平成22年第1回定例会代表質問の全文

 議長のお許しをいただきましたので、私は公明党神奈川県議団を代表いたしまして、通告に従い、提言を交えながら、順次質問をさせていただきます。
 知事、教育長並びに警察本部長におかれましては、明快かつ誠実なご答弁をお願いいたします。また、先輩、同僚議員の皆様には、しばらくの間、ご清聴のほどよろしくお願い申し上げます。
 質問の第一は、財政問題についてであります。
 平成22年度当初予算案を発表した翌朝の新聞では、県債発行額が過去最大の3436億円、残高も過去最高の3兆3533億円に膨らんだことが大きく報道されました。税収が大きく落ち込み、国の地方財政措置に頼らざるを得ない現実からは、やむを得ないとも思いますが、将来世代にツケが回っていることは紛れもない事実であります。
 県債発行額の内訳を見ると、通常の県債は636億円、42.7%減と大幅に抑制しているものの、交付税の代替措置である臨時財政対策債がなんと2800億円。これがきちんと交付税で措置されていれば、県債残高は既に減少に転じているところでありますので、国が大都市圏の自治体に借金の肩代わりをさせている歪んだ構造が、もろに本県財政に表れているといっても過言ではありません。
 臨時財政対策債の償還のための費用は、交付税算定の際の需要額に算入されると聞いてはおりますが、それが、本当に現金の交付税で措置されるのかどうかは別問題です。横浜市は、臨時財政対策債の償還が結局、臨時財政対策債で措置されている、すなわち、借金を借金で返す状態になっていることを指摘し、約束通り現金、交付税で措置することを国に求めています。
 県としても、変動が激しい法人二税を都道府県税としておきながら、それが落ち込んだツケを都道府県だけに負わせるような現状を改めさせなくてはなりません。必要十分な額の地方財政措置、そして、臨時財政対策債ではなく交付税による措置を強く国に求めていくのは当然のことであります。
 もちろん、残高、公債費負担の減少に向けた本県独自の努力も怠ってはなりません。内訳はどうあれ、3436億円も県債を発行すれば、その償還は、単年度で元金が残高の6%、利子が2%としても、合わせて8%、280億円に及ぶことになります。22年度予算でいえば、環境農政局の予算にも匹敵するようなお金が毎年、借金の返済に使われることとなり、その分、他の施策を圧迫していくのです。
 新規発行額の抑制に努めることも当然ですが、新たな施策推進のため、新規県債を発行せざるを得ない場面もあります。そこで、有効活用できないかと考えるのが、県債管理基金であります。
 この県債管理基金は、20年度末で約3400億円の残高があります。満期一括償還に備えて積み立て、運用しているわけでありますが、運用するより、借りている利率の方が高いのが常であり、満期一括償還の地方債を発行している地方自治体は、実際の償還を行わないでいる分、逆ざやで損をしていることになります。
 もちろん、繰上償還はできませんので、期間の途中で実際の償還を行うことはできませんが、借替えのタイミングで、計画的に借替債を抑制することは可能ではないかと思います。実際、平成バブルの時期に、借替債の発行抑制を行っていたことがあると伺っております。
 また、基金に積み立てているお金を、「安全だから」と安穏と低金利の定期預金で運用するばかりでなく、県債の借入金利に近づける努力も怠ってはなりません。
 いずれにいたしましても、公債費の負担を減らすため、残高を減少させる、もしくは残高から生じる利子負担が少しでも軽くなるよう、県独自の方策も講じていただきたいと考えるところであります。
 そこで知事にお伺いします。
 22年度当初予算では、県債発行額、県債依存度、県債残高とも、過去最高を記録いたしました。このままでは、将来の子や孫の世代に大きな禍根を残すことにもなりかねません。本県独自の取組みとして、残高及び利子負担の減少に向けて、どう取り組まれていくのか、知事のご所見をお伺いします。
 質問の第二は、住宅問題についてであります。
 はじめに、民間住宅の耐震化促進についてお伺いします。
 1月に発生したハイチの地震では、現在までに約23万人が死亡したと伝えられています。多くは倒壊した建物の下敷きになったためと見られ、まさに「住居の貧困」によって被害が広がったのであります。今はただ、犠牲者のご冥福と、復興が力強く進むことをお祈りするばかりです。
 しかし、災害の惨禍が貧困に襲いかかるというのは、わが国も例外ではありません。阪神・淡路大震災でも、低所得者、高齢者、障害者など「社会的弱者」に犠牲者が多く発生し、全死亡者中、高齢者の占める割合は70歳以上が33.7%、60歳以上になると53.1%と高く、一方、生活保護対象者の死者発生率は、非対象者の約5倍、そして、生活保護世帯の住居の全半壊率が一般世帯のそれと比べて約6倍に上ったという調査がありました。耐震性の低い古い木造住宅に住まざるを得なかった人々が多く犠牲になったのであります。
 このような悲劇を繰り返さないために、一刻も早く、新耐震基準を満たしていない民間住宅の耐震化を進めていくべきであります。
 そこで知事にお伺いします。
 神奈川県地域住宅計画によると、新耐震基準以前に建築された住宅は約102万4000戸。県では民間住宅の耐震化促進のため、市町村に対する財政的支援の実施や地域住宅交付金の活用支援を推進するとしておりますが、これまでの実績についてお答えください。
 また、民間住宅のより一層の耐震化を進めることが重要と考えますが、今後、どのように耐震化を進めようとされているのか、併せてご所見をお伺いします。
 次に、住宅セーフティネットの構築についてお伺いします。
 平成18年6月に「住生活基本法」が成立し、それに基づき9月に国の「住生活基本計画」が、平成19年3月に「神奈川県住生活基本計画」が策定されました。18年6月に終了した「住宅建設計画法」は、国や地方公共団体が、住宅金融公庫や日本住宅公団、あるいは公営住宅制度によって住宅を数多く供給することに主眼を置いていたのに対し、「住生活基本法」は国、地方公共団体ならびに民間の住宅関連事業者が主体となり、良質な住宅ストックを形成し、それを将来世代に継承することや、そのために市場メカニズムを十分に活用することなどに重点が置かれております。
 この住生活基本法については、住宅問題の研究者らから「市場原理に傾斜するあまり、住宅政策において本来『公』が担うべき役割が後景化してしまった」という批判も受けているところであります。また、そうした懸念があったからこそ、住生活基本法案が衆参両院の国土交通委員会で可決された際に付帯決議が付き、例えば衆議院では「住宅弱者を救済するためのセーフティネット機能を確保する上で、公営住宅等公的賃貸住宅の役割は依然として重要であり、需要に対応した供給等が今後も継続して適切に行われ、住生活の安定の確保が図られるよう、十分に配慮すること。」と明記されたのでありましょう。
 国が住宅政策について大きく舵を切った背景には、一世帯一住宅はすでに実現し、空き家も多く存在することから、量的には住宅問題は解決しているという認識があります。住宅の質的向上をめざすことは、たしかに重要です。自力で居住の改善を図れる人ばかりであれば、市場メカニズムの活用も有効でしょう。しかし、19年6月に「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(略称:住宅セーフティネット法)を定める必要があったことからも分かるように、低所得層や若年単身者、高齢世帯など自力で居住を確保し、または居住水準の改善を図れない人々には公的な援助が必要であり、その第一は公営住宅の供給なのであります。
 また、わが国と欧米先進国の住宅事情を比較すると、わが国の持ち家の平均住宅床面積は124平方メートルと英独仏などEU先進諸国に比肩しうる数字であるのに対し、借家のそれは46平方メートルと米国の4割、英独仏3国の6割に過ぎません。国は1985年までに、いわゆる最低居住水準未満世帯の解消を図るとしていましたが、いまだ達成できずにおります。平成15年の住宅・土地統計調査によると、本県における最低居住水準を満たさない住宅は持ち家の1.5%に対し、借家は11.9%でありました。このような、最低居住水準を満たさない住宅の解消を早急に図っていくべきであります。
 そこで知事にお伺いします。
 本県において、県営住宅の平均応募倍率は21年度で11.3倍。入居できない人々のほうが圧倒的に多いのが現状です。県では今後、県営住宅について、新たな建設は行わず、既存ストックの建替え等にとどめ、公営住宅の供給はもっぱら市町村に委ねることとしていますが、市町村の財政も逼迫しております。最近の経済状況や雇用情勢を考えると、低所得者など「住宅弱者」や、安定した住まいを持たない人々の住宅確保はますます困難になってくると思われます。そのような中で、真に居住の安定が必要な人のセーフティネットをどのように構築していくのか、知事のお考えをお聞きしたいと思います。
 また、県として最低居住水準未満世帯の解消に対しどのような目標と計画を持っているのか、特に、県営住宅の居住水準を向上させた上で数多く供給することが有効と考えますが、併せて知事のご所見をお伺いいたします。
 次に、県営住宅ストック総合計画の見直しについてお伺いします。
 私の地元で、平成22年度に着手されるはずだった県営住宅の建替え事業が「凍結」となりました。極度の財源不足の中で、すでに着手している工事を遂行させるため、新規事業は見送らざるを得ないというのが、その理由であります。しかし、県の中期財政見通しによれば、財源不足額は年々増加し、平成22年度から26年度までの5年間で、その総額は臨時財政対策債を見込んでも1兆円を超えています。建替えを見込んで入居募集を停止し「虫食い」状態になった団地で、住民は、もうすぐ新しい住宅に住めるのだからと老朽化による不都合も辛抱しながら生活していますが、果たして「凍結」は1年で解けるのだろうかと不安を募らせているのであります。
 県は平成13年度に、計画期間を13年度から22年度と定め、「公営住宅ストック総合活用計画」を策定いたしました。さきにも触れたとおり、新規の住宅供給を諦め、既存ストックの建替えや改善による有効活用に軸足を移したのでありますが、その計画も財政状況の逼迫化や国の住宅政策の転換などにより、平成17年に前期5カ年の計画が終了するにあたり、大きな見直しが求められました。そこで、改めて平成18年度から27年度を計画期間とした「県営住宅ストック活用総合計画」をスタートさせましたが、平成22年度はその5年目、見直しの年であります。県営住宅をとりまく課題や、この先5年間の財政状況は既に明らかとなり、見直しのための材料はほぼ出揃っています。
 そこで知事にお伺いいたします。
 「県営住宅ストック総合活用計画」の後期計画期間、すなわち平成23年度から27年度も県の財源不足は続く見込みであります。いっぽう、現在の社会経済状況から、県営住宅の整備を求める県民の声はますます高まるものと思われますが、県は平成22年度、どのように「県営住宅ストック総合活用計画」を見直すつもりなのか、知事のご所見をお伺いいたします。
 質問の第三は、教育問題についてであります。
 「青年よ、大志を抱け!」これは明治時代に札幌農学校、現北海道大学の初代教頭だったクラーク博士が残した有名な言葉であります。あるとき、自民党の敷田博昭議員から、これに続く言葉があることを知っているかと問われました。恥ずかしながら知りませんでしたので教えていただきました。「青年よ、大志を抱け!」の後には、こう続きます。「金銭や私利私欲や人が名声と呼ぶはかないものに対して野心的であれというのではなく、知識や正義や人々の向上に尽くすために大志を抱け。そして、人としてのあるべき完成された姿に到達できるように、青年よ、大志を抱け――ウィリアム・スミス・クラーク」
 この、「志」と学習意欲には密接な関係があるようです。受験産業に対しては様々な見方があろうかと思いますが、四谷大塚、東進ハイスクールを運営する会社の経営者である永瀬昭幸氏は、「すべての学校教育の目的は、生徒が社会に出たときに大活躍することができる力を身につけさせることである」と言っています。いい成績を取らせてレベルの高い学校に送り込むことは中間目標ではあっても、最終目標ではないということです。四谷大塚の主催する「全国統一小学生テスト」の成績上位者に対する賞品は、アメリカ東部の名門校、いわゆるアイビーリーグを訪問する研修旅行だそうです。昼間はコロンビア大学やハーバード大学の図書館で死に物狂いで勉強している学生の姿を目の当たりにし、夜は毎晩、世界が抱える問題についてディベートを行う。そして最終日にはリンカーンセンターに向かって自分の夢を大声で発表するのだそうです。「僕は医学部に行って国境なき医師団で働く」「私は司法試験に受かって弱い人の味方になる」「一生懸命に英語を勉強して国連で難民救済の仕事をする」などと涙を流しながら決意をする姿を見ると、あたかも「学んだ知識の量と志の高さは比例する」という法則があるかのようだ、と先の永瀬氏は語っています。
 しかし、そのような子どもはごく一握りでありますし、医者や弁護士になりたいと思うことだけが「志」ではありません。例えば、介護の仕事で人の役にたちたい、造園の仕事をして、美しく、緑あふれる環境を人に提供したいなど、「自分はこういうことをして社会の役に立ちたい」という「志」を、すべての子どもたちが持ち続けられるような、そういう教育こそ神奈川の公教育に求められているのだと思います。
 平成19年8月に策定された「かながわ教育ビジョン」を見ると、「夢や希望の実現に向けた自分づくりを支援していく営みを『人づくり』ととらえ、一人ひとりの成長の過程で、様々な立場の人々が役割と責任を自覚して人づくりにかかわり、協働と連携を進めることで、生涯を通じた人づくりをめざす」と記載されており、まさしく「志」を育む教育を目指しているように思われるのですが、その内容は抽象的で、どのように「志」を育む教育を推進していくのかという具体像が分かりにくいと感じます。
 将来の神奈川、そして日本を担う人材を育むという、教育が持つ非常に重要な役割を考えると、抽象論ではなく、是非、具体的にどのように「人づくり」を進めるのかを明らかにしていただきたいと考えるところであります。
 折しも現在、冬季オリンピック大会がバンクーバーで開催されております。努力を重ねることが、人々に感動を与える原動力になるということを、ぜひ子どもたちに感じてほしいと思います。また、本県には、スポーツをはじめ様々な分野で活躍する人材が数多くいらっしゃいますので、子どもたちの目標や志や希望を大きく育てるためにも、そういう方々と触れ合う機会を積極的に作っていくべきと考えます。
 そこで教育長にお伺いします。
 将来の神奈川を担う人づくりのため、人や社会に尽くすために自らを向上させようとする「志」、すなわち大志というものを育む教育を、具体的にどのように進めていくのか、教育長のご所見をお伺いいたします。
 質問の第四は、障害者福祉についてお伺いします。
 はじめに、「かながわ障害者地域生活支援推進プログラム大綱」に基づく取組みについてお伺いします。
 在宅重度障害者等手当の見直しについては、激変緩和のため、2年間の経過措置を設け、その間に、在宅重度障害者等手当の見直し財源を活用した地域生活支援推進施策を構築することといたしました。見直し財源19億円のうち、16億円を、「かながわ障害者地域生活支援推進プログラム大綱」に基づく取り組みに活用するとのことでありましたが、聞くところによると、22年度予算での見直し財源活用額は、10億円に止まったとのことであります。
 もともと、障害者支援施策は、障害者自立支援法に基づくホームヘルプ、グループホームなどの18のサービスと、相談支援、移動支援などを含む地域生活支援事業、さらにそれをカバーする障害者自立支援対策臨時特例交付金事業、県単独補助と、かなり重層的な構造になっております。
 例えば、グループホームで見ると、まず、自立支援法に基づく訓練等給付という本来の報酬があり、そこに、基金事業による事業運営安定化支援、消防設備整備への補助、敷金・礼金への支援が入り、さらに人件費などに対する県単独のグループホーム運営費補助があり、加えて、県単独の障害者地域生活サポート事業による、バリアフリー化を含む整備費に対する補助、利用者への家賃補助、緊急時対応、地域住民の理解促進や世話人に対する支援、施設からグループホームへの移行支援及びアフターフォロー、体験入居事業など、実に多彩な事業を展開しています。
 これだけ豊富なメニューが既存事業にある中で、見直し財源の活用のひとつとして、グループホーム等サポートセンターなど、新規事業を措置したことは、一定の評価をするところであります。
 しかしながら、これでも十分な対応が図られているとは思えません。例えば、「神奈川県障害福祉計画(第2期)」では、グループホームについて、平成21年度からの3年間で、約1600人分の新たな確保、単年度あたり500人分以上の設置が求められていますが、障害者グループホームの設置数がそれほど増えているという話は聞こえてこないからであります。ですから、今回の施策で1600人分のグループホーム等が増える目処はついているのか、私は疑問に思っております。グループホームがなぜ増えないのか、その要因を分析し、例えば、運営費補助が足りないのであれば、限られた財源をそこに集中的に振り向けるなど、薄撒きに事業を増やすのではなく、「課題の明確化」と「課題に対する重点配分」をより図っていくべきなのではないかと考えます。
 短期入所などのレスパイトケアも同様であります。短期のみの利用者はケアが難しい割に報酬額が低く、施設側から見て不安定な要素も多い等の、根本的な課題が解決されなければ、さまざまなメニューで「レスパイトケアの充実」を謳っても、実効性のある取組みとはなりません。それは成年後見制度など権利擁護についても同様であります。
 そこで知事にお伺いいたします。
 地域生活支援プログラム大綱の中でも注目される「グループホーム等の設置促進」「レスパイトケアの充実」「権利擁護」の施策推進のために、一番の課題は何で、それに対してはどのような施策が一番有効と考えられているのか、また、転換財源を10億円しか活用していないのですから、それらの事業に、今後、より上乗せを図っていってはいかがかと考えますが、知事のご所見をお伺いします。
 次に、障害者地域生活支援施策のうち、市町村が実施する障害者地域生活支援事業についてお伺いします。
 市町村統合補助により賄われる地域生活支援事業には、地域活動支援センター、移動支援、居住支援、コミュニケーション支援、日常生活用具の給付又は貸与、その他の日常生活または社会生活支援など、幅広く、そして障害者にとってなくてはならないベーシックな支援事業が網羅されています。
 一方で、この補助事業は、統合補助金化されたことに伴い、必要額が十分に措置されておらず、そのため、養護学校の生徒の通学支援といった要望が切実かつ非常に強い事業であっても、それを実施している市町村はわずか3団体と、支援が十分に行われていない現状があると伺っております。
 これでは、いくら県が見直しによる財源を活用して、さまざまな新規事業等を実施しても、障害者地域生活支援の充実など望めません。その中で、県は22年度当初予算において、市町村統合補助を昨年度の約30%増と大幅に増やしており、このことは率直に評価するものであります。
 この市町村統合補助については、国においても、今年度以降は、これまでの不透明で不十分な配分から、実施したサービス量、すなわち前年度実績に応じた配分とするやに伺っており、透明度を高める制度変更が行われることは非常に望ましいことと考えております。
問題となるのは、新たなサービス実施に踏み出す初年度であります。初年度は、市町村統合補助が十分に行われないため、市町村が独自の財源を持ち出して実施しなければなりません。この、初年度の市町村の持ち出しに対し、県が新設した補助が「障害者地域生活推進事業費補助」であり、こういう、一見地味だけれど気の利いた施策こそ「先進的」と呼んであげたい気がします。
 ただ、この新たな補助のボリュームは5000万円弱に過ぎません。移動支援について言えば、特別支援学校が遠方にあり、障がい児の通学に毎日付き添うことが大きな負担になっているという切実な声が多く寄せられており、通学支援のニーズは相当に大きくなるはずです。果たして、これだけの額で、需要に十分応えることが可能なのか、疑問に感じるところであります。
 そこで知事にお伺いします。
 今回の「障害者地域生活推進事業費補助」で果たして、どれだけの市町村が移動支援の実施に乗り出すと見込まれているのでしょうか。また、市町村が実施する地域生活支援事業に対する補助のボリュームを、今後もっと増やしていくべきではないかと考えますが、知事のご所見をお伺いします。
 質問の第五は、不適正な経理処理の問題についてであります。
 当局の発表によれば、取引業者に架空発注して裏金をプールする「預け」や、物品納入時期をずらすなどの不適正経理が、県庁の全部署の9割に当たる374部署で発覚したとのことであります。
 また、県警においても、「預け」などの手口を用いた不正経理が、2003年度から2008年度の6年間で、総額約14億円に上ることが明らかになりました。
 県民からの信用を失墜させるこのような行為が、広く県庁内で行われていたのは驚きであるとともに、強い憤りを覚えるところであります。二度とこのような事件が起こらないよう、再発防止に努めなければなりません。
 再発を防止するため、徹底的な原因の究明と、その再発を阻止する仕組み作りが必要不可欠であります。職員の意識改革が必要であることは論を待ちませんが、単に職員の意識や資質の問題で済ませてしまっては、またいつ再発しないとも限りません。システマチックな防止策が必須であります。そして、システム的な不正防止のためのキーとなるのは「物品納入のチェック」ではないかと考えるところであります。実は、翌年度納入にしても、差し替えにしても、預けにしても、物品が正しく納入されたかどうかのチェックがしっかりしていれば起こりようのないことなのであります。わが会派の行田議員が決算特別委員会で質したように、発注担当者と、物品検収者を明確に分け、チェック体制の強化を図るべきであると強く訴えたいと思います。
 また、業者側の意識の問題も忘れてはなりません。「翌年度納入」「差し替え」「預け」……いずれも、業者の協力が不可欠であるからです。このようなことに加担する業者を、名簿登載停止にするなどの制裁はもちろん、なぜ、業者はこのようなことに加担するのか、その理由に立ち返って考えなければなりません。
 その理由を考えたとき、上がってくるのが、県が業者を選ぶ「随意契約」の問題であります。税務課の不正は、「随意契約」ではなく「入札制度」を使ったものでありましたが、その根本は「特定の業者と契約ができる」という仕組みであることは共通であります。
 たとえ随意契約であっても、発注先が特定の業者に偏っていないか、特に「見積もり合わせも不要」とされる少額の随意契約先が、特定の業者に偏っていないかなどのチェックは、もはや必須といえるでしょう。
 加えて、システム的に、発注が特定の業者に偏らないようにするために、名簿登載業者に対し、順番に見積もりを依頼するようにするなどの仕組みも、検討する必要があると感じるところであります。
 そこで知事にお伺いします。
 今後の不適正経理発生防止のため、物品納入に当たっての検収の強化、随意契約における業者選定方法の改善を図るべきではないかと考えますが、知事のご所見をお伺いします。
また、警察本部長にも、同様に、物品納入に当たっての検収の強化、随意契約における業者選定方法の改善についてどのようにお考えか、お伺いします。
 質問の第六は、知事の政治姿勢についてであります。
 はじめに、環境への投資について伺います。
 電気自動車の普及元年……先日、知事は議会への提案説明の中で、このようにおっしゃいました。今からハイブリッドで他社を追随するよりもEV(電気自動車)で先行すべしと知事が進言されたという日産自動車からも、小型乗用車型のEV「リーフ」が22年度後半に、めでたく発売されるということであります。私も、資金の目処も立たないまま、先日、先行予約希望者WEB登録というものをいたしました。また、慶応大学発のベンチャー企業「シムドライブ」が、知事もよくご存じのEV<エリーカ>の技術を利用し、2013年に量産をめざすEVの開発に、いすゞ自動車、三菱自動車など34の企業、団体が参加するとのことであります。様々な課題を残したまま、マーケットがここまで動き出すということは、ハイブリッドや新世代ディーゼルなど様々な先進技術がある中で、市場がEVを、時代を画する技術=ドミナント・テクノロジーとして認めたのでありましょう。
 問題は、そのような状況下で、一自治体がどこまで税金を投入するかであります。シムドライブに参加する企業も、獲得するメリットが想定でき、それを株主に説明できるからこその投資なのであります。
 県は22年度、電気自動車推進事業に予算を計上しています。やむにやまれぬ支出さえ、ようやくというほど財政が逼迫している中で、あえて税金を投入する以上、その投資によって、神奈川県の納税者が、他の都道府県民では味わえない、どのような「WIN」すなわち利益を獲得できるのか、説明する必要があります。EV普及に向けマーケットも本格的に動き出している中で、県が行う推進事業や導入事業の効果が、どれほどのものなのか。公用車の更新をEVで行うといっても、例えて言うなら、「松葉かに」が、まだ走りで値段も高いときに税金を使って役所が食べている、ということではないか、とも思います。
 さて、環境対策への税の投入ということでは、もうひとつ、気になっていることがあります。それは、県主導第三セクター、財団法人地球環境戦略研究機関、略称IGESであります。
 平成22年は20の県主導第三セクターすべてに対し、財政的支援の減額を行っており、平均すると平成21年度比で22.9%の減となっていますが、その中で削減率が2.9%と最も低いのが財団法人地球環境戦略研究機関、IGESです。22年度予算案において、県は、このIGESに対し、1億6979万6000円の財政的支援のほか、例年通り、湘南国際村にある本部の賃借料も負担することとし、その経費として年間で2億3084万2000円が計上されております。
 このIGESについては、昨年12月の行財政改革特別委員会でも大きな議論となりました。しかし、私としては、科学技術の素人が内容をよくわかりもしないで踏み込んだ議論をすることは危険であると考え、そのように申し上げました。これは、スーパーコンピューターなど、科学をめぐる政府の事業仕分けから得た教訓でもあります。
 しかしながら、毎年、県からかなりの財政的支援を受けている県主導第三セクターでありながら、事業活動や研究内容などが県行政とどう関わっているかが非常に見えにくい法人であることは間違いありません。
 一昨年の6月定例会代表質問で、私は地球温暖化問題を取り上げました。その際、地球規模のことを考えるのも大事だが、県内の気温や植生の変化、相模湾の海水温や漁港の潮位の変化など、足下の環境がどうなっているのか真摯にとらえないと、地球温暖化問題は語れないと申し上げました。IGESについても、県は多額の財政的支援を行っているのですから、もっと地元に目を向けた研究事業を行っていただく必要があると思います。
 一方、IGESには関西研究センターが兵庫県の支援を得て平成13年6月に開設されています。兵庫県の支援の仕方は、神奈川県とは異なり、補助金以外に事業委託も行っていると聞きました。この事業委託の中には、大規模事業者が中小規模事業者に技術や資金の支援を行う手法の研究などが含まれており、そうした研究成果を活用して企業の活動を支援していくことは、地域経済の活性化にもつながると考えます。
 そこで知事にお尋ねいたします。
 まず、現在、行っているEVに対する投資によって、神奈川県民は、他県民にはない、どのような利益を得ることができると考えているのか、知事のご所見をお伺いします。
 また、IGESは、気候政策のほか環境全般にわたる実に幅広い研究活動を行っています。今後、神奈川県の環境対策や温暖化対策を進めていく上で、そうした研究成果を地元企業の活動支援などに積極的に活かし、県行政との関わりを見えるように示していくべきと考えますが、併せて知事の所見をお聞かせください。
 次に、知事の退職手当についてお尋ねいたします。
 私は、再選直後の19年6月定例会の一般質問でも、21年2月定例会の予算委員会でもこの問題を取り上げさせていただきました。私が繰り返し申し上げているのは、知事の職務、責任の重さを考えたとき、退職金を含めた知事の給与が高すぎるということではない、ただ、給料と退職手当のバランスを考えたとき、給与体系が著しく退職金偏重となっており、知事の給与の実態が県民から見てわかりにくいものになっているので、そのバランスを是正すべきであるということであります。
 これに対しまして、知事からは、「特別職報酬等審議会にご意見をいただき、それを踏まえて進める」とのご答弁がありました。審議会で公正な審議をしていただくことはもちろん大事です。しかし、残念ながら、審議会で、退職金偏重を改めようといった議論は行われていないのが実情であると伺っております。
 何ら取り組む気配もないまま、知事の2期目の残り任期もあと1年。残り1年では、退職金偏重の給与体系を是正しようとすると、給料の月額が大きくなりすぎ、無理でしょう。残された道は、一部の知事や市長が表明されているような退職金の一部または全部の返上ということになりますが、それは私が申し上げる筋のことではありません。もっと早くから手を打っていただけたらと、非常に残念でなりません。しかし、ここで検討を終わらせるのではなく、3期目、もしくは新しい知事さんの1期目に向け、引き続き検討していただきたいと強く願っております。
 一般県民の方は、知事の退職金が4年で4000万円と聞いて、一様に驚きます。知事には、この一般県民の感覚、一般県民がこのことを知ったらどう思うか、ということを大切にしていただきたいのです。退職金は、年単位の短期のインセンティブとはならないこと、支給に不透明感を持たれやすいことなどのデメリットがあるともいわれています。民間企業でも、役員報酬等の退職金偏重を改めるところが増えています。
 県民から見てわかりやすい、県民に開かれた県政を、知事自らも実践し、「県民と協働する県政」を実現するためにも、是非、この退職金偏重の給与体系の是正に取り組んでいただきたいと考えるところであります。
 そこで知事にお伺いいたします。
 22年度予算のキャッチフレーズ、「先進と協働」の気概を持って、一般県民の感覚からかけ離れた高額の退職金を減額または廃止するよう努力をしていただきたいと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 以上で私の第一回目の質問を終わります。ご清聴まことにありがとうございました。