インターネットを活用した情報提供という観点から質問いたします。
我が国における自殺者数は、警察庁の統計によれば、平成10年以来、8年連続で年間3万人を超えており、これは交通事故による死者の4倍にも相当する数字であります。また、自殺未遂者は既遂者の数倍から数十倍とも言われており、官民を問わず、自殺者の減少に向けた取り組みが重要かつ緊急の課題になっています。
そうした事態を受けて、本年6月に自殺対策基本法が成立し、国、自治体、事業主、国民の自殺対策への責務が明らかになったところであります。また、総務省が平成17年に実施した「自殺予防対策に関する有識者意識調査」によれば、97.8%の専門家が、自殺予防に向けて現行以上の行政機関の取り組みの強化が必要と答え、さらに、約8割の専門家が、地域における住民向けの対策として、相談機関を活用するための情報提供の充実、相談体制の充実を訴えております。
そこで、私が考えるのは、インターネットを活用して、心に病を感じている人々や死を考えるまでに思い詰めている人々に対し、少しでも早く専門医を受診できるよう誘導することができないかということであります。知事は、平成16年9月定例会における自民党の森議員の質問に対する答弁の中で、「うつ病などの心の病を感じた場合、早めに専門の医療機関に見てもらうことも重要だと思います。しかし、まだまだ精神疾患に対する理解が進んでいないこともあることから、医療機関のとびらをノックすることにちゅうちょする方もいるようであります」とおっしゃっていますし、慶応大学保健管理センター教授で精神科医の大野 裕氏は、精神疾患を抱えながら、医療施設を受診する人が全体の3割にすぎないことが問題であると述べています。
私も、ある県民の方からご相談を受けたことがあります。その方のお子さんが何週間も思い詰めた様子で、精神的にも不安定な状態が続いており、心配ということでした。県の芹香病院をご案内したのですが、精神病院や総合病院の精神科はご本人に強い抵抗感がありました。あれやこれやと思案しながら、私はパソコンに向かい、「うつ」「メンタルヘルス」等の言葉を打ち込みました。検索の結果、多くのインターネットサイトに混じって、メンタルクリニックのホームページが幾つか表示されました。さらに、その方の居住地を条件として加え、絞り込んでいきます。結果として4軒のメンタルクリニックを選び出し、お伝えしたところ、こういう雰囲気ならばと、ご本人も納得して、その中の一軒に通院を始めたそうであります。もしかすると、精神的に追い詰められた人が救いの手がかりを求めて向かう先は、今の時代、インターネットなのかもしれないと思いました。
現在、神奈川県精神保健福祉センターのホームページに、県内の保険福祉事務所や諸団体にリンクできるボタンがあり、その中の一つに「神奈川県精神神経科診療所協会」のサイトがありますが、たどり着くまでのプロセスが多過ぎる感があります。一方、県内のいわゆるメンタルクリニックの中で、その協会に加盟している診療所は約3割にすぎないこともわかりました。協会とは別に、新たなインターネット上のネットワークをつくる必要性を痛感したところであります。
私は、昨年度、商工労働常任委員会で、勤労者のメンタルヘルスについて質疑をさせていただきましたが、その折に、インターネット上に精神・神経科や心療内科の開業医、いわゆるメンタルクリニックのネットワークをつくっていただけないかと申し上げました。「心の相談 神奈川県のメンタルクリニック」といったウェブサイトを立ち上げていただき、もちろん県のホームページや県精神保健福祉センターのホームページからもリンクできるようにします。
そこで、知事にお伺いをいたします。
まずは、インターネットに救いの手がかりを求める人々が、神奈川県精神神経科診療所協会のサイトにアクセスしやすいよう、一例として、神奈川県精神保健福祉センターのホームページをリニューアルするなど、県として積極的な手を打つべきと考えますが、知事のご所見を伺います。
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