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2016.03.31 |
平和安全法制の関連法に反対する意見書を国に提出するよう求める複数の請願が、平成27年度中、主に日本共産党系の団体から神奈川県議会に提出され、私が所属する総務政策常任委員会で審査されました。その論旨は、「アメリカが始めた戦争に自衛隊を参戦させる」「日本の防衛上のリスクが高まる」「憲法9条を破壊する」「自公両党による強行採決」など、どれも事実誤認に基づくものでした。私は自民党、民主党委員とともに、そのすべてに反対し、それらの請願は不採択となりました。(政党の呼称は3月15日時点のものです)
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■憲法9条は破壊なんかされていない
憲法9条が認めているのは、自国防衛に限定(専守防衛)した最小限の武力行使。 |
憲法9条では戦争放棄と交戦権否認、そして戦力を持たないことを謳っています。そのまま読めば自衛隊は憲法違反、正当防衛による反撃も“アウト!”となりますが、これまで政府は憲法9条に「解釈」を加えることで、それらを“セーフ”としてきました。
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自衛のための必要最小限度の武力の行使は憲法9条の下でも許されるが、他国防衛を目的とした武力行使、いわゆる集団的自衛権の行使は許されない。=政府の基本的論理
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たとえば、米国領のアラスカやグアムが攻められたとき、「同盟国への攻撃は日本への攻撃と同じ」として、米国を守るために武力を使うのが一般的な「集団的自衛権」の行使です。
→ 「専守防衛」の枠を超え憲法9条違反とされています
「アメリカが日本とまったく関係のない戦争をしているときに、手伝ってくれとか、ミサイルを打ち落としてくれと言われても自衛権は発動できません」(木村草太 首都大学東京准教授)
●新しい平和安全法制も、他国防衛を目的とする、いわゆる集団的自衛権の行使は認めていません。
新しい安保法制の下でも、日本の自衛隊が「自衛の措置」として外国の軍隊を守ったり、一緒に反撃したりできるのは、自衛隊とともに日本の防衛活動にあたっている外国軍に対し武力攻撃が発生し、日本にも武力攻撃の明白な危険が迫ったときだけです。
→ 専守防衛というこれまでの憲法解釈(基本的論理)は変わらず!
●公明党の主張で決定した、憲法9条の下で許容される自衛の措置「新3要件」
@わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係のある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
Aこれを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
B必要最小限の実力の行使にとどめること
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■集団的自衛権が濫用される恐れはない
慎重派、反対派からも「集団的自衛権行使の機会は限りなくゼロに近い」!? |
中国の軍事的台頭と拡張主義、北朝鮮の核武装と弾道ミサイル技術の進化など、安全保障環境が厳しさを増す中、これまでの政府見解と論理的な整合性を保ちつつ、憲法9条の下で自衛の措置がどこまで許されるかを「新3要件」に定め、他国防衛に及ばぬよう厳格な歯止めをかけました。慎重論や反対論の側に立つ識者も、この点については一定の理解をしていただいていると考えています。
「閣議決定は(中略)従来の政府の論理を維持している」「つまり、厳格に運用されれば発動の場面はほとんどない」(元内閣法制局長官 阪田雅裕氏)
「(新3要件の)『明白な危険』『存立を全うし、国民を守る』を普通に読めば、集団的自衛権を行使できる機会は限りなくゼロに近いのではないか」(共同通信編集委員 久江雅彦氏)
「(閣議決定を)文字通り読めば、日本への武力攻撃の明白な危険がない限り、つまり個別的自衛権の行使としても説明できない限り、集団的自衛権は行使できない」(首都大学東京准教授 木村草太氏)
一方で、推進派からはこのような意見も。
「(国民の生命、自由、幸福追求の権利が)『根底から覆される明白な危険』という要件は厳しすぎる。自国のことだけを考えるならば、それでいい。しかし、国際社会全体の協調を考えた場合、果たしていいのか」(元統合幕僚会議議長 西元徹也氏)
●個別的自衛権で反撃すると先制攻撃!?国際社会で認められたルールとは。
日本を守るために一緒に行動している外国の艦船等が攻撃を受けたのなら、個別的自衛権の範囲内で反撃できるという意見もあります。しかし、個別的自衛権はあくまで武力攻撃を受けた国が反撃する権利であり、外国の艦船等への攻撃に対し日本が個別的自衛権で反撃すると、先制攻撃とみなされる恐れも。よって、そうした反撃について「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」(2014年の閣議決定)としたのです。
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■周到な準備で国民と自衛隊のリスクを減らす
攻撃力=矛ではなく守りの盾を固めるための法制。 |
これまで、集団的自衛権の行使に当たる可能性があるとされ、できなかったこと。たとえば、「日本へのミサイル攻撃に備え、公海上で防衛活動にあたる米国のイージス艦上空を警戒し、援護すること」「日米の政府同士が綿密な防衛計画について協議すること」などができるようになります。また、国際社会の平和と安定への貢献が日本の繁栄と安全につながるという観点から、国際平和支援法では、国連決議に基づいて国際平和のために活動する他国軍への後方支援を認めました。
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自衛隊は海外での武力行使が禁じられているため、非戦闘地域における物品・役務の提供や補給、輸送、医療分野での協力に限られます。また、その際は公明党の提案で、国会の例外なき事前承認を必要としました。
●そういえば1992年のPKO協力法のときも……
公明党は憲法9条や自衛隊員の安全に配慮した「PKO参加5原則」を提案し、国民に支持される法案づくりに全力を傾注しました。しかし、このときも共産党や社会党、一部のメディアなどが「子どもたちを戦場に送るな」「海外派兵法だ」と批判を展開し、反対デモが繰り返されました。しかし、その後、 PKOに参加した自衛隊の活動は国際社会から高く評価され、今では国民の9割以上がPKOに賛成しています。
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■世界は評価、野党は廃止の不思議
もし、これが本当に「戦争法」なら、国際社会が許すはずがありません。 |
世界のどこにでも武装した自衛隊を送り、戦争できる国にするのが安保法、と叫ぶ人たちがいます。第二次世界大戦で国内外に大きな犠牲を強いたわが国は、その反省から戦後70年、平和国家として歩んできました。もし、平和安全法制が「戦争法」であったとしたら、国際社会が黙っているでしょうか。
<世界の反応は?>
米国以外でも、EU(ヨーロッパ連合)、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、ポルトガル、クロアチア、キプロスなどの欧州諸国、カナダ、メキシコ、ブラジル、チリなど北中南米諸国、ヨルダン、ニジェール、エジプトなど中東・アフリカ諸国、インド、スリランカ、タイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、フィリピン、インドネシア、モンゴル、台湾、オーストラリア、ニュージーランドなどアジア・オセアニア諸国……このほかにも多くの国々が平和安全法制を国際社会の平和と安定に貢献するものと評価しています。
いっぽう、日米同盟の強化は脅威となる、という中国は反対の論調。また、韓国では、過去の歴史から日本に対し疑心暗鬼の目を向ける論調もありますが、日米韓の防衛協力については肯定的です。
平和安全法制が成立した後も、平和外交は着々と進んでいます。
●国会で平和安全法制が成立した直後、公明党の山口代表が訪韓・訪中。
朴槿恵大統領と習近平国家主席と会談し、安倍首相からの親書を手渡しました。
11月1日には3年半ぶりの日中韓3か国首脳会談が実現しましたが、日本の安全保障政策が問題視されることはありませんでした。平和安全法制が戦争する国にするための「戦争法」なら、国内世論に非常に気を遣う中韓の国家元首が日本の首相と会談することなど、あり得ません。
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