環境税導入後から現在までの3年間である程度の効果が現れています。まず、2001年上半期のガソリンの消費が対1999年上半期比で12%減、また、対2000年上半期比で8%減少しました。同期のディーゼルの消費は対1999年上半期比で2%減少、また、同期の燃料全体の販売量は対1999年上半期比で5%減少しました。
2001年上半期の車両同乗者斡旋センターの利用は、対前年比で25%増加しました。1リッター車(100kmあたり1リットル)の開発が促進され、環境負荷の少ない天然ガス車や低燃費車(100kmあたり3−5リットル)、再生可能エネルギーがブームとなっています。2000年の低燃費車の総新車登録台数に占めた割合はそれぞれ0.51%、1.66%でした。同2000年の鉄道利用客は2%増加、また同年の軌道交通機関による輸送量が7.9%増となり、減少傾向に歯止めがかかりました。
このように、課税される燃料の消費が減少するとともに、燃費のよい車や効率的な輸送手段へのシフトが見られました。省資源と環境保全への効果ともう一つの「配当」である年金基金向けの税収確保も予定通り進展しています。
2002年1月に第4段階の環境税制改革が実施され、対前年より29億ユーロ(約3,480億円)上乗せとなり、143億ユーロ(約1.7兆円)の税収が見込まれています。1999年から2003年の間に総額560億ユーロ(約6.7兆円)が確保されることになり、ドイツ連邦大蔵省と環境庁は、年金保険料の引き下げと制度の安定化が経済と環境に著しい効果を与えたと評価しました。例えば、環境税を導入しない場合のシナリオと比較すると、導入により60,000人弱の雇用創出に貢献しました。とりわけ、燃料への課税は2002年で700万トンのCO2排出削減に効果がありました。2006年までの試算によれば、90,000人の雇用創出と900万トンのCO2の排出削減が可能であるといわれています。ベルリン・ドイツ経済研究所は2005年までに2−3%、2,000万トンから2,500万トンのCO2の排出削減が期待でき、環境税による経済への悪影響も少なく、むしろ長期的には250,000人の新規雇用が期待できると予想しました。
年金保険料は5段階で1.5%の引き下げ率になりますが、環境税を導入しなければ逆に1.7%増と企業と一般家庭の負担大となり、その効果を評価しています。税収のもう一つの行き先である再生可能エネルギー開発への助成金ですが、当初2億〜3億マルク(約120−180億円)を想定していましたが、実際には約5億ユーロ(約600億円)が提供されているようです。
1990年から1998年までの期間でエネルギー、工業、サービス部門のCO2の排出絶対量は多いものの、全体に対する割合は段階的に減少してきました。反対に一般家庭が6%、運輸で11%も増加していたことが、ドイツの消費者と生産者の行動を転換する誘導策としての環境税制改革導入の背景でした。製造業への過度な優遇措置が批判されていますが、EU諸国との間に税負担格差が歴然と存在する現状ではやむを得ない措置です。課税対象から外れている石炭についても、東部ドイツへの補助金政策の事情もあり、一律徴収とならない状況です。連邦政府はこの環境税制改革の導入に関する法律を2003年までの時限立法としていますが、与党や環境団体から期間延長の声も強まってきています。 |