<海外県政調査の報告>調査の記録

8.ブランド化する農業。(1)

Bio-Gemuese Farm Bärthele
Oberzeller Str. 13, 78479 Reichenau-Insel
Tel:07534/7667 Fax:07534/7858
Joachim Bärthele

バイオダイナミック農法
世界遺産の聖ゲオルク教会
 バーデン・ヴュルテンベルク州の南の端、ドイツ・スイス・オーストリアに湖岸を接する国境の湖、ボーデン湖。その中に浮かぶReichenau(ライヒェナウ)島は、世界遺産の島というので特別な雰囲気を期待していたのだが、ゆるやかな丘と平地が交互に続く島の景色はといえば、畑の中に家が転々と散らばる、のどかな農村なのであった。
 9世紀から12世紀に建てられた3つの教会が、往時の僧院生活を伝える貴重な文化財であるとして、島全体の景観を含めて、ユネスコの世界遺産に登録された。また、Reichen Au(リッチな島)という島の名が示すとおり、古くから肥沃な大地を利用した野菜やぶどう栽培などの農業や、湖での漁業が盛んな島であった。

ビオラントのトレードマーク
 その、ライヒェナウで自然農法を続けている農場がある。Joachim Bärthele氏が経営する<BIOLAND>という有機農法連盟に加盟する農場だ。
 BIOLAND(ビオラント)の淵源は、ドイツの思想家、哲学者で「人智学」を唱えたルドルフ・シュタイナー博士が1927年に始めた「デメーター」という運動に遡る。生命や大地に敬意を払い、星や月の運行を農作業の目安にするデメーターの原理に基づいて、シュタイナーはバイオダイナミック農法を提唱、実践した。
 BIOLANDが設立されたのは、1972年。EUにはいくつか自然農法、有機農法の連盟があるが、主なものは、ドイツとフランスのアルザス地方、北イタリア地方ぐらいにしかない。すべてドイツ語圏なのが面白い。そのなかで最も厳しい規格を持つのが、BIOLANDとNATURLANDという2つのグループである。Bärthele氏は、1995年にBIOLANDに加盟した。

 Bärthele氏に、話を聞いた。

Bärthele氏から有機農法について説明を受ける
「ライヒェナウには、ブドウ栽培を除く専業農家がおよそ100軒あるが、有機農法を行なっているのは4か所しかありません。有機農法はコストがかかります。しかも収量が少ない。値段は高いが、野菜の形は不細工でふぞろいだ。よほど、意識を持った人でもないと買ってくれません。
 出荷量が少ないほうがブランド力が増して、ビジネスになるという人もいますが、BIOLANDをやるなら、儲けは二の次にならざるを得ない。いかに土を、大地を守っていくかが第一の目的なのです。その結果として、我々も安全な野菜を口にできる。
 しかし、いまだに、田舎の人は有機農法だろうがどうだろうが関係ないというところがある。自分で言うのも口幅ったいが、教育の程度に比例していると思います。コンスタンツの人はわざわざ7kmの道のりを買いに来てくれる。コンスタンツでは大学で有機農法の研究・奨励をしていたりと、意識が高いのです。毎月、どこかの学校が、授業の一環として見学に来ますよ」