4.障害者福祉について


 <質疑> かながわ障害者地域生活支援プログラム大綱に基づく取組みについて
 在宅重度障害者等手当の見直しについては、見直し財源19億円のうち、16億円を「かながわ障害者地域生活支援推進プログラム大綱」に基づく取組みに活用するとのことであったが、22年度予算での見直し財源活用額は、10億円に止まったとのことである。
 豊富なメニューが既存事業にある中で、新規事業を措置したことは一定の評価をするが、例えば、「神奈川県障害福祉計画(第2期)」で、約1,600人分の確保が求められている障害者グループホームがなぜ増えないのか、その要因を分析し、薄撒きに事業を増やすのではなく、「課題の明確化」と「課題に対する重点配分」をより図っていくべきである。
 そこで、地域生活支援プログラム大綱の中でも注目される「グループホーム等の設置促進」「レスパイトケアの充実」「権利擁護」の施策推進のために、一番の課題は何で、それに対してはどのような施策が一番有効と考えられているのか、また、財源を10億円しか活用していないのであるから、それらの事業に、今後、より上乗せを図っていってはいかがと考えるが、所見を伺いたい。

 <答弁> 松沢知事
 次に、「かながわ障害者地域生活支援推進プログラム大綱」についてのお尋ねであります。
 まず、3つの施策推進のための課題と、有効な施策についてであります。
最初に、「グループホーム等の設置促進」についてですが、一番の課題は、グループホーム等の担い手となる事業者を、いかに増やしていくかということであります。
 これまで事業を手がけてこなかった社会福祉法人やNPO法人などにも、新たに取り組んでいただくためには、事業のノウハウや情報を提供し、助言していくことが有効ですので、そうした役割を担うサポートセンターを設置し、グループホーム等の開設を促進してまいります。
 2つ目の「レスパイトケアの充実」についての一番の課題は、常時医療ケアを必要とする重度の障害者や、著しい行動障害がある障害者ほど、特別な受け入れ体制が必要となるため、利用できる施設が限られることであります。
 こうした障害者が利用できる短期入所サービスを増やし、家族の負担軽減を図るためには、既存の入所施設や医療機関の活用を促進することが最も有効ですので、そのための専門職員の配置や設備改修などに対する助成制度を創設するとともに、専門人材のスキルアップに取り組みます。
 さらに3つ目の、障害者の「権利擁護」についての一番の課題は、障害者の権利を守り、「親なき後」も安心して地域の中で生活していくために支えとなる、後見人の確保が難しいことであります。
 そこで、継続して後見業務を担うことができる市町村社会福祉協議会などに対する支援や、後見人の育成、地域の相談機関への専門的支援などを行う拠点を設け、成年後見制度の推進を図るとともに、日常生活支援の充実に取り組んでまいります。
 次に、今後の財源の活用についての、お尋ねでございます。
 プログラム大綱では、これらのほかにも、障害者の地域生活を取りまく、多くの課題に対応した施策に取り組んでいくこととしております。
 そこで、今後、各施策の実施状況を検証するとともに、市町村や障害者団体の意見を聴きながら、プログラム大綱に沿って継続的に取組みを進めるために、真に必要な事業に、この財源を活用してまいります。

 <質疑> 障害者地域生活支援事業について
 市町村統合補助により賄われる地域生活支援事業には、幅広く、そして障害者にとってなくてはならないベーシックな支援事業が網羅されているが、この事業は、統合補助金化されたことに伴い、必要額が十分に措置されていないため、通学支援などの支援が十分に行われていない現状がある。国においても、今年度以降は、これまでの不透明で不十分な配分から、前年度実績に応じた配分とすると聞いているが、初年度は、市町村が独自の財源を持ち出して実施しなければならない。これに対し、県が新設した補助が「障害者地域生活推進事業費補助」であるが、ボリュームは5,000万円弱にすぎず、需要に十分応えることが可能なのかどうか、疑問に感じる。
 そこで、今回の「障害者地域生活推進事業費補助」で、どれだけの市町村が移動支援の実施に乗り出すと見込まれているのか、また、この補助のボリュームを、今後もっと増やしていくべきではないかと考えるが、所見を伺いたい。

 <答弁> 松沢知事
 「障害者地域生活/推進事業費補助」についてのお尋ねであります。
 この事業は、「障害者地域生活支援/推進プログラム大綱」に基づき、障害児の特別支援学校への通学支援などを、県所管域の市町村とともに推進するために、新たに創設するものであります。
 特別支援学校への通学については、保護者がスクールバスの停留所などに、送り迎えをするための負担が大きいため、市町村の地域生活支援事業の移動支援事業を利用できるようにして欲しいとのご要望を、様々な機会を通じ、いただいております。
 障害者自立支援法の施行により、制度上は、通学支援を移動支援事業の対象とすることが可能となりましたが、初年度の事業費が国庫補助金の算定対象とならないことなどから、必ずしも、市町村による取組みは、十分とはいえない状況にあります。
 そこで、障害者の多様な地域生活支援のニーズを踏まえ、今回、市町村の移動支援事業による通学支援を促進するため、初年度の事業費などについて、補助することとしたものであります。
 障害児の通学支援は、多くの市町村で事業を実施していただけるものと考えておりますが、さらに、県と市町村で組織する「障害者自立支援法/施行推進会議」でも、今後の利用促進に向けた具体的な検討を行うなど、事業の実施を働きかけてまいります。
 次に、「障害者地域生活/推進事業費補助」の今後の事業拡大についてのお尋ねであります。
 国では、障害者自立支援法を廃止し、新たに総合的な福祉制度を実施するため、障害者も参加した組織のもとで検討が進められており、地域生活支援事業についても、見直しが行われるものと承知しております。
 今後の地域生活/推進事業の事業規模につきましては、こうした国の動向や、平成22年度の事業実績なども踏まえ、プログラム大綱に沿って、障害児の通学支援などに着実に取り組んでまいります。

 <再質問>
 障害者福祉について改めてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 初めの質問でも触れましたけれども、昨年6月の厚生常任委員会で在宅重度障害者等手当の見直し財源のうち、16億円を障害者地域生活支援プログラム大綱に基づく取組みに活用するということが示されました。
 しかしながら、結局10億円にとどまったということがあります。このようになった経緯について知事がどのように承知しているのか、そのご説明を知事に求めたいと思います。 
 特に、昨年6月の常任委員会では、私ども、修正案について審議した際に付帯意見をつけました。これは、この改正が障害者福祉の後退につながることなく、障害者の地域生活の向上に資するものとなるよう、「かながわ障害者地域生活支援推進プログラム大綱」にかかげる施策の速やかな具体化に向けて特段の努力を仰ぐこととしておりますので、知事の16億円から10億円にならざるを得なかった経緯について説明を求めるものであります。

 <再答弁> 松沢知事
 プログラム大綱に則って進める施策、16億円と想定していたけれども、予算編成の中で、なぜ、10億円になってしまったのか。その私の認識という質問であったと思います。
 6月の定例会から保健福祉部の原案をもとに、この間、検討、調整を重ねてまいりまして、さらに、効果的な事業のあり方や実施方法を精査してまいりました。
 たとえば、当面は、モデル的な取組みから着手し、効果や課題を十分検証する必要がある事業があると思いますし、あるいは、サービスの利用状況や制度の動向を見定めた上で、本格的な事業展開を図ることが適当と考える事業もあると思います。
 最終的には、この予算編成の過程の中で、プログラム大綱に基づく初年度の取組みとしては、まず真に必要な事業の予算を計上していこうという結果、この規模となったというふうに私は認識しております。