<海外県政調査の報告>

所見または提言……あとがきにかえて(4)

4.だれもが納得できる課税を
 SWEG(南西ドイツ交通株式会社)経営陣の憤懣を聞く限り、その矛先は環境税の税額に向けられたものではない。新税導入の大義に異を唱えているのである。
 自動車等の燃料に新たな税を課すことにより、自動車等の使用を抑制し(すなわちCO2やNOxの排出量を減らし、地球温暖化や大気汚染にブレーキをかける)、一方で、その税収を社会保障の原資に組み入れる(個人や企業の年金保険料等を軽減する)というドイツの環境税は、一見するところ、一石二鳥の名案であった。

 SWEG首脳は、その効果について疑問を訴え、私たちが漠然と「善」なるものと認識している「税制のグリーン化」「税収中立」に対しても、課税の目的が曖昧になると批判を加えている。この税は、公共交通機関には有利に働いているはずで、だから、反対とはいえ一定の評価をしているのではないかと予想していただけに、強硬な反対は意外ともいえる反応であった。税を課す以上、その大義がいかに大切かを痛感した次第である。

 これを神奈川県の水源環境税に置き換えれば、ただ、「環境」や「水源」を叫ぶだけでは、たとえ強行しても異論反論がくすぶるということである。これまで行なってきた「水源の森林づくり事業」の総括、既存事業と新規事業の関連性、それらの事業と財源の関係、自治体間ないしライフスタイルの異なる個人間での公平性の問題……。ひとつひとつについて、県政に携わる者は虚心坦懐に議論を重ねていかなくてはならない。
 たしかに、森林や水源環境の保全・回復は急がれることではあるが、まさに肝に銘ずべきことは「急がば回れ」である。