<海外県政調査の報告>調査の記録

2.泊りがけで行く、近くの田舎。


所見2
都市生活者が憩える場所を
 観光とは、つまるところ、「いい景色と、美味しい食事」ではないかとも思う。景色については、ドイツの田舎は定評のあるところで、このオーデンヴァルトの風景も一級品である。
 一方、ドイツに行く、とか、ドイツに行ってきたと言うと、日本では「でも、ドイツって、食べ物はどうなの?」という反応が帰ってくる。味が濃い、油っこい、量が多いという風評もまんざら外れてはいないようで、最近では、そうした店は若者からそっぽを向かれるために減ってきているらしい。

 今回、私たちは、全行程を通してドイツ料理だけを食べた。ドイツ生活の長い吉永さんは別にして、4人のうち誰かは、途中で不満を言い出すのではないかと心配していたが、杞憂に終った。田舎ばかり回っていたこともあるが、ほとんどの食材がその土地でとれたものだった。
 川魚や猪肉、鹿肉などワイルドな食材とも出会ったが、創意にあふれた調理法が、それらの野性をほどよく包み込んでいて、美味しくいただくことができた。特に、猪肉の生ハムをワインとともに食したときの驚き。日本では(神奈川県も)猪肉といえばシシ鍋と相場が決まっているが、それに勝るとも劣らない名産品になる! と全員の意見が一致した。
 ビールもワインも、地ビール、地ワインが当たり前。地産地消が当たり前。名もないローカルワインが跳びあがるほど、美味しかったりする。旅人にとって、これに勝るもてなしはないと思うが、いかがだろうか。

 私たちは、オーデンヴァルトの姿を、神奈川県の県西部、そして三浦半島地域に重ね合わせようとしていた。ドイツ語でいうLandtourismus(ラントトゥリスム=田園観光)を推進するに足る観光資源、農林水産資源を持っている地域である。景観の立て直しには、これから長い時間を要するが、地物の食材をふんだんに用いた美味しくヘルシーな料理の開発なら、すぐにでも着手できそうではないか。ドイツのファームステイでも、農家のおかみさんと一緒に田舎料理をつくるというプログラムが、うけているのだそうだ。観光振興というと、国内各地や海外からの観光客誘致にばかり目が行ってしまうが、まずは、県内や近県の人々を呼び込む魅力をそなえることだ。近くの人が行きたがらないところに、どうして遠くから客を呼べようか。

 本気で「観光立県」を目指すのであれば、横浜、鎌倉、箱根・湯河原に対する施策はもちろんだが、県央・県西部や三浦半島地域のグリーンツーリズムやブルーツーリズム、アグリツーリズムにも本腰を入れて取り組まなくてはならない。
 さらには、観光振興は、いくつもの分野にまたがる(県庁でいえば、いくつもの部局を横断する)総合的な政策である。全県を挙げて観光の振興を図るために、県として「観光振興条例」を策定することも必要ではないだろうか。「かながわツーリズムの推進」を実効あるものにするためにも、早急に検討に入るべきである。