<海外県政調査の報告>調査の記録

4.空気と緑と廃棄物。(1)

Karlsruhe Rathaus
76124 Karlsruhe, Adlerstr.20a
Tel:0721/37205382
Mr.Siegfried KÖnig, Dr.Wolfgang Issel, Mr.Peter Blank

10月19日(火)
快適な生活を保証 !?
 今日の調査地はシュヴァルツヴァルトに程近いKarlsruhe(カールスルーエ)市。カールスルーエは、かつてのバーデン王国の首都、現在のバーデン・ヴュルテンベルク州では州都Stuttgart(シュトゥットガルト)に次いで第2の都市である。

 午前中は、市役所で、主に環境政策について調査。午後からは、KVV(カールスルーエ運輸連合)で地域交通についての調査を行なう。
日の丸が掲げられた市庁舎

市庁舎前の広場を走るトラム
 約束の10時より、約30分早く、市庁舎に到着。庁舎前のポールに日の丸が掲げられている。心配りに感謝。
 しかし、私たちは、それよりも市庁舎前の広場にひっきりなしに入ってくる路面電車(トラム)に目を奪われていた。
 市庁舎前の停留所から、少し北に向かうと目抜き通りであるKaiser Straßeにぶつかる。その通りにも間断なく電車が走っている。T字路交差点を電車と歩行者と自動車が渾然一体となって行き来するのだが、みんな慣れているせいか、危な気がないのである。
 日本人は信号にコントロールされることに慣れきっているから、気をつけないと危ない。

Siegfried KÖnig
筆頭副市長
 さて、市役所に入る時刻がやってきた。
 説明者は、筆頭副市長のSiegfried KÖnig氏、環境局長のDr.Wolfgang Issel、市廃棄物産業連盟と市清掃社団の副理事長であるPeter Blank氏の3人。

 KÖnig副市長が、カールスルーエの特徴を列挙する。

『カールスルーエは1715年につくられた若い町です。300年にも満たない歴史です。
カールスルーエは法律の町です。ドイツの連邦最高裁判所と憲法裁判所があります。
カールスルーエは緑の町でもあります。緑被率は約50%を誇ります。
KÖnig筆頭副市長から歓迎の挨拶を受ける
そのほかにも、さまざまな特長によって、国内外に知られた町です。
路面電車(LRT)がドイツ国鉄と線路を共有することで、機能的かつ利便性の高い交通網を確立していること。
現在,2部ではありますが、ドイツのプロサッカーリーグ、ブンデスリーガのチームもあります。(オリバー・カーンの故郷でもある)
州立博物館、州立美術館、歌劇場、音楽・美術大学を擁する文化都市でもあります。
カールスルーエ工科大学は、ドイツでも有数の規模を誇る大学です。
城を中心にして、32本の放射状道路が走る扇状の都市です』

そして、副市長は胸を張る。
『カールスルーエを一言でいうなら、快適な生活を保証する都市、に尽きるでしょう』

Issel博士から環境施策について説明を受ける
 環境局長のIssel博士による、カールスルーエの環境施策の歴史と現状についての説明を要約すると、次のようになる。

 カールスルーエは海抜110mに位置しているが、ドイツで最初に春が来るところといわれている。これは、幅35kmと広く明るくゆるやかなライン谷によって、西風が南風に変えられるせいだ。逆にいえば、そのためにスモッグが発生しやすかった。空気をきれいにしたいという意識は、市民の間では、かなり強かった。
 SO2(亜硫酸ガス)は1985年から1987年がピーク(0.25~0.35mg/m³)だったが、87年に連邦で有害物質排出を制限する法律ができて、激減した。(2002年は0.02 mg/m³)

 一方、NO2(二酸化窒素)には、法的規制もあまり効果はなかった。これは、とにかく、自動車の台数が増えたことに起因している。
 1950年には約10,000台だった自動車が、1970年には約80,000台、1980年には約120,000台と増え続け、2000年のデータでは167,119台となっている。これでは、どんなに車の排出ガスがきれいになっても追いつかない。
いちいち感心する3人
 そこで、市電など公共交通機関を充実させる政策に力を入れはじめた。カールスルーエには、毎朝10万人の人々が郊外から通ってくる。彼らに車ではなく電車を使ってもらうためには、市街地だけでなく、かなり遠くまでネットワークを広げる必要があった。国鉄との乗り入れは、その結果だ。
 今では、郊外からカールスルーエ市街へ通勤、通学する人の50%が電車を利用してくれている。その中には、75km離れたシュヴァルツヴァルト地方や、90kmも離れたオーデンヴァルト地方から、通っている人もいる。今、国境を越えて、フランスまで路線を延ばすことを計画中だ。
 これだけの交通政策をとっても、空気の汚れは少しずつ増えている。もしも、市電の積極的活用を見送っていたら、NO2濃度はさらに高くなっていただろう。

 市では、自然景観保護地域を定めている。厳しいところでは、木が倒れてもそのままにしておかなくてはならない。
 市の中心部に森があり、城の庭園も、その森の一部のようになっている。樹林による自然の冷却作用で、夏は他の町と比べて涼しい。
 そんなカールスルーエでも、年々、宅地面積が増えている。1975年には市の面積の35.8%だったものが、2000年には40.2%、2010年には42.4%になるだろうと予測している。

 ちなみに、連邦議会の環境部会で定めた2010年の目標は41%以下である。市の人口は268,651人(2004年)。1985年から1990年にかけて、当時の東ドイツなどからの亡命等による人口流入があり、急増したが、その後は漸増にとどまっている。
 宅地面積の拡大は、むしろ、住環境の改善や、家族構成が少人数化したことに原因があると思われる。1950年の住宅戸数は49,131戸。1戸に平均4.09人が住み、一人当たりの居住面積は約20m²だった。それが、2000年には、住宅戸数が138,753戸に。1戸に平均1.93人が住み、一人当たりの居住面積は43m²となった。
トラムはまさに市民の足