<海外県政調査の報告>調査の記録

2.泊りがけで行く、近くの田舎。(2)

TouristikService Odenwald-Bergstraße
Marktplatz 1, 64711 Erbach
Tel:0049 6062 943331 / Fax:943333
Mr.Horst Schnur  Ms.Hanne Holuscha

住民の意識も向上
Hanneさんから観光振興について説明を聞く
 実は、ドイツ人の休暇(というか余暇時間)は、世界一長いのだという。日本人に負けず劣らず勤勉という印象があったので、ちょっと意外だった。
 その余暇を使って、彼らは、ちょくちょく旅に出る。全ドイツ人が、2002年の一年間に旅先で宿泊した泊数は、約17億泊。旅行に出かけた人は、延べ3億人で、行き先の72%が国内、28%が国外だった。ドイツ国内では、約280万人がツーリズムに関わる仕事に従事している(自動車産業従事者まで含めると、さらに増える!)。また、観光関連(ホテル、飲食、交通など)の総売上高は1,400ユーロで、これは、国内総生産の8%にあたる。そして、その2〜3%(付加価値税を除く)が、投資の見返りとして地元自治体に還元される。
 オーデンヴァルト−ベルク街道−ネッカー渓谷(Neckartal)エリアでみると、一年間の総売上高は2億8630万ユーロ。地元自治体への還元は860万ユーロ(付加価値税を除く)だった。

吉永さんの通訳を頼りに質疑を行なう
 「公的な観光振興の効果としては、他にも雇用や交通インフラの促進や、ホテルやレストラン、伝統工芸に新風が吹き込まれるということがあります。また、多くのお客様を地域に迎えることで住民の意識が向上することも見逃せません」と、Hanneさん。観光客が喜び、地元住民が潤うというのは、観光の大原則だ。

 オーデンヴァルトには、ベルリン、ボン、ケルン、デュッセルドルフ、ライプチヒなどのほか、ベルギーやオランダからも観光客が訪れる。しかし、圧倒的に多いのは、フランクフルトのあるマイン州の人たちだとか。
 やはり、近いということがあるのだろう。 シュヴァルツヴァルトまで行こうとすれば、入口のバーデンバーデンでも、フランクフルトから特急で1時間半はかかる。逆に、すぐ側にシュヴァルツヴァルトのあるバーデン・ヴュルテンベルク州から、わざわざオーデンヴァルトまで来る人は少ないのかもしれない。

 オーデンヴァルトを訪れる人は増加傾向にある反面、昔ほど長期滞在をしなくなったという。しかし、農家や廃業農家を利用したペンションでは、相変わらず子ども連れなどの長期滞在が中心だ。シュヴァルツヴァルトに比べると地味で質素だが、その分、「分かった客」が多いらしい。エコロジーへの意識が高い30代のエグゼクティブが妻と子を連れてやってくる、といった具合だ。
 農場での休暇は、のんびり、静かで、楽しそうだ。子ども連れのほとんどは車でやって来るが、鉄道で行けるところも多い。冒頭で紹介した吉永さんは、奥様とふたり、列車でオーデンヴァルトを訪れたことがある。そのとき、宿(といっても農家)の主人が駅まで迎えに来てくれたのだが、これがなんと、トラクター。ふたりで荷台に乗せてもらってトコトコと走る、その、宿までのわずかな時間が、まるで、ONからOFFへの時空移動のようであったという。車で、いきなり宿の前に乗りつけたのでは、こうはいかない。