■交通・地域活性化特別委員会 地域のバス交通への県の関与について(平成18年7月4日)
<質疑一覧>


<質疑>
 私からは、地域の公共交通に対する取組について何点かお伺いをしたいと思います。
 今日、午前中の報告の中で、神奈川県の交通施策について、平成17年3月、高齢化などの社会状況の変化を踏まえて、かながわ交通計画の追録版を策定したというお話をお伺いいたしました。この追録版においては、ソフト施策の充実強化ということで、バス等の公共交通機関の有効活用を図る「公共交通の連続性や利便性の向上」、という記載がございます。午前中の説明でも、今、バスの利用者が激減をしている、激減というかかなりの勢いで減っていて、なかなか厳しい状況であるということもお伺いいたしました。
 しかし、現実的には公共交通の主体というのはインフラの問題等も考えますと、バスというのがこれからも主要な部分を占めていくのではないかというふうに思います。すなわち、バスを主体とした公共交通を基本に、特に高齢者の生活圏における移動手段として、そういった地域交通を充実させていくことが大変重要であるというふうに考えております。そこで、県内における公共交通の充実や移動手段の確保ということに向けた取組について、何点かお伺いをしたいと思います。
 午前中の報告の中にもありましたし、また他の委員の質疑でもあったと思うのですが、平成14年度に路線バスの需給調整規制が廃止されました。それによって路線バスの撤退というのが進んでいるというふうに承知をしているのですが、神奈川県内においてはどのような状況にありますでしょうか。

<答弁> 交通企画担当課長
 県では、乗合バスの需給調整規制の廃止に対応いたします道路運送法の改正に伴いまして、事業者の判断で容易に路線バスが廃止される可能性があるということから、これに対処するため、平成13年6月に副知事を筆頭とする神奈川県生活交通確保対策地域協議会を設置し、県内のバス事業者に対する路線退出等の意向調査を行っております。
 現在まで、県内では187系統について路線退出の意向の申し出が出ております。このうち、102系統につきましては運行回数が極端に少なく、利用客もほとんどない。また、他のバス系統などで代替交通手段が確保されており、生活交通確保策を講ずる必要はないという判断の下、協議会において102系統について、廃止あるいは大幅な運転本数の減少という方向性が出されております。




<質疑>
 この187系統あるいは102系統という数が、県内のバス路線の中でどれくらいの比率を占めるかというのがちょっと分からないので、これが全体として見たときに、どれほどの次元であるかというのが私も想像ができないんですが、お年寄りや子どもなど、自動車を運転したりする手段を持たない、そういう人たちの生活交通の維持確保をどうやって担保していくかということが大変重要な政策課題になっているんだと思うんです。県として、今御報告のあった撤退する路線バスへの対応として、どういう取組を行っているんでしょうか。

<答弁> 交通企画担当課長
 先ほどお話しいたしました協議会に、下部組織といたしまして地域ごとの分科会を設けております。その中で、基本的には地域の交通に主体的に取り組み、市町村、そのほかに国、バス事業者も入りまして生活交通の確保対策について協議、調整を行っております。
 その中で、県といたしましては、複数の市町村にまたがる地域の広域移動を支える路線につきましては、県が主体的に関与して路線確保のためにバス事業者へ補助などを行っております。また、地域内交通を支える生活交通として、市町村が代替手段等を検討していくという確保策を講じる際に、そのような適当な路線があるという場合は、市町村の取組、いわゆる実証実験等を行って本格的な実行に入っていきますので、その実証実験に対して県から支援を行っております。
 このような支援あるいは市町村が自らバス事業者への補助等を行っている路線は、先ほどお話ししました187系統のうち46系統となってございます。




<質疑>
市町村をまたぐ広域移動に関しては、県が主体的に関与しているというような説明がありました。また、実証実験等に対する支援ということもありました。
 やはり地域の交通の問題というのは、一義的には市町村がまず取り組んでいくということだと思うんですが、最近では市町村とか地域が主体となったコミュニティーバスや新しい移動の手段といったものが導入されてきていて、県内でも相当の数があるのかなと思いますが、現在の状況というのはどのようになっていますか。

<答弁> 交通企画担当課長
 今、委員のお話にありましたコミュニティーバスでございますけれども、これは既存のバス路線だけではカバーし切れないニーズに対応する乗合バスということで、利用者の利便性や多様化するニーズに対応する地域に密着した新しいタイプのバスシステムと考えております。
 現在、県内の市町村で取り組まれているコミュニティーバスにつきましては、交通不便地域の解消とか高齢者や障害者の移動制約者に対する対策として、また公共施設を巡回するものとして、様々な目的で導入されております。具体的な導入事例といたしましては、茅ヶ崎市のえぼし号とか、綾瀬市のかわせみ号をはじめとしまして、大和市や愛川町など12市町14団体において現在運行されております。
 また、地域の商工会議所やNPO法人が主体となってコミュニティーバスの実証実験が行われているという例もございます。。




<質疑>
 分かりました。今、NPO法人ですとか商工会議所という話も出てまいりましたけれども、いわゆるバスの利用者だとか商店街だとか、そういった受益者自らが主体的に地域の交通を考えようという動きが出てきていると思います。
 例えば、有名なところでは、京都市伏見区の醍醐コミュニティーバスというのは、地域の個人とか企業からお金を出してもらう形で、行政からの補助を一切受けないで運行しているというところがあります。また、同じ関西ですけれども、神戸市東灘区の住吉台というところの住吉台くるくるバスというものなんですが、私の地元の保土ヶ谷というところも高低差の激しい地域なんですけれども、この住吉台というところも非常に高低差がある地域なんですね。ですから、そこのコンセプトというのは、いわゆる広く地域を回るというよりは高低差のギャップを解消するバスサービスみたいな形で、やはり地域特性を生かした試みがされている。これは、平成15年度の全国都市再生モデル事業という国の受託事業でバス運行実証実験を行って、評価が高かったところから実際に営業路線にしたということらしいんです。
 例えば、こういった様々なコミュニティーバスの導入等の新しい地域の取組に対して、県として積極的に関与していくとか、そういう可能性みたいなものがあれば教えてください。

<答弁> 交通企画担当課長
 委員お話しのように、県内市町村におきましても、路線バスに代わる新たな地域交通システム、特にコミュニティーバスについて、現在でも相模原市、寒川町等で検討委員会が開かれておりまして、県といたしましては当然そういうものに参加いたしまして、技術的支援あるいは県内外の情報提供を通じてバックアップしていくという取組を進めております。
 また、地域交通研究会というものについて、先ほどもお話しさせていただきましたが、地域交通研究会の構成は、今まではバス事業者が主体だったんですが、昨年から鉄道あるいはタクシー業者さん、それと今後、NPO法人がいろいろと主体になることもあるのではないかということも視野に入れまして、県でNPO法人を所管しております担当課もオブザーバーという形ですけれども参加していただきました。また、県内の全市町村にも入っていただいた中で、新たな地域交通に関する意見交換を行っているところでございます。




<質疑>
 一つ参考までにお聞きしたいことがあるんですが、いわゆるコミュニティーバスを運行するときに、道路運送法の第21条を適用する場合、つまり貸切バスなど運行している会社がいわゆる路線バスを運行するという形と、もう一つ、第80条というのがあって、これは自家用自動車というのは基本的に有償で運送の用に供してはならないとされているけれども、例えば災害のために緊急を要するときとか、公共の福祉を確保するためにやむを得ない場合であって、国土交通大臣の許可を受けたときにはこの限りではないとされている規定を適用して運行しているケースがあると聞いたんです。
 例えば、全国で見るとコミュニティーバスを運行している人の許可種類別というのを見ると、第80条の適用でやっているのが24%ぐらいあるんですが、県内でこの第80条を適用してやっている事例というのはありますか。

<答弁> 交通企画担当課長
 道路運送法の第80条が適用されて許可を受けられるのは過疎地のみということになっておりまして、県内に過疎地はないということでありますので、事例はございません。




<質疑>
 分かりました。今NPOですとか、そういった新しい取組に関してのお尋ねをしたんですが、一方で、市町村は様々な課題を抱えている中で、当たり前の話ですが、その市町村が主体的に地域の公共交通にかかわっていく。それに対して、県が何かサポートできるとすればどんなことですか。

<答弁> 交通企画担当課長
 バスをはじめとした地域交通というのは、当然市町村が主体になって取り組んでいくということで、県といたしましては、そういう取組を側面から支援していくのが県の役割というふうに認識しております。
 そういうことで、先ほどもお話ししましたように、市町村において新たな地域交通システム導入に向けた検討会等を設置するような場合には、それに参加いたしまして、技術的支援あるいは情報提供を行うというのが主な取組になろうかと思います。それと、今後の地域交通、特に公共交通への行政のかかわり方というのは大きな問題というふうに認識しておりまして、そういう中で昨年から県内の交通に造けいの深い学識経験者の方をお招きしまして、それと県内の市町村と一緒になって公共交通への行政のかかわり方というようなことについて勉強を始めたところでございます。そういう中で意見交換をしながら、県としても支援できればというふうに思っております。




<質疑>
 今、担当課長の方からも、行政が積極的にかかわっていくべき課題であるというようなお話もございましたけれども、今後、地域における公共交通というのは、特に高齢社会がこれからもますます進んでいく中で大変重要な課題であると思っています。県民、これは地域住民と言い換えても良いと思いますが、交通事業者、行政、それぞれが一体となって、地域の交通をどういうふうにしていくんだという将来像をその三者がきちっと共有をしていくということが大事だと思います。また、その中で公共交通のあるべき姿というものを考え、築き上げていくということが大変重要だと思います。
 神奈川県といってもいろいろな地域があって、それぞれの地域にふさわしい公共交通の形というのがあると思いますが、その実現に向かって国や交通事業者等の関係者としっかりと連携しながら、これはまず一義的には市町村がしっかりと取り組まなきゃいけないわけですが、しっかりサポートしていただきたいし、また先ほど例に出しました住民の方々による様々な取組に対しても、いろいろな情報が県には集まってきているというふうなお話もありましたので、そういった情報を住民の方々にしっかりとフィードバックをしていくということも含めて支援をしていっていただきたい。また、市町村に対しても、しっかりとサポートをしていっていただきたいということを要望いたします。
 最後に1点だけ、確認させていただきたいんですが、県内自動車専用道路の状況というのを、参考資料でいただきました。この中で、例えば新湘南バイパスの完成予定が平成32年度と書かれております。これは県が事業者ではなくて、国並びに中日本高速道路株式会社が事業者でありますので、県がどの辺まで承知をしているか分かりませんが、こういった事業中路線、既に事業中路線になっている路線の完成予定の年度というのは目標としている年度なんですか。それとも、例えば一つ一つの事業を積み上げていって算出した完成予定年度なのか、ちょっとその辺をお聞きしたいと思うんですが。

<答弁> 県土整備部参事(国道調整担当)
 この参考資料に記載しております完成予定年度につきましては、今年の3月に各高速道路株式会社と独立行政法人である債務返済機構との間で協定を結んだ際、その協定の中に記載されている年度でございます。それぞれの完成予定年度につきましては、当然に事業自体の進ちょく状況もございますが、債務の返済が滞りなくできるのかという観点からも検討しているというふうに聞いておりまして、そういうことをあわせまして、この完成予定年度というものが掲載されているというふうに認識してございます。




<要望>
 分かりました。工事の進ちょくだけですと、例えば平成32年というのは今からまだ14年先の話なので、どういうふうに細かく工事の進行状況というものを積み上げていくのかなと思ったんですが、債務の返済の関係というかお金の問題ですね。それが要因になっているということで理解をいたしました。以上で私の質問を終わります。