2009年のメッセージ

 <新しい介護保険のかたち。>
2009.12

 社会全体で介護を引き受けるという理念の下、介護保険制度が導入され10年。しかし、施設に入所できた人はともかく、在宅介護では、今なお家族が重い負担に耐えています。
 特に要介護度が高い重度の人を家庭で介護する場合、仕事を続けることが困難となることも少なくありません。介護保険を使えば自己負担1割で、仕事や日常生活にも、ほとんど影響が出ない施設介護と比べ、いかにも不公平です。
 そのような在宅介護者の労苦に少しでも報いようと、国内で唯一、「特例居宅介護サービス費支給制度」に取り組んでいる自治体があります。
 秋田県北秋田郡上小阿仁村では、自宅で介護に専念している家族に対し、介護保険制度の範囲内で、現金を給付しています。ちなみに要介護5の場合、月額12万円を上限とし、いわゆる出張介護などの介護サービスを利用した場合は、その分が減じられます。

 小林宏晨村長によれば、この制度は山村や離島など介護サービスが著しく困難な地域だけが実施できることとなっているが、施設に入れず在宅介護を余儀なくされている人は、むしろ都市部に多いので、全国どこでも実施できるよう法改正を切望しているとのことでした。
 施設介護より介護保険財政への負荷も小さく、なにより家族のきずなに基づく介護を支援する制度です。都市部の自治体で実施するメリットは小さくないと考えています。

 <県議会5月臨時会のご報告です。>
2009.06

GDP年率換算15.2%減と戦後最悪の落ち込みとなった1ー3月期の経済成長率。政府が昨年から相次いで打ってきた経済対策の効果が、これから秋にかけて現れはじめるというエコノミストの予測もありますが、日本経済を本格回復させるには、何より内需拡大につながる産業分野のイノベーションが求められているのだと思います。

◇今を生き延びること
 地域の商工業にとっても厳しい状況が続くなか、旭区の商店会連合会が定額給付金の支給に合わせて“プレミアム商品券”を発行しました。定額給付金に対する意見はともかく、地元のために大いに活用していこうではありませんか。
 国の本年度補正予算には、エコカー購入のための補助制度や省エネ家電を購入した際のエコポイント付与などが盛り込まれました。
 「目先の消費喚起より未来への投資を」という批判もありますが、今を生き延びることができなければ、未来もありません。
 今、自動車や家電のみならず、多くのメーカーは業績不振に喘いでいます。日本もまもなく巻き込まれる、排出権取引という「地球温暖化対策」に名を借りた世界経済戦争では、それらの企業が持つ世界一の省エネ・環境技術という「武器」をさらに発展させることが求められるだけに、何とか体力を回復してもらわなければ困ります。幸い、エコポイントも反響は上々のようです。
 さて、神奈川県議会では5月臨時会を開き、人事を決めました。私は厚生常任委員会と行財政改革特別委員会の、ともに副委員長を拝命いたしました。

◇新型インフル対策も
 「厚生」では、子どもや高齢者、障害児者などの福祉、保健・医療施策、健康づくり、食の安全、県立病院の運営などを審査します。
 前年度、私たちが廃止を認めず継続審査とした在宅重度障害者手当、22年度から独立行政法人化する県立6病院、そして新型インフルエンザ対策と課題は山積しています。地元の県立がんセンター総合整備事業からも目が離せません。
 「行財政」では文字通り、県という自治体の経営改革や地方分権改革について議論を深めるほか、第三セクターの見直しも進めます。
 ところで昨年度、防災警察常任委員会の委員長を務めていて気がかりなことがありました。

◇20年は犯罪件数が増加
 それは、平成14年の3112件から、ほぼ毎年減り続け、平成19年には1994件と、14年の約4割減となっていた旭区の犯罪発生件数が、20年に2550件(14年比で2割弱の減)と28%も増加したこと(県全体では19年・20年は同水準)。特に自動車盗は、県内54警察署管内中ワースト3です。
 区民の防犯意識の高まりや警察の奮闘を知るだけにショックでした。ただ、今年に入ってからは、大きく減少に転じ、1月から5月の犯罪発生件数は、前年同期より310件、26%少ない861件となっています。私も安全安心のまちづくりに少しでも貢献できるよう、さらに努力してまいります。

 <新型インフルエンザ対策について知事に申し入れを行いました。>
2009.05

 4月にメキシコで発生した新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)感染は世界に広がり、国内へのウイルス侵入も時間の問題とされてきたが、5月8日、カナダから成田空港に帰国した大阪府内の高校教員と生徒の3人が新型の豚インフルエンザに感染していたことが分かり、日本国内で初の新型インフルエンザ感染者の確認となった。
 報道によれば、3人がデトロイトから搭乗したノースウエスト航空25便の乗員・乗客409人のうち日本に入国した163人の自宅や滞在先は26都道府県に広がっている。現在、厚生労働省でその方々の健康確認を急いでいるとのことであるが、そのうち19人は神奈川県内に滞在または在住とのことであり、パンデミックに備えた体制作りが必要と思われる。
 また、東京都では発熱した患者が病院などで診察を断られる事例が100件を越えたとの報道もあり、医療機関との綿密な連携も必要とされる。以下、昨年より新型インフルエンザについて、県に対し提言を重ねてきた公明党県議団として、今後の事態に向けて以下の要望を申し入れる。
  1. 「新型インフルエンザとは何か」という基礎知識を県民に周知徹底すること。
  2. リスク・コミュニケーションの観点から、「手洗い、うがい、せきエチケット」という感染予防のための基本的な行動を、効果的に、かつ分かりやすく県民に広報すること。
  3. 今回の豚インフルエンザは、新型インフルエンザH1N1型という弱毒性のものであるが故に、いたずらに県民の不安を煽らない対策を講じること。
  4. 発熱相談センターについては、県及び保健所設置5市が保健福祉事務所並びに福祉保健センター等に開設しているが、電話番号に統一性がなく分かりづらいので、重ねて周知徹底を図ること。また、感染の疑いから119番に連絡があり、緊急性が低い場合は、発熱相談センターを円滑に案内できるよう、市町村消防との連携の強化を図られたい。
  5. 発熱相談センターの24時間化を図られたい。(既に横浜市が対応を始めている)
  6. 米軍人や家族らは米軍用機や艦船などを使い、新型インフルエンザの感染者が多い米国と行き来をしているため、基地を持つ地元住民の不安が増大している。特に艦船に対する検疫は航空機に比べ簡易なため、米海軍横須賀基地では、日本人従業員の労組が艦船に対する検疫を徹底するように申し入れたとの報道もある。県として国並びに関係機関と連携を取り、基地従業員や住民の不安を取り除くよう努めることを要望する。

 <知事は「先進的条例」と胸を張るけれど……。>
2009.04

 「犯罪被害者等支援条例」に「地球温暖化防止推進条例」。そのタイトルだけを見れば、文句のつけようのない条例なのだが……。
 「犯罪被害者〜」については、昨年12月の県議会定例会で継続審査となっていた。国が犯罪被害者等基本法に基づいて様々な被害者支援策を講じている中で、屋上屋を架すことにならないかという意見が続出したのだ。さきの2月定例会で、綿密な推進計画案が示されたため、辛うじて可決、成立したものの、条例制定の必要性を疑問視する声は最後まで消えなかった。
 「地球温暖化〜」は2月定例会に提出されたが、可決は見送られた(6月定例会で継続審議)。施行予定日(本年7月1日)までの期間があまりにも短いことや、国の改正省エネ法や横浜市の生活環境保全条例の改正と施行期日がバラバラでは混乱を招く恐れがあるというのが、継続審議となった理由だ。
 また、国の温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)や省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)より  “先進的”であることをアピールしたかったのか、本条例案には、国も求めていない二酸化炭素削減のための計画書の提出を大規模事業者に義務付けるなど、厳しい内容が盛り込まれた。
 相模湾の海水温や港湾の潮位はおろか、気温の変化さえ分析していない神奈川県が、省エネにかけては世界一といわれる日本の大企業をどのように“採点”するのか心配だが、県いわく、大企業は生乾きの雑巾と同じで、まだまだ絞れるのだそうだ。
 わが国が地球環境保全に貢献できるとすれば、それはきっと優れたエコ技術によってである。そして、それらを生み出したのは企業の不断の研究と努力であって、けっして「お上」の力ではないことを思えば、県はむしろ「追い風」を送ることを考えるべきではないだろうか。

 <条例が先か、「禁煙思想」の普及が先か。>
人に危害を及ぼす喫煙がダメなことはわかるけど。
2009.04

 私はたばこを吸わない。正確に言うと、お酒を飲んだときなど、ゆっくりとたばこや葉巻を味わってみたくなるときがある。それでもせいぜい月に2〜3本だ。
 だから、個人的には全ての施設が禁煙になっても、別段困らない。むしろ、おいしい食事はきれいな空気の中で楽しみたいと思うし、列車も禁煙車両を選んで乗ってきた。
 当然、他人のたばこの煙を吸わされたり、においを嗅がされたりするのはまっぴらという人たちの気持ちはわかるし、それと同じくらい、一杯やるときまで目くじら立てなくてもいいじゃないかという心情も理解する。
 去る3月24日の本会議で「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」が成立した。
 知事原案に対し、さまざまな立場の県民から寄せられた意見を反映させた修正案を議会側がまとめ、自民、民主、公明、県政会、共産、神奈川ネットなどの賛成を得て可決、成立したものだ。
 修正案は「公共的施設」を、施設の性質によって「第1種施設」(病院、学校、劇場、官公庁など)と「第2種施設」(飲食店、ホテル・旅館、カラオケボックスなど)に区分した上で、「第1種施設」は禁煙、「第2種施設」は禁煙又は分煙を選択(2分の1以上は禁煙)とするが、「第2種施設」のうち次の施設は「特例第2種施設」とし、この条例による規制は努力義務とした。

  • 調理場を除く床面積が100平方メートル以下の小規模飲食店及び床面積700平方メートル以下の宿泊施設。
  • パチンコ店、マージャン店など風営法対象施設。

  •  また、条例の施行は来年4月からだが、罰則の適用は、十分な周知を図るため、1年後の再来年4月からとなった。
     完全なる禁煙社会を目指している人にとっては大いに不満だろうが、法や条例は大多数の人びとの理解を得なければ、円滑な運用はおぼつかない。たとえば、喫煙依存症のみならず、喫煙行為そのものが病気であり、喫煙者は患者であるという考え方は、医学的に真実であったとしても、わが国の「禁煙思想」の現状を考えると”先進的”すぎるだろう。
     ビートルズの名盤『アビイロード』のジャケット写真で、ポール・マッカートニーが指にたばこを挟んでいるのがけしからんと、アメリカではCG処理でたばこが消されたらしいが、日本の「世論」は、これについてどんな反応をするのか、ぜひ聞いてみたい。

     <もう、薬物で死ぬ若者は見たくない。>
       夜回り先生、旭公会堂で講演
    2009.03

     夜回り先生講演会「未来を託す君たちへ 命のメッセージ」3月31日

     夜回り先生こと水谷修氏。 1956年保土ヶ谷区生まれ。
     上智大学文学部哲学科を卒業後、2004年まで横浜市立の養護学校、高校で教員を務め、水谷青少年問題研究所を設立。少年少女の非行や薬物依存症問題に尽力。

    県議会議員のおのでらが開会のご挨拶を行なった。
    命は大切だ。命を大切に。
    そんなこと何千何万回 言われるより、
    「あなたが大切だ」
    誰かがそう言ってくれたら、
    それだけで生きていける

     4年前の、公共広告機構のCMが心に残っている。心に深い悩みや苦しみを抱える若者に対し、どう向き合っていいか戸惑う私たち。深夜、居場所を求めて、街のよどみに身を沈める若者たちがいても、見て見ぬふりをし、あるいは眉をひそめて傍らを通り過ぎるだけの私たち。
    夜回り先生こと水谷修先生は、これまで何千人という、そうした十代の若者たちと向き合い、彼らを救うために、文字通り、自身の命と生活を投げ打って実践をされてきた。自らが関わりながら、ドラッグで死なせてしまった若者の話をするときの先生の顔は、後悔と怒りで、まるで慟哭する鬼のようだ。
    大麻に対しては他の薬物と区別し寛容であるべきだと主張する人たちがいる。たしかに大麻は毒性も習慣性も弱いが、そこに精神作用や刺激を求めて手を出している以上、コカインや覚せい剤等にエスカレートしていくのは時間の問題。大麻はゲートウェイ(入り口の)ドラッグにはならないという説もあるが、私が以前、働いていた業界の周辺でも、大麻だけでは済まずに覚せい剤やコカインなどに手を染め、人生をしくじった人がいたという事実がある。少なくとも、少年少女からは、すべてのドラッグを遠ざけなくてはならない。そして、家庭は子どもが無条件で心休めることのできる場所でなくてはならない。
    この日の講演は、それを教えてくれた。

     <民意のつくられかたと読み解きかた。>
    2009.03

    『輿論と世論 日本的民意の系譜学』
     佐藤 卓己 書 新潮選書
    「いまの日本に必要なのは、空気より意見、セロンよりヨロンなのだ。」という帯の文に惹かれて本書を手に取った。「セロン」と「ヨロン」は、ともに「世論」で、読み方の違いだけだと思っていた自分の無知を恥じた。
     戦前は、輿論(よろん=public opinion=公的な意見)と世論(せろん=popular sentiments=大衆的な感情)は区別して使われていたという。
     理性や論理性にもとづく「輿論」に対し、「世論」は感性や気分によってつくられると言ってもいいだろう。
     ところが戦後、「輿」という漢字が当用漢字から外され、代わりに「世」という字を当ててしまったことから、両者の混同は始まった。
     果たして、いまの日本の「世論」はセロンとヨロン、どちらに近いのだろうか。真っ当な論理よりも、いわゆる世間の空気が国の政治を動かしているとは言えないだろうか。
     「世論」に迎合し、「世論」を無批判に報じることで、付和雷同の「世論」を拡大再生産しているメディアの責任も重い。著者は「世論」から自立し「輿論」を立ち上げることが新聞の使命だという。
      国民の8割が反対、あるいは賛成という「世論調査」が報じられたとき、果たしてそれが「輿論」なのか「世論」なのかを考えることは、民意を読み解く力となっていくことだろう。

     <引き続き、定額給付金の疑問について考える。>
    2009.03

    ◇目的がはっきりしない?
     松沢知事は、生活支援なのか経済対策なのか目的もあいまいと批判していたが「所得の減少や物価高のあおりを受ける家計への支援」と、それによって「冷え込んだ個人消費を喚起する」というのは少しも矛盾しない。また、「プラスαの消費(ぜいたく)よりも生活必需品の購入に回ってしまうので効果は限定的」という論調をよく見受けるが、必需品の消費でさえ低迷しているから事態は深刻なのだ。凹んだ部分の穴埋めに使われても、当然その分、消費は回復する。

    ◇2兆円の使途は他にある?
     2兆円あれば学校の耐震化ができる、いや、失職者の救済だ、それより中小企業の金融支援だと、実にさまざまな意見がある。松沢知事は太陽光発電と電気自動車にも使えという。どれを優先しても不平不満は出るだろうし、何より、それらの政策は総額75兆円という史上最大級の景気対策に盛り込まれている。その中の2兆円だけ、国民全体に恩恵が行きわたり、中低所得層に手厚い減税(定額給付)とするのは、公平で時宜を得た政策と言えると思う。

    ◇愚策という声ばかりでは?
     冷静に評価する声を新聞やTVは、なぜか取り上げない。経済アナリストで獨協大学教授の森永卓郎氏は「定額給付金はそれほど劣悪な政策なのだろうか」と疑問を呈し、減税によって「内需を増やして景気を回復させようという方向性は間違いない」と主張するとともに、瀕死の「日本経済の止血」策と評価している。
     また、「給付金はほぼ全額が消費に回り、GDP(国内総生産)を0.4%程度押し上げる効果はあるだろう」(藤井英彦・日本総研調査部長)という分析もある。
     みのもんた氏はラジオで「定額給付金よ、ありがとうだね。この僕がほめるんだから、めずらしい。マスコミの報道のあり方も反省しないといけないな。」と述べた。

    ◇自治体の負担になるのでは?
     自治体の事務が増えるのは事実だが、全国で定額給付金を地域振興につなげようと、積極的な試みが広がっている。本県でも横須賀市や厚木市などが給付金と連動したプレミアつき“地域振興券”の発行を決定(旭区では商店街連合会が発行)。川崎市では、給付事務を担う人手の確保を失業者対策として行なうことを決めている。

     <給付つき税額控除は◎なのに定額給付金は×の「なぜ?」 >
    2009.03

    神奈川県の松沢知事は、定額給付金を「愚民化政策」とこき下ろした。一人当たり1万2000円も配ったら、国民におねだり体質が芽生え、自主自立の精神が損なわれるのだという。まあ、1〜2ヶ月遊んで暮らせるぐらいもらえるならまだしも、1万2000円から2万円程度のお金で国民は堕落もしないしバカにもならないでしょう。旧正月を前に一人約1万円の消費券配布で盛り上がっていた台湾の人たちや、今回、定額給付金を受け取って喜んでいる人々は、知事から見れば「愚民」ということになるのだろうか。
    民主党などの野党も定額給付金を選挙目当てのバラマキなどと激しく攻撃しているが、その民主党も「給付つき税額控除」なるものを政策として掲げている。同党の鳩山幹事長は「定額給付金とはぜんぜん違う」といっているが、そんなに違うのだろうか。

    ◇元は給付つき定額減税
     公明党は昨年8月、「定額減税」の実施を強く主張。ただ、それだけでは所得が課税最低限以下の世帯や住民税非課税世帯に恩恵が及ばないため、そこには減税額に見合った給付を行なうことを提案した(給付つき定額減税)。その後、所得税と住民税の減税時期がズレて効果が分散してしまうことを防ぐ等の理由から、給付金方式で一括実施することになったのだ。
     いっぽうの「給付つき税額控除」。所得控除方式では、どんなに控除額が大きくても課税対象所得はマイナス(0円以下)にはならないので減税のしようがないが、税額控除方式では当初の所得税額より税額控除が大きければ、税額はマイナスとなり、その分の金額を減税=給付金として受け取ることができる。こちらは米国や英国、カナダなど先進諸国で導入され世界的な潮流にもなってきてはいるが、所得により給付額が変わるほか、継続を前提とした制度だけに、実施には所得の捕捉や複雑な制度設計が必要だ。一回限りで、しかも急いで実施したいことから、今回は「定額給付」ということになった。
    ◇唯一の家計支援策
     いずれにせよ、方程式の立て方は異なるものの、ともに導き出される「解」には、それほど大きな差がないにもかかわらず、野党が定額給付金ばかりを槍玉にあげ「反対」「廃止」と叫んだのは、政策よりも政局を優先してきたからにほかならない。
     国民の8割近くが定額給付金を評価しない(ただし9割以上は受け取る)という「世論調査」があるが、いっぽうで、こんな分析もある。
     「野党やマスメディアが盛んに批判したために、少なからぬ国民が、給付金には胡散臭さを示さないと具合が悪いと思っているのである」「野党はいったい何を根拠にして『定額給付金は国民に迷惑』と決めつけているのだろうか」(田原総一朗氏 週刊朝日1月23日号)
     雇用対策、中小企業支援、学校耐震化など、総額75兆円規模(21年度当初予算まで)の経済対策のうち2兆円の定額給付金は唯一の家計支援策だ。果たして口を極めて罵らなければいけない政策なのだろうか。