■文教常任委員会 職業意識の醸成について(平成19年1月25日)
<質疑一覧>


<質疑>
 8月の常任委員会でも質疑をいたしましたが、小・中学校において職業意識、仕事に対する意識の醸成をどのように図っていくかということについて、改めてやりとりをさせていただきたいと思っています。
 私が、前回お話をさせていただいたのも、高校からではちょっと遅いのではないかと思っているからです。世間では、子供のための職業体験のテーマパークができたりとか、「13歳のハローワーク」という書籍がロングセラーになっていたりとか、職業ということに対して、それなりに意識は高まっているのかなと思うんですね。やはり小さいころから社会の多様性を知るというか、様々な職業が、仕事が社会を支えているということを肌身で感じ取ってもらうということは大変大事なことだと思っています。
 また、子供の多様性というんでしょうか、例えば、算数は苦手だけれども図工が得意だとか、国語は苦手だけれども理科は好きだとか、そういういろいろな子供の個性がありますよね。得意、不得意、そういうことが将来の進路にうまく生きていくような教育をしなければいけないのではないかと思います。
 ちなみに、今日、中等教育学校の案というのをいただきましたけれども、ここにも学習活動の進路例というのが幾つか出てきました。それぞれの学校別にAさんからFさんまで、何通りかの進路が想定されている。ただ、これを見ると、何か見事にみんなエリート志向だなと思うんです。みんな相当に社会的地位の高い、そういう職業を目指している。そんなパターンばかりが載っているような気がするんです。もっともっと、普通の大多数の子供たちが、漠然とではあっても子供のころから様々な職業へのあこがれを持てるようにならないか。それが恐らくは大学全入と言われる時代に、大学教育の多様化にもつながっていくのだと思うんです。
 ちょっと前振りが長くなりましたけれども、知事も神奈川は「ものづくり」ですからと、何か新聞記者に語っていたときがありますけれども、本当にそれを支えることのできる人材施策が図られているのかという疑問があります。農林水産業の後継者がいないとか、職人の技術を継ぐ人がいないとかいうのは、これは、そうした産業の生産現場がどんどん海外に移っているということもあり、教育だけの問題ではないと思うんですけれども、教育の現場で何ができるのかということを、改めて、今日は、具体的にお聞きしたいと思います。
 前回の質疑の中で、体験的な学習を通して、子供たちの将来、自分たちが将来に対して夢や希望が持てるように、いろいろな関連する団体とか機関、そういったところと連携しながら、発達段階に応じた、いわゆるキャリア教育をしてほしいというふうに要望したんですが、今日は、今、申し上げた関連する団体、機関との連携の具体的な内容を初めといたしまして、何点か伺いたいと思います。
 まず、初めに、関連する団体、機関との連携について、具体的な内容、または取組の状況をお伺いします。

<答弁> 神原子ども教育支援課長
 お尋ねは、関連する団体、機関との連携ということでございますけれども、平成17年度からキャリア・スタート・ウイーク支援会議という協議会を設置しております。会議の目的は、地域の教育力を生かしながら、職場体験など、体験的な活動を円滑に実施して、キャリア教育の推進を図るということを設置目的にしております。そのために、経済団体の方々、それから行政機関、それからPTA等の代表の方々に委員になっていただきまして、今も協議を進めてきております。平成17年度は学校やあるいは各団体、機関のキャリア教育に関する取組内容についての情報交換というものを中心に取り組んでまいりました。その結果、それぞれが行っている団体の性格、あるいは推進している内容等について理解を深めながら、今年、平成18年度につきましては、支援会議の委員がそれぞれの立場から職場体験を円滑に実施するための、いわゆる組織的な連携のあり方等について具体的な協議を進めているところでございます。




<質疑>
 今、この間の取組についてお話をいただきましたが、これは、あり方を検討している段階というふうにとらえてよろしいですか。

<答弁> 神原子ども教育支援課長
 具体的には、各事業所等で受け入れていただくというような方策を進めてきておりますけれども、各団体それぞれに特色や、あるいは課題をお持ちでございますので、そうしたことを具体的に情報交換をする中で、どういうハードルを越していったらいいのかという、そういう点での協議を、今、進めているところでございます。




<質疑>
 現在、そういう連携を推進しているということだと思うんですが、その中で課題になっているのはどんなことでしょうか。

<答弁> 神原子ども教育支援課長
 いわゆるキャリア教育を進めていく上で、体験的な活動が重要であるということについては、それぞれ共通理解が図られているところでございますけれども、実際に、これから職場体験を受け入れていくということになったときに、それぞれの事業所のまず課題といたしましては、受け入れた生徒の対応に費やす人手が確保しにくい。特に中小企業団体の方から、こういう意向はよく聞きます。
 それから、体験するためには、何でもすべてやれるわけではないので、体験する内容、中学生にふさわしい内容をある意味では用意をするという、そういうような手間というようなものについての課題があるなと。それから、仮に生徒や社員がその中で怪我をしたりというようなこと、あるいは商品を間違って壊してしまったと、そういったときの補償とか、そういった具体的な問題については、これからまだクリアしなければならないところがあるなという御意見が出ております。
 それから、学校の方といたしましては、私どもの方でもキャリア教育を進める意味で、体験的な職場体験というものを進めてまいります。それについて、大変呼応する学校が増えてきたことによって、逆に、受け入れていく事業所に限りがございますので、なかなか受け入れが難しくなってきている。というか、実施日数も、できれば5日間というふうな連続した体験が教育的効果が高いものですので、そうしたことを推進するわけですけれども、実施が長くなればなるほど、学校数が増えれば増えるほど、逆に、受け入れてくれる事業所に限りがあるために、そこのところが、今、調整がなかなか難しいと、こういったような課題が話し合われております。




<質疑>
 今のお話を伺っていると、すごくハードルが高いなと思うんですよ。中学生にとって職業体験が大事だというのはよく分かりますし、私は、小学校からでもいいかなと考えているぐらいです。しかし、体験というのはなかなか手間もかかるし、受け入れ側がいろいろメニューをそろえるのも大変ですよね。であれば、見学でもいいと思うんです。実際に、私もこの仕事についてから、川崎のJFEの工場の現地調査をさせていただいて、鉄ができていくときのダイナミックなあの光景というのは、初めて見て度肝を抜かれたんですけれども、例えば、小・中学生がああいうものを見るだけでも、ものすごく大きな意味があるのかなと思うんです。ですから、余り体験、体験というふうにこだわっていると、確かに受け入れる側も大変だから、なかなかすそ野が広がっていかないように思うんですけれども、そこはどのように考えられますか。

<答弁> 神原子ども教育支援課長
 おっしゃるとおりで、やはり限りがあるということで、中学校、小学校というのは、どうしても地域性がございましてそう遠くへは行けませんので、そういった意味で、工場見学とか、あるいは擬似体験になるかもしれませんけれども、テレビなどでも世界で一番受けたい授業などで、工場見学なんていうような場面が出て、大変、工場の持っているメカニズムのすばらしさというものがあったり、あるいはこれもテレビ番組ですけれども、いろいろなものにチャレンジしている中小企業の方が主人公になってくる、そういったようなものをいわゆる教材として録画して子供たちに見せるといったような取組を社会科の教員がやったりということもございます。
 それから、小学校の場合は、なかなか実体験そのものが少ないので、社会科の中で工場見学ですとか、あるいは地域のお店屋さんに行って話を聞くとか、あるいは中学でも働いている人に逆に来ていただいてと、そういうような取組も同時並行で行っているところでございます。




<質疑>
 今の御説明は理解させていただきました。
 確かに小・中学校は地域性という問題があるので、余り遠くに出かけていくというのは難しいと思うんですけれども、その辺は、神奈川県内でもいろいろな産業がある。横浜の子供では、なかなか林業の現場なんていうのは見る機会もないと思いますし、ある意味で、そういう広域的な多様性を子供たちに知ってもらう上では、これは本当に県の出番だと思うんです。いろいろなメニューを用意してあげて、情報を提供してあげて。そのあたりの関係はちょっと考えていただいて、県でなくてはできないような、そういったことも市町村に対して協力をしてあげてほしいと思います。
 先ほど、連携の話がありましたけれども、今後、連携の方向性、どのように発展させていくか、そのあたりのことを分かる範囲でお聞きします。

<答弁> 神原子ども教育支援課長
 具体的には、今、県が支援会議というものを開いておりますので、これは県の代表の方々がお集まりでございますけれども、それを具体的に各市町村段階で、いわゆる地域でこうしたような推進の会議を今立ち上げようということで、それぞれの団体が話し合っているところでございます。やはり、実際に行われる現場に近いところで、こういう連携の協議会をつくっていくということが、まず大事だなというふうに思っています。
 それから、キャリア教育については、今さらながらではございますけれども、学ぶこと、それから働くこと、あるいは生きることのとうとさというようなものを実感することができるという、そういう多くの教育的効果があるというふうに私どもも認識しておりますので、こうした考えに基づいて、先ほどから御指摘もいただいておりますように、広域的に様々な体験ができるようなシステムをつくっていきたいというふうに思っております。




<質疑>
 小・中学校のキャリア教育というのは、実際に子供たちが将来、夢や希望を持てるようにするということでは、高等学校の生徒に行うキャリア教育とは違った、いろいろな工夫が必要であると思うんですけれども、その辺、一番どんなことが大事なのか、お伺いしたい。

<答弁> 神原子ども教育支援課長
 今、具体的に言いますと、かつてのように中学校から卒業して、ストレートに職業に結びついていくという、そういう生徒は大変少のうございます。その意味では、次のステップというものを考えていきますので、そのときに、例えば、従来の狭い意味での進路指導という形ではなくて、もう少しその先を見通して、今、働く意味とか、働くことの楽しさ、あるいはもっと言うと、自分が働くことで世の中の役に立っていって、感謝されて、その感謝されることがうれしいという、そういうような体験も、これもやはり大事なキャリア教育の要素だろうというふうに思います。そういった意味では、特に発達段階のまだ前の段階である小学生について見れば、すべての自分が生きている暮らしの中で、自分が人としてちゃんと尊重され、そして、その自分と同じように他人も尊重され、そして一緒に生きていくことが楽しいというようなところから積み重ねていくということ、これが大事なのではないかというふうに思っています。




<質疑>
 私もそのとおりだと思うんですが、それでは、県の教育委員会として、来年度以降、平成19年度以降、小・中学校のキャリア教育を具体的にどのように推進していくのか。それをお聞きします。

<答弁> 神原子ども教育支援課長
 かながわキャリア教育推進フォーラムというのを、昨年11月に開いております。そこで、小学生、それから中学生、それから、今年度は養護学校の生徒の発表の場面をつくりました。その中で、それぞれの立場で、それぞれの段階はございますが、具体的に商店街で働いたり、自ら職場体験の場所を開拓してきたり、あるいは養護学校の場合にはストレートにこれから社会的な自立を図っていく、その学習の一歩を踏み出している。そうした体験を大変いきいきとした形で発表をしていただく機会がありました。こうした機会をやはり具体的に、今後も引き続きつくっていきたいなというふうに思っております。




<質疑>
 確認をさせていただきますが、文部科学省でキャリア教育推進地域指定事業というのを平成16年から実施されていると思うんですが、これは、本県はその中に該当するものはあるんでしょうか。

<答弁> 神原子ども教育支援課長
 今、御指摘いただきましたキャリア教育の指定推進地域の事業でございますが、平成16年、17年、今年18年、この3年間の取組として、足柄上地区で行っております。それで、今年度、一応、3年間の研究が終わるということで、これも11月に山北の中央公民館でその発表会を開きました。そのとき、やはり小学生、それから中学生、高校生もおりましたが、具体的な職場体験の実践発表をしておりました。
 特に中学生が非常にしっかりとした発表をしていたのを印象に持っています。会場に向かって、世の中で働くことで、一番大切なことは何だと思いますかというような問いかけを中学生がやりました。その問いかけに対して、みんな一瞬どういうふうに答えたらいいんだろうと、とまどいながらいたら、その子がはっきりとした口調で、それは信頼ですと言う。私はその信頼というものに支えられて、自分は仕事が成り立っていくんだということを知りましたと、そういうような発表をしておりました。




<要望>
 最後に要望させていただきます。今のお話でも分かりましたけれども、本当にキャリア教育というのは、すごく重要なんだなということを改めて痛感をいたしました。日本の、神奈川の将来を担う子供たちですから、なるだけ自らの将来の夢とか希望とかを持ち続けてもらいたいと思いますし、そのためには、これからも教育委員会はもちろんですけれども、関連する団体、また県庁の中の組織、いろいろなところと連携をどんどん深めていただいて、キャリア教育を推進していただきたいと要望させていただいて、質問を終わります。