<海外県政調査の概要>

1.所期の目的


[1]環境保全のためのコスト負担のありかたを探ること
 地球環境をいかに守り、回復させていくか。これは現代の政治が直面する最大級の課題といっても過言ではない。
  神奈川県としても水環境の保全や、森林の荒廃に対する対策、ディーゼル車の排ガス規制など、さまざまな環境保護施策に取り組んでいるところである。水源環境税の形が具体化してきたことにより、新税導入の是非についての論議が喧しくなってはきているが、そもそも「環境税」とは何かという、根本的な意義については県民の間でもほとんど語られていないというのが現状である。
 われわれもさまざまな書物を通して、いわゆる「環境先進国」と呼ばれる国々の環境税制について学んできたところであるが、それらの国々のひとつであるドイツ連邦共和国において、企業や市民に対してかけられる負荷がどのように受け入れられ、あるいは拒絶されているのか、政治家や市民、企業との直接対話を通して探ろうというのが本調査の目的である。

 また、訪問先の都市で行われている廃棄物や新エネルギー、交通、環境教育等について、具体的な施策を見聞し調査することは、言うまでもないところである。

[2]都市圏ツーリズムの振興について、その実例を調べること。
 独自の文化が栄える港湾都市・横浜や古都鎌倉、三崎漁港や美しい海岸美をもつ三浦半島、都市と海浜が調和した湘南海岸、箱根や湯河原などの温泉地、美しい農村や山岳が広がる県央、県西部など、豊かな観光資源に恵まれた上に、首都東京に隣接しているという点で、本県は、全国でも群を抜く「観光立県」の可能性を秘めた自治体である。
 しかし、交通の発達や休暇の長期化で、「近くて便利な」神奈川は、わざわざ泊りがけで行く観光地ではなくなってしまった。

 その神奈川県に、滞在型の観光を復活させる好機が訪れている。それは、神奈川力構想・プロジェクト51の中にも掲げられた「かながわツーリズムの推進」に「ブルーツーリズム」「グリーンツーリズム」「アグリツーリズム」の考え方と手法を導入することである。

 ドイツのオーデンヴァルト周辺は、都市部から至近で、大自然と呼べるほどの観光資源を擁しているわけではないが、多くの宿泊観光客を引き寄せている。植物相の豊かな混交林が、周辺都市住民の心のふるさとになっているのである。
 また、ドイツ農業協会(DLG)が推進する「農家で休暇を!」事業は、アグリツーリズムを定着させ、農業の衰微に一定の歯止めをかけている。
 旅行者に安価で良質な食事や宿泊を提供する「ガストホフ」等の存在も、観光の健全な発展に大きく寄与していると思われる。

 本調査は、それらドイツにおいて普及を見ている「グリーンツーリズム」「アグリツーリズム」を実体験することにより、本県への導入の可能性を探ろうとするものである。

[3]芸術・文化活動の振興施策を探ること。
 現在、ドイツでは、日本と同様、厳しい財政難にあえぎながら、それでもなお90余りのアンサンブル付き歌劇場と、それを上回る数のオーケストラが公的に運営されている。
 ドイツは知る人ぞ知るオペラ大国で、ヨーロッパの全歌劇場の半数以上が集中していることもあり、芸術文化はつねに政策全般のなかで重要な位置を占めてきた。

 行政と企業と市民が、どのように連携し、芸術活動を支援していくか。本県および県下自治体の芸術文化政策の範を、ハイデルベルク市の芸術文化支援活動のなかに見つけようというのが、本調査の目的である。