈川県のアレルギー対策は、おそらく全国でも一番進んでいるのではないかと思われます。
 アレルギーのシンポジウムに参りますと、そこで講演される先生方は、多くは神奈川県と何らかのつながりを持っている先生方が多い。まさに、アレルギー先進県と言えるようになってきたと思えるのですが、この後、どうして行くのかなあと。
 例えば保健福祉局の主たる事業、我々にもご案内いただいていますが、それを見ても、その中にアレルギーという言葉が見つからない。そういう中で、アレルギー対策を本気で神奈川県は、進めていく気があるのかと言うことです。
 例えば、今教育長にもいろいろお答えいただきましたけれども、いろんな部局が絡んできます。もちろん健康増進課、これは保健福祉局、もちろんです。保育であれば次世代育成課でありますし、教育現場であれば保健体育課、あるいは私学であれば学事振興課、様々な部局が絡んでいる。今ご答弁いただいた中に消防というものもある。
 そういう様々な機関・部局が連携することによって、そしてそこに多くの優れた知見を持つ、例えばNPOですとか、専門医ですとか、そういう方々が加わった、緩やかな連携体を作って、これから神奈川県はアレルギー対策の新しい局面に向かって、進んでいくべきではないかと、私は思っているのですが、そこについて知事のご直言を伺いたい。


<答弁> 黒岩知事
 アレルギー先進県として、ご指摘がありました。
 いのち全開宣言という中で健康寿命日本一を目指していこうという流れの中で、例えば医食農同源、そこには大きな意味があるんだと言うことを何度も繰り返し申し上げております。それは、このアレルギーの問題にも通ずる発想ではないかと思っておりまして、その食のあり方、生活習慣のあり方によって、アレルギーにならないような体質を作っていく、というふうな面においてもしっかりと先進的な動きを進めていきたいと考えているところであります。以上です。