9.近代美術館鎌倉館の廃止に伴う課題と対応について


 神奈川県立近代美術館は、昭和26年に鶴岡八幡宮の境内に、鎌倉館を開館し、数多く開催してきた展覧会を通して、日本の美術館活動の基盤を形成するとともに、県民に優れた美術作品を鑑賞できる機会を提供してきた。この間には、昭和59年に、「鎌倉別館」を、平成15年に、「葉山館」を開館したが、県民からは「近代美術館といえば鎌倉」という印象を強く持たれ、親しまれている。
 一方、緊急財政対策に伴う県民利用施設の見直しの中で、鎌倉館を廃止し葉山館と鎌倉別館の2館に集約するとされたが、私は鎌倉館の廃止は、緊急財政対策ではないと理解していた。
 2館体制は、県民にも大きな影響を及ぼす出来事であり、「かながわ文化芸術振興計画」の中に位置づけていくべきである。

 そこで、近代美術館の鎌倉館を廃止し、葉山館と鎌倉別館の2館で美術館活動を行っていくということだが、どのような課題があり、どのように対応していくのか、所見を伺いたい。


<答弁> 藤井教育長

 近代美術館は、葉山館、鎌倉館、鎌倉別館の3館からなり、葉山館は規模の大きな企画展を、鎌倉館は中規模の企画展を、鎌倉別館は収蔵作品を中心に収蔵品展を行っております。
 また、鎌倉にゆかりのある作家の中規模の企画展は、主に鎌倉館で開催しています。
 この鎌倉館は、平成28年3月末に借地契約期間が満了することや、建物が史跡の中にあり、史跡を保存するうえで、美術館としての改修は難しいことから、活動を終了します。
 鎌倉館が閉館することによって、企画展を開催する会場が減少しますので、県民の方々に鑑賞の機会を確保していくことが課題となります。
 また、鎌倉館には観光に訪れた方も来館されており、鎌倉館と同時に鎌倉別館もご覧いただくという流れがありますので、今後は、鎌倉別館をもっと知っていただき、利用していただくために、より一層の広報の充実と企画展の工夫が課題となります。
 そこで、鎌倉館をはじめ、3館で年間約12回行っていた企画展等の開催回数を維持し、県民の方々に鑑賞の機会を提供していくことが必要と考えております。
 現在、葉山館では規模の大きな企画展を4つの展示室をすべて使って行っていますが、今後は、企画展の規模により、例えば、展示室を2つずつ使って、異なるテーマや作家の企画展を同時に開催するなどの工夫に努めます。
 また、鎌倉別館で収蔵作品を活用した収蔵品展に加えて、鎌倉館で行っていた企画展などをあわせて行う工夫や、これまで以上に近隣の美術館や観光施設との連携を図るなど、多くの方に利用していただけるよう、取り組みます。
 こうした取組を行うことで、鎌倉館が果たしてきた役割をしっかりと引き継ぎ、今後も魅力的で質の高い企画展を開催し、県民の方に親しまれる美術館を目指してまいります。