<海外県政調査の報告>調査の記録

6.ドイツでいちばん美しい村へ。(2)


予約の取れない宿
 Spinnerhof(シュピナーホフ)という名の、山の上のペンションに着いた。雨はほとんど上がっていたが、眼下を見ても霧が立ち込めていて、もちろんストラスブールは見えない。
 アルペンスキーのバーデン・ヴュルテンベルク州チャンピオンだったというオーナー、Rudolf Spinnerさんが、いくつかのキルシュを味見させてくれる。朝食を提供するためのレストランは閉まっていたが、そのバーカウンターでは、4、5人の作業着姿の男たちが、立ったままキルシュを呷っていた。
晴れた日にはフランスのストラスブールが見渡せる山の上のペンション
レストランの奥の酒蔵で名産のキルシュ・ワッサーを試飲(中央がSpinnerさん)
 ドイツでは、ペンションのようにBed & Breakfastのスタイルをとる宿が多い。この、山小屋風の宿も、シャワーだけの質素な造りだが、見晴らしの良い一室をフランクフルトのお金持ちが、通年、借り切っていたりする。
 とにかく、景色が素晴らしいそうで(残念!)、このあたりでは「予約の取れない宿」として有名らしい。

 帰り道、車を途中で止めると、あたりは一面、ぶどう畑である。この村の赤ワインはドイツでも有名という話を聞いたことがある。
 景色は大きな観光資源である。雄大な大自然はもちろんのこと、人間がつくりあげた街並みや田園も多くの人々を惹きつけてやまない。ザスバッハヴァルデンも、家並みや森林、畑など人工の景観が、村の最大の資産になっている。
 この点については、最終章「3.所見または提言……あとがきにかえて」において詳述したい。

 翌朝になっても、雲は低く垂れ込めていた。もっと、この村の風景や空気を味わい、さまざまなことを知りたかったが、朝10時までにLahr(ラール)市の視察先に到着しなければならない。後ろ髪を引かれる思いで、さくらんぼ畑の続く道を南に向かって走った。
出発前にホテルの裏庭を散歩
雨の中、ホテル近くの街並みを視察
早朝から次々と客が訪れるベーカリー。ドイツでは、パン屋さんが一番、早起きと言われる