■文教常任委員会 国語教育の充実について(平成18年7月6日)
<質疑一覧>


<質疑>
次は国語教育についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 私の手元に、川本三郎という方の随筆のコピーがありまして、サン=テグジュペリの「星の王子さま」のことが書いてあります。内藤濯の翻訳が岩波から随分長いこと出ていたのですけれども、版権が切れたということで、最近、新訳が出てきている。
 例えば内藤濯訳で、冒頭に書かれた蛇があるのですけれども、これは旧訳ですと「ウワバミ」となっています。新訳を読むと、「大きな蛇」に改められている。ウワバミというのは古い言葉だからといって、恐らく捨てられてしまったのだろうけれども、大きな蛇というのでは、何とも味気がない。ウワバミというおもしろい言葉があるのだから、今の子供たちにも伝えていったらいいというふうに川本さんは書かれています。
 「けんのん」という言葉もありますが、「危険」というふうに改められている。「こなれる」という言葉も「消化される」という言葉に改められている。
 古い日本語が、新訳で次々と消えているのは実に寂しい。今の子供だって、ウワバミ、けんのんとは何だろうと思うことから、日本語のおもしろさ、豊かさを知っていくのではないだろうかと思うのです。
 平成17年10月26日の中央教育審議会答申で、国語力はすべての教科の基本となるものだと、その充実を図ることが重要であるというふうに述べられているところであります。
 私は、小・中学校において、国語教育の充実というのは極めて重要かつ喫緊の課題であるととらえています。最近、文章力の問題というのがしきりに言われておりますけれども、子供たちの文章を読みますと、むしろ語彙の貧しさというものが非常に気になっています。私たちが戦前の若者の文章を見ると、大変豊かな表現、又は難しい言葉をたくさん使っていて、驚かされるわけですから、今に始まった問題ではないと思うのですけれども、やはり知っていた方がいいだろうなと感じる日本語や言葉が、身の回りからどんどん消えていっているというのが実感です。
 ですから、子供たちの語彙、ボキャブラリーを増やしたり豊かにするためには、当然国語の授業という問題もあるのですが、それ以外に読書活動なども重要ではないかと思います。
 私は、この国語教育について少し時間をかけて考えていきたいと思っています。その第一歩として、小・中・高等学校における国語教育の現状と課題について何点か質問させていただきたいと思います。
 まず、小・中学校での状況についてお伺いをしたいと思います。
 確認の意味で、教育課程上、小・中学校における国語教育というのはどのように行われているのかお伺いしたいと思います。

<答弁> 子ども教育支援課長
 教育課程上の国語教育でございますが、まず小学校では、1時間の単位時間というのが45分というふうに定まっております。国語に充てる時間は、それぞれ学年によって若干違うわけですけれども、1年間をおよそ35週と計算して、1週間当たりの時間数でいきますと低学年で8時間程度、中学年が7時間程度、そして高学年になりますと5時間程度ということになっております。
 中学校において、1時間の単位時間は50分ということになっておりまして、1年生が週に4時間、2、3年生は3時間ということでございます。学習内容につきましては、3領域に大きくくくられておりまして、話すこと、聞くことという一固まり、書くこと、読むこと、これらの三つの領域に加えて、語意や語句といったような言語事項というものがもう1項目加わっております。それぞれを各学年で繰り返しやっていくというのが国語教育の実情でございます。
 言語事項につきまして、漢字の学習については小学校常用漢字が1,945文字、このうちの1,006文字が各学年ごとに示されておりまして、第6学年修了までの間にすべて読めるようにし、前の学年の漢字についてはすべて書けるようにする。中学校については、その1,006文字にプラスして残りの939文字を読めるようにし、6年生までの小学校の学年別の漢字配当表に示された1,006文字を書いて、文章の中で適切にそれを使えるようにといった指導を行っているところでございます。




<質疑>
 明確な目標、指針というものがあるということが分かりました。
 それでは、本県の小・中学校の児童生徒の国語力について、教育委員会としてはどのように認識しているのかお伺いしたいと思います。

<答弁> 子ども教育支援課長
 毎年、小学校5年生と中学校2年生で実施しております「学習状況調査」がございます。これは、基本的な事項を中心に、学習指導要領に示されている内容がどのように生徒に定着しているのか、また教師の指導の今後の改善にも役立てたいということで実施をさせていただいております。
 平成17年度の国語の調査結果につきまして、例えば小学校では、相手や目的を考えて書くという問題で、必要のある事柄が不足しているといったような誤答があったり、また、読む能力を問う問題では、文章中の語句に着目させることや、全体の内容を把握するといったことに若干の課題が残っているという分析が出ております。
 また、中学校では、聞き取りの問題において、話の中心部分を的確にとらえて聞き取ることとか、単語に関する知識を問うこと等について、若干の課題が残っているということでございます。
 しかし、漢字につきましては、小学校それから中学校で、それぞれ書くことや読むことについて、過去の同一の問題と比較すると、統計学的に優位な上昇が見られるといった結果も出ているところでございます。




<質疑>
 漢字については、今、漢字検定がブームのようになっているし、クイズ番組でも漢字の読みのようなものが出題されたりということで、統計的に上昇しているということも伺いましたけれども、そういった結果を踏まえて、県内の小・中学校への指導というのはどのようにやられているのかお伺いいたします。

<答弁> 子ども教育支援課長
 「学習状況調査」につきましては、結果をまとめたものを作りまして、県内のすべての小・中学校に配布させていただいております。その中で、今後の指導についてという項目がありまして、各学校の日ごろの学習指導に生かせるように、できるだけ具体的な内容で例示をするように努めております。
 例えば小学校でございますけれども、ふだんから自分が意味の分からない言葉や読み方の分からない言葉があったら、すぐに辞書を引いて調べる習慣を付けていくことが大切ですので、授業中、辞書が常に机にあるという環境をつくりましょうと。あるいは中学校では、様々な文章や資料を読んで、優れた文章を味わう機会を充実させるために、朝の読書活動等、継続的に読書に親しむ時間を設定することも効果的ですといったような内容を例示させていただいております。
 このほか、指導主事会議や直接的に県下の教職員を集めて行う教育課程の研究会もございますので、こういった機会をとらえて、具体的な傾向と対策、そして今後についての指導をさせていただいておるところでございます。




<質疑>
 小・中学校で、国語教育の充実ということについて具体的にどのような取組を行っているのでしょうか。

<答弁> 子ども教育支援課長
 まず、何よりも、各学校において国語教育の充実がなされるということが一番大事なことだと思っております。教育委員会といたしましては、研究委託事業を通じまして、各学校の自主的な研究活動を支援してまいりたいと思っております。また、国の「国語力向上モデル事業」というのもございまして、これらを活用して、児童・生徒の国語に対する関心や興味を高める取組も行っているところでございます。国語の授業における指導だけでなく、国語力というのは、すべての教科を通じて高めていくということが言われておりますので、各教科、総合的な学習の時間、あるいは特別活動の中の話合いの時間といったものも有効に活用しながら、教育活動全体の中で国語力の向上を図ってまいりたいと思っております。




<質疑>
 分かりました。
 続いて、高校における国語教育はどのように行われているのかお伺いしたいと思います。

<答弁> 高校教育課長
 高等学校の国語でございますけれども、学習指導要領には六つの科目が示されております。国語表現の氈A、国語総合、現代文、古典、古典購読の6科目でございます。その中から国語表現沂yび国語総合のいずれかの科目を、すべての生徒に履修させるということになっております。国語総合という科目は、教科書を見ていただければ分かりますけれども、従来型の科目でございまして、現代文があり、例えば小説でいえば芥川龍之介の羅生門などがあり、古文があり、徒然草や平家物語が教科書に載っております。さらには、漢文などが記載されているという、オールラウンド型のものでございます。
 一方、国語表現氓ノつきましては、かなり趣が変わりまして、読むというよりもむしろ小論文であるとかレポートを書かせること、あるいはいろいろな形で発表させるといったことの指導を中心にしたような教科書の体裁になっております。
 現在、県立高校151校のうち、国語総合を必修としている学校は131校ございまして、残りの学校につきましては国語総合、国語表現氓フどちらかを必修にする、あるいは両方を必修にするというような形になっております。多くは1年次にこのいずれかの科目を履修し、2年次、3年次で現代文なり古典なりという学習を重ねていくという形でございます。




<質疑>
 現在、高校における国語教育の課題というのがありましたら、お聞きしたいと思います。
 また、その課題を踏まえて今、どのような取組を行っているのか、併せてお答えいただきたいと思います。

<答弁> 高校教育課長
 私どもは、平成16年度から高校2年生を対象に「学習状況調査」を行っております。平成17年度の国語の結果を見ますと、やはり書くことですとか文章の内容を的確に読み取って、その内容を整理し記述する表現力といったようなものが十分に身に付いていないということがうかがえるところでございます。
 さらに、入学者選抜の学力検査について、今年の教科別の合格者平均点も公表させていただきましたが、その中身を見ますと、漢字の読み書きの問題の一部で正答率が低いというようなこともございます。例えば惜しくも敗れるという「惜敗」というような漢字の読みが、25.9%しか正答率がございません。あるいはためるという意味の「貯蔵」という漢字を書かせるというのは33.7%の正答率でございます。
 さらには、20字から30字で記述する条件作文というような問題も出しておりますけれども、その辺もやや正答率が低いというような傾向が見えるところでございます。
 そうした中で、基礎的な力と表現する力をどのように伸ばしていくかというようなところが私どもの課題でございまして、授業の改善というものが基本になってまいりますけれども、一つは、モデル校、拠点校等での取組がございます。そうした中で、例えばある学校では、全校全学年で漢字テストを継続して行っていると。先ほど委員のお話にございましたけれども、漢字検定などを一つの目標に置きながら、ステップを踏むような学習に取り組んでいる学校もございます。また、書くことにおける指導、あるいは古典分野などで音読をさらに発展させまして、生徒全員で音読をする、分読のような取組を行っているような学校等、様々な取組が行われております。
 また、読書活動にも力を入れていきたいという考えもございまして、各学校の取組の中でプロによる朗読会の開催や、全校でやっていただいておりますけれども、学校としての必読書、推薦書を決めて生徒にそれを示していただいて御指導いただくというような様々な取組も行っております。しかし、基本は授業の中で受け身になるだけではくて、自分の方から積極的なものを表現していくような力を伸ばす授業に向けたさらなる改善というものが、今後目指していかなければいけない課題だと考えているところでございます。




<要望>
 最後に要望させていただきます。
 まず、問題の所在を明らかにすることから始めさせていただきますけれども、具体的な解決方法に関して、総合的に考えていく必要があるととらえております。しかし、この学校教育が担う部分というのは、大変大きいものがあると思いますので、今後は神奈川県として、国語教育について独自の取組を含めて検討をお願いしたいと思います