アムステルダムを飛び立って約40分。小ぶりな機体に<KLM Cityhopper>と書かれたFokker70が、フランクフルト空港の滑走路めがけて降下態勢に入ると、窓の外側に当たった雨が、いくつもの筋となって後方に吹き飛んでいった。
「昨日までは、いい天気だったんですよ。明日からも当分、こんな空模様みたいですね」。
こう言ったのは、今回、通訳とドライバーを引き受けてくれた吉永俊之さんである。ちなみに、吉永さんは、ドイツのハイデルベルク大学大学院で哲学と比較文学を修め、その後の約四半世紀にわたる人生のほとんどをドイツの地で暮らしている。
空港を出てからずうっと、ワイパーは休むことなく往復運動を続けている。いくら仕事といっても、雨降りよりは晴れのほうが気持ちいいに決まっている。効率も違うだろう。そんな私たちの気分を察してか、シトロエンのミニバンのステアリングを操りながら、吉永さんは最近のドイツの様子などをしきりに話してくれるのだった。
インターコンチネンタル・フランクフルトの部屋に旅の荷を解いたとき、時計の針はすでに夜9時半を回っていた。空港からの利便性を考えて、今夜と帰国前日(22日)の夜はこのホテルにしたが、今回の行程で大きなシティホテルに泊まるのは、その二晩だけだ。
そこには、調査の目的と合わせて、なるべく田舎の小さな宿に泊まりたいという、私たちの意図がある。 |