5.教育問題(国語教育、ネットいじめ等)について
(2)ケータイというメディアを使ったいじめ問題について。

<質疑>
 学校裏サイトなどの掲示板、プロフィールサイトを使った誹謗・中傷など、いわゆる「ネットいじめ」が深刻化しています。また、プロフィールサイトで個人情報を公開した子や出会い系サイトにアクセスした子が犯罪被害に巻き込まれる事例も後を絶ちません。
子どもたちの有害サイトへのアクセスを制限する方法としてフィルタリングサービスがありますが、それを利用するか否かは保護者の判断に委ねられています。ある調査によると、この1年間でフィルタリングを活用する保護者は急増していますが、それでも小中学校合わせて半数にも満たないというのが現状です。
 「ケータイは人の言葉が自分のポケットの中にまで届く実感がある」という若者の言葉が新聞に掲載されていました。他者を誰も介さずに、相手が直接、自分の身体の中に入り込んでくるダイレクトな感覚は、他のメディアにはありません。ケータイはもはや、青少年にとって身体の器官のひとつになっているといってよいでしょう。人は自分の身体に入ってくる「異物」に敏感です。その「異物」に悪意があれば、取り返しのつかない精神的なダメージを受けることにもなるのです。
 筑波大学大学院教授の土井隆義氏は著書『友だち地獄』のなかで、子どもたちが「(昔とは比較にならないほど)はるかに高度で繊細な気くばりを伴った人間関係を営んでいる」と指摘しています。「教室は たとえて言えば 地雷原」 これはある中学生が創作した川柳であります。クラスメイトから反感を買わないように、浮かないように、常に神経を張りつめていることが、学校生活に不可欠な技術として要求されている。ケータイをひと時も手放せない中高生が最も恐れるのは、お風呂の時間だそうです。入浴中は友だちから届いたメールに即レス、すなわちすぐに返信できないため、その友だちを避けている、あるいは軽んじていると思われてしまうのではないかと不安なのです。
 土井教授はまた、いじめによって自殺に追い込まれた子が、屈辱的な仕打ちを受けながらも、いつも笑顔だった、としばしば言われることに注目しています。おそらく、いじめる友だちも、いじめを眺めている友だちも、みんな笑っていたのではないか、と。その、うわべだけとはいえ和やかな空気を自分が壊してしまうと、もっと嫌われる。その場の空気を読んでノリを合わせる必要があるわけです。まわりで眺めているクラスメイトも、それは同じです。
 そうした、今日的ないじめの構造が、ケータイというツールを得てメールやインターネットの世界に拡散しているのではないかと考えています。




 そこで、教育長に伺います。

 子どもたちを「ネットいじめ」やインターネットを悪用した犯罪から守るためには、その危険性を子や親に教え、フィルタリングなどの対策を進めるとともに、児童・生徒が学校において友だちと直接向き合いながら良好な人間関係を築きあげられるよう指導を行っていく必要があると考えますが、所見を聞かせてください。

<答弁> 山本教育長
 議員お話しのとおり、携帯電話をめぐる問題の背景には、子供たちの人間関係を築く力が弱くなっていることも影響しており、学校教育の中で、特にその点を意識した教育活動の推進が必要であると考えております。
 そこで、昨年度策定した「かながわ教育ビジョン」では、思いやる力、たくましく生きる力、社会とかかわる力の三つの力の育成を掲げ、学校において、自然体験、社会体験活動やボランティア活動、道徳教育の充実など、相手を思いやる心や豊かな人間性、社会性の育成に努めております。あわせて、子供たちが良好な人間関係を築くための環境づくりとして、家族のきずなを深めるためのファミリーコミュニケーション運動や神奈川あいさつ一新運動など、県民運動として幅広く展開しております。
 また、議員のお話にございました携帯電話をめぐって子供たちの間でさまざまな問題が発生している点につきましては、喫緊の課題として、これまでもフィルタリングサービスへの加入を呼びかけておりますが、さらに対策を講じる必要があると考えております。
 そこで、今年4月より、すべての県立高校と希望する小中学校など、合計300校以上の学校で企業協力による携帯電話教室を開催し、使い方のルール、マナーやフィルタリングの重要性など、実践的な指導に努めているところでございます。
 また、児童・生徒の携帯電話の利用状況などの現状を把握するため、今年1月から3月にかけてアンケート調査を実施しております。その結果を踏まえて、情報教育の専門家や携帯電話会社等にもご協力をいただき、この7月に「子どものケータイ安全・安心検討委員会」を新たに設置し、より具体的な対策を早急に検討してまいります。
 県教育委員会といたしましては、こうした取り組みを通じて、市町村教育委員会やPTAなどとも協力しながら、児童・生徒が好ましい人間関係を構築できるよう努めてまいります。