4.地球温暖化問題について
(1)本県における温暖化の具体例と、県民に対する情報の提供について。

<質疑>
 今、地球温暖化問題は、温室効果ガスを削減するという大義のもと、いつしか世界経済戦争の観を呈しております。京都議定書を最大のビジネスチャンスと捉えたイギリスなどEU諸国は、議定書におけるルールづくりで主導権を握り、CO2排出権取引などで巨万の利益を上げようとしています。京都議定書に不参加のアメリカでさえ、シカゴに排出権取引の市場を開設しました。そして、日本はもともとエネルギー効率が高く、さらに
CO2を削減するのは「乾いた雑巾を絞れといっているようなものだ」などとボヤいているうちに、ひとり過重な削減義務を負うことになってしまいました。
しかし、日本には世界一といわれる省エネ・環境技術があります。あとは、いかに、いわゆるポスト京都議定書においてルールメイキングをリードできるか。国益のみならず世界全体にとって重要な局面を迎えていると思います。
 一方、日々の暮らしの中で、さほど現実感が持てないというのも、この問題の特徴です。
ツバルが沈むとか、北極の海氷が減少しているとか、氷河が後退しているなどと言われても、どこか「他人事」という感があります。たしかに、近年、世界中で異常気象と呼ばれる事象が続発していますが、それらについて宇宙物理学者の池内了(さとる)氏は、私たちの記憶のなかにないからといって、「直ちに『異常』と断じ、『地球温暖化のせい』と決めつけてわかった気になる」ことを危うい風潮であると指摘しています。著書の中に「『地球温暖化』が挨拶代わりになってしまい、それが深刻な問題であることをむしろ忘れさせる効果を持っている。つまり思考停止になっているのだ」というくだりがあるのですが、まさに田中美知太郎の自動車の警笛の喩えを思い起こさせます。20世紀が環境破壊の世紀であったことは、紛れもない事実でありますが、「複雑系」と言われるように、地球環境の作用はなかなか分かりにくいものです。私たちは、つい、世界の表面的な事象を鵜呑みにしがちですが、それでわかったつもりになるな、ということだと思います。
 むしろ、私たちは、自らが暮らす郷土・神奈川の環境についてこそ、客観的な事実をしっかりと認識すべきではないでしょうか。
われらが神奈川県の自然環境は、どのように変化しているのか。最新の観測技術を駆使して気温や海面温度、潮位さらには海流の状態などを一定程度把握していることと思いますし、それらの数値は、専門家によって活用され、具体的な知見として実を結んでいるのでしょうが、多くの県民は自分の住む地域の環境がどうなっているのか、知る術を持たないというのが現状です。




 そこで知事に伺います。

 現在、神奈川県の自然環境の変動には、どの程度地球温暖化の影響が見られるのか具体例を伺いたいと思います。また、それらの情報を、一般の人々にもわかりやすい内容とした上で、誰もがアクセスできるようにすべきと考えますが、知事のご所見を伺います。

<答弁> 松沢知事
 まず、本県の自然環境への地球温暖化の影響とわかりやすい情報提供についてのお尋ねであります。
 議員お話しのように、一定程度把握されている気温や海面温度など、身近な変化の中から温暖化と関係のある具体例を抽出し、それらをわかりやすく情報提供することができれば、一般の方々の理解も深まり、個人個人の取り組みにもつながりやすいものと考えます。
 現時点では、都市化の進展などもあり、温暖化による影響であるかどうか明確に判断することは難しいですが、神奈川県内でも幾つかの観測事例を挙げることができます。例えば、横浜地方気象台の観測によれば、横浜の年平均気温は110年間で1.9度上昇しました。また、横浜の桜の開花日は55年間で4日早くなり、逆にイチョウの紅葉日は38年間で25日遅くなったとのことであります。
 このような情報収集を県民参加によって行い、問題への関心を高めてもらうことも考えられます。今年度は県内のNPOが環境省の委託を受け、セミが鳴き始めた日など、身近な自然の変化を調査し、生き物への温暖化への影響などに気づいてもらう事業「いきものみっけ〜100万人の温暖化しらべ〜」に参加する予定であります。
 県といたしましても、こうした参加型の観察活動の成果をPRするとともに、県民の皆さん一人一人に地球温暖化を身近な問題としてとらえていただけるようわかりやすい情報提供を工夫してまいります。