■ 商工労働常任委員会県内調査報告(平成22年8月10日)


 1 調査の概要
  1. 調査箇所
     龍屋物産(株)、(株)ハセテック
  2. 出席委員
     小野寺委員長、高山副委員長、梅沢、新堀、森、作山、関口、亀井、日下、河野の各委員
  3. 調査日
     平成22年8月10日(火)
  4. 行程
     県庁(集合) → 龍屋物産(株) → (株)ハセテック → 県庁(解散)

 2 龍屋物産 株式会社
  1. 調査目的
     龍屋物産(株)は、昭和45年にホテル・旅館への珍味食品納入業務を主体とする営業を開始し、平成2年からはスリランカ国に現地法人を設立し、カシューナッツ及び紅茶の加工・輸出を業務とするなど海外へ事業展開している。一方、障害者雇用に積極的に取り組んでおり、平成22年7月1日現在、従業員79名中、9名の障害者を雇用しており、今後20名まで増員する方針である。障害者の家族や地域の養護学校と連携しながら、健常者と一緒に仕事ができるようにする龍屋物産(株)の社員教育方針は、生活面で障害者の自立を促すものともなっている。
     龍屋物産(株)における障害者雇用の取組を調査することにより、本県の労働福祉対策に係る委員会審査の参考に資する。

  2. 出席者
    龍屋物産(株)関係者
    商工労働局長、企画調整課長、雇用対策課長

  3. 龍屋物産(株)の概要
    ア 商号    龍屋物産株式会社
    イ 所在地   伊勢原市田中803番地1
    ウ 資本金   9,500万円
    エ 従業員数  79名(正社員15名、パート64名)
    オ 事業内容  珍味・嗜好食品の企画及び製造卸、紅茶の輸入卸
    カ 主要取引先 (株)マインマート、(株)やまや、(株)帝国ホテル、(株)東横イン、
            (株)キャメル珈琲、(株)成城石井、セキセー(株) 他

  4. 龍屋物産(株)の障害者雇用の現状について

     ア 障害者雇用に取り組むことになったきっかけ
       約30年前に、発達障害のある15歳の女子を従業員として雇用することとなり
        、仕事のみならず、原付免許の取得や定時制高校への通学を勧める等、生活
       全般についても助言してきた結果、現在では自立した生活を送っている。そ
       の実績を基に、養護学校の生徒を実習生として受け入れ、現在までに自閉症
       を中心とした50名以上の障害者を受け入れている。

     イ 障害者雇用における実情
       養護学校での3年間に一言も言葉を発しなかった者、社員の言葉をオウム返し
       する者、自分の思い通りにいかないとパニックになりひっくり返る者等、自閉
       症は障害の内容や程度は一人一人異なるため、障害者雇用を始めた当初におい
       ては、手探りの状態で社員教育を行っていた。
       その後、養護学校の教員や障害者施設の職員、家族との連携から、障害者と真
       剣に向き合えば、彼らは一生懸命に仕事でこたえようと頑張ることが分かり、
       現在の社員教育の方針が固まっていった。

     ウ 現在の社員教育の方針
       現在では、障害者各人の適性を見極め、会社に貢献するよう長所や能力を伸ば
       す社員教育を行っている。健常者と同じ作業を健常者と一緒に行うようにし、
       また、新しく導入した機器の操作方法を先に覚えさせ、健常者に教えるような
       流れにすることで、人に頼りにされ、自信が付くという好循環を生むようにし
       ている。その結果、大きく成長する可能性を持っていることから、社内では彼
       らを「えいぶるさん」と呼んでいる。
       さらには、家庭や養護学校、施設との連携を重視しており、従業員がその日の
       仕事で学んだこと等を記載し、社員教育担当者が返事を記載する連絡ノートの
       情報を共有したり、保護者参観日を設定する等を行っている。

     エ 今後の社員教育について
       障害者の社員教育を手探りで行い、実績も積み重ねてきたが、現在はそのノウ
       ハウについて体系立てられていない。今後は、組織的に実績を引き継ぐことが
       できるよう、障害者の社員教育を担当する専門のセクションを社内に設置する
       とともに、他社が障害者雇用を実施する際の参考となるよう積極的に公開して
       いく予定である。

  5. 障害者の配属先及び仕事内容
      ○管理部販売管理チーム
       Aさん(男性27歳 勤続6年3箇月)
       ・送り状作成
       ・全国障害者技能競技大会 パソコン操作の部銀賞
      ○製造部製造チーム
       Bさん(男性48歳 勤続7年8箇月)
       ・製造指示書作成
       Cさん(男性29歳 勤続6年1箇月)
       ・シール印字チェック、シーラー機操作、検品、新人指導
       Dさん(男性30歳 勤続2年7箇月)
       ・箱組立、検品、実習生指導
       Eさん(女性19歳 勤続1年3箇月)
       ・袋詰め、シール貼り
      ○製造部仕入・倉庫チーム
       Fさん(男性33歳 勤続15年3箇月)
       ・倉庫作業全般、新人指導
       ・普通自動車運転免許取得済
       Gさん(男性33歳 勤続12年3箇月)
       ・原料計算、原材料在庫確認
       Hさん(男性38歳 勤続3年4箇月)
       ・荷受、出荷
       Iさん(男性26歳 勤続2年4箇月)
       ・荷受、仕分作業
       ・普通自動車運転免許取得中

  6. 調査内容

    ア 委員長あいさつ
    イ 調査箇所側あいさつ
    ウ 調査箇所側より概要説明
    エ 社内視察
    オ 質疑応答
        質 疑 9人の障害者雇用の従業員は、勤続年数も違うが、給料体系はどの
            ようになっているか。
        応 答 彼らがどの程度の仕事ができるかを入社時に判断し、予定給料額を
            決めている。彼らが成功すれば給料を上げていく。一番上で、月
            15万円、一番安い方で月5万円くらいである。
        質 疑 障害には、知的、精神、身体などいろいろ区分があるが、今後の採
            用等をどのように考えているか。
        応 答 知的障害者、中でも自閉症の方の指導について実績があると自負し
            ているので、そのような方を積極的に受け入れたい。過去に11名同
            時に働いていたことがあるが、20名まで受け入れたいと考えている
             。右も左も分からない子がいて大変であるが、仕事を進めていく中
            で彼らの特性を少しずつ見付けていきたい。
        質 疑 教育方法については、ずっと手探りで行ってきたのか、あるいは指
            導員等を呼んだことがあるのか。
        応 答 指導員等に入ってもらったことはない。仕事の実習を入社前にして
            もらっている。
        質 疑 養護学校との連携も大切と思うが、どのような連携をしているのか
             。また、指導する際にどのようなことを特に配慮しているか。
        応 答 平塚養護学校の卒業生を受け入れたときは、先生に月に1回見に来
            てもらった。また、何か問題があればすぐ電話してくださいと声を
            掛けてくれるなど、気に掛けてもらった。指導上配慮していること
            は、良いところを伸ばすということである。やっている仕事がうま
            くいかなくなったときに別の仕事を与えて、それがうまくいくと彼
            らの勇気になる。そのようにして適性を見付けていく。一定の部署
            に留めるのではなく、えいぶるさんの可能性を見いだすことに配慮
            している。

  7. 調査結果
     今回調査を行った龍屋物産(株)における障害者雇用の取組の特徴的な点は次のとおりであった。

    ア 知的障害者、特に自閉症の者の採用を積極的に行い、仕事のみならず生活面でも助
      言する社員教育により、自立した生活を送られるようにするだけでなく、健常者と
      同様、あるいはそれ以上の仕事をこなすまでに成長させている。

    イ 自閉症を有する社員に対する教育について長年の実績があり、今後も受入れを拡大
      していく方針である。

    ウ 養護学校、障害者施設及び家族との連携を密にするため、連絡ノートや保護者参観
      日の設定など、独自の取組を行っている。

    エ これまでの実績を社内で引き継ぐため、今後、専門セクションを設置するとともに
      、他社に積極的に公開する予定である。

     障害者雇用を積極的に進める龍屋物産(株)を調査したことにより、本県における労働福祉対策を検討する上での参考になった。


 3 株式会社 ハセテック
  1. 調査目的
     (株)ハセテックは、大容量半導体の製造、及び同技術を生かした電源機器の開発・製造の技術を保有する世界でも有数の企業となっている。また、経営方針の1項目として「環境への配慮と対応」を掲げ、大容量半導体の技術を生かし、平成17年から電気自動車用急速充電器の開発に東京電力(株)と共同で取り組み、平成20年の洞爺湖サミットでは試作品を会場に設置、平成21年3月から販売を開始するなど、電気自動車用急速充電器の分野でも先駆者として最先端の技術等を保有している。
     (株)ハセテックの大容量半導体製造及び電気自動車用急速充電器における最先端技術、並びに同技術を生かすものづくりの現場を調査することにより、本県の商工業の振興対策に係る委員会審査の参考に資する。

  2. 出席者
    (株)ハセテック関係者関係者
    商工労働局長、企画調整課長、産業技術課長

  3. (株)ハセテックの概要
    ア 商号    株式会社ハセテック
    イ 所在地   横浜市港北区新羽町735番地
    ウ 資本金   2億5千万円
    エ 従業員数  248名
    オ 事業内容    精密板金きょう体等の設計製造
            産業用電源機器の設計製造
            産業用機器等及び機械装置等の設計製造
            電気自動車用急速充電器の設計製造販売

  4. 大容量半導体の製造について
    (株)ハセテックは世界でも有数の大容量半導体製造の技術を保有しており、その技術を活用し、エレベータ駆動用電源、電車の補助電源、医療CT用高周波電源等、大型機器及び高度な技術を必要とする分野の機械に適応した電源機器を自社工場内で開発・製造し、幅広い企業に提供している。(株)ハセテックの大容量半導体製造における最先端技術を生かした電源機器は、電力の損失を大幅に低減するものであり、同電源機器を搭載する大型機器等における電力の効率的活用に大きく貢献している。

  5. 電気自動車用急速充電器について
    (株)ハセテックは、大容量半導体製造の技術を生かし、電気自動車用急速充電器の開発を、東京電力(株)と共同で行い、同充電器の分野で先駆となる技術開発を行った。電気自動車への最大充電については、通常の充電器で7時間程度必要とするが、(株)ハセテックにより開発された急速充電器により、30分程度で充電を完了することができるようになった。さらに最新の急速充電器では、放熱効率を上げることで、開発当初のものより軽量化や省スペース化を達成したものとなっている。これらの技術開発が評価され、世界に発信する神奈川の先端技術としてふさわしい中小企業の事業に対して県が支援を行う平成21年度かながわスタンダードに認定されたほか、平成21年度県・横浜・川崎三首長地球温暖化防止表彰、平成20年度神奈川工業技術開発大賞の地球環境技術賞のそれぞれの受賞へとつながった。

  6. 製品の品質保持について
    半導体製作の技術や電源機器きょう体製作におけるアルミ溶接技術等の製作過程における工程及び、顕微鏡による精密な検品作業の工程等において、それぞれチェック項目を設定しており、高い品質の製品を提供するための高度な体制が整えられている。

  7. 調査内容

    ア 委員長あいさつ
    イ 調査箇所側あいさつ
    ウ 調査箇所側より概要説明
    エ 社内施設視察
    オ 質疑応答
        質 疑 企業の品質及び品質保証の国際規格であるISO9001は平成16年度に
            認証取得されているようだが、環境に配慮した企業として必要とさ
            れるISO14001を認証取得する予定はあるか。
        応 答 ISO14001については資料等を集め、社員のアイディア等を出して
            もらったので、今年度中には取得できる予定である。
        質 疑 製品について海外メーカーとの競合はあるのか。
        応 答 大容量の半導体を作る海外メーカーはほとんどないので、大容量半
            導体やそれを基にした電源機器等について、海外メーカーとの競合
            はあまりない。国内では、三菱、日立など競合メーカーがある。た
            だ、小さい半導体については、シーメンスなどいくつか海外の競合
            メーカーがある。部品ではなく、大容量電源機器など装置として特
            殊なものを製作しているので、今後もそのような特徴を生かしてい
            きたい。
        質 疑 県でも電気自動車の導入を推進しているが、地域産業の活性化とい
            う面から、電気自動車用急速充電器の販売について、今後どのよう
            に展開していくことを考えているか。
        応 答 地場産業の発展という面からも、県には積極的に急速充電器の普及
            を支援してほしい。電気自動車が認知され、急速充電器が普及しは
            じめることで納品単価も下がってきている。電気自動車のインフラ
            整備を県が積極的に行っていただければ、我々をはじめとする地場
            産業の発展につながると思う。

  8. 調査結果
     今回調査を行った(株)ハセテックの最先端技術及び同技術を生かすものづくりにおける特徴的な点は次のとおりであった。

    ア 大容量半導体製造における最先端の技術を保有し、またその技術を常に発展させ、
      ものづくりに生かしていこうという企業理念の下、電源機器等における技術の向上
      に貢献している。

    イ 経営方針及び経営理念に地球環境への配慮を掲げており、電気自動車用急速充電器
      の開発を他企業に先駆けて進め、製品化することで、最先端技術を通じた環境保全
      に貢献している。

    ウ 最先端技術による製品の製造工程や、顕微鏡等を使用した詳細な検品作業における
      チェック項目の設定等により、質の高い製品を提供するための体制を整えている。

     (株)ハセテックにおける最先端技術を生かすものづくりの現場を調査したことによ
      り、本県における商工業の振興対策を検討する上での参考になった。


 <参 考>
  1. 随 行 者
     小栗主査(議会局議事調査部議事課)
     長谷川主幹(商工労働局企画調整部企画調整課)

  2. 調査箇所側出席者
    (1)龍屋物産(株)
       龍屋物産(株)代表取締役社長、同取締役、同管理部長
      ・当局側
       藤井商工労働局長、佐久間企画調整課長、鈴木雇用対策課長
    (2)(株)ハセテック
       (株)ハセテック代表取締役社長、同管理部長、同管理部副部長
      ・当局側
       藤井商工労働局長、佐久間企画調整課長、村井産業技術課長