<海外県政調査の報告>調査の記録

1.水の値段、ドイツと日本。(2)

EWR AG Wasserwerk Bürstadt
Wasserwerkstraße, Bürstadt

厳重に守られる水源林
出来立ての水を飲みながら、質疑応答
 地下水と聞くと、私たちはすぐに地盤沈下を連想しがちだが、ドイツの場合は国土が比較的平坦なことから、日本のような人口集中が起きないため、心配ないのだそうだ。ただし、一度、汚れてしまうと、河川と違って水の流れがゆっくりの地下水は、汚染が長く続いてしまう。だから、水源林(保護林)は厳重な管理下に置かれている。
 井戸の周辺10m以内( ZONE1)は立ち入り禁止、ZONE2と呼ばれる水源涵養区域は自動車の進入禁止が図られているほか、保護林に隣接する区域( ZONE3)でも汚染源となるような施設の建設は制限されている。その管理には、森林監督官(ドイツ人あこがれの職業!)も一役買っているのだという。

 工場のような、浄水場の建物に入る。ろ過プールの並ぶフロアには人影がなく、汲み上げられた水がカーテン状の滝となって落ちる“シャーッ”という音だけが響いている。
 地下水には鉄イオン、マンガンイオンが多く含まれているが、それらを空気中の酸素と結合させて除去する。いわば、水の空気洗浄である。それから、沈殿槽や特別なフィルターなど、全工程3日間という超低速ろ過によって磨かれ、飲料水が生まれる。
 出来たての水を飲ませてもらった。地下水ということから、カルシウム分の多い硬水を想像していたのだが、口当たりは極めてやわらかく、雑味もない。冷やしてもいないのに、どうしてこんなに美味しいのだろう。聞けば、今は送水の際、殺菌のために亜塩素酸ナトリウム+塩素を1リットルあたり0.2mg含ませているが、1980年までは、それも必要なかったとのこと。もちろん、今ここで飲んでいる水には、何の薬品も加えられていない。もともと、地下水は河川などの水より清潔なので、浄水もシンプルで済むのだろう。
 浄水の過程で出来た“汚れを含んだ水”は、ふたたび森に還され、地下水の素となる。鉄やマンガンの「滓」は約2年間、保存されたのち石灰を混合、プレスされて、瓦や防音壁などの建設用資材として活用される。
建物内に並ぶろ過プール
浄水過程で生じる排水は森に戻される
鉄やマンガンの「滓」
 
滓はやがて建設用資材の原料に

ドイツの水道料金は高い
 さて、このようにして生まれた「おいしい水」が、いくらで利用者に売られているのかというと、1m3あたり1.7ユーロ(約230円)、だそうだ。これは、ドイツでは安目の設定らしい。ベルリンなど大都市では、もう少し高くなる。
 ちなみに平成15年度の内閣府調査によれば、仮に上下水道とも1か月20m³使用したとして、ベルリンの上水道料金は東京の約2倍、下水道料金では約3.8倍に達するとのこと。仮に、神奈川県営水道を2人家族で2か月に40m³使用した場合、上水道料金(税込み)は4,034円で、1m³あたりの料金は100.85円となる。また、4人家族で2か月に80m³使用した場合には、同じく11,741円で1m³あたり146.76円だ。県営水道は使用量が増えるほど、1m³あたり単価が上がっていく料金体系になっている。
 また、県営水道の場合、水源林の整備費用の一部が水道料金からの負担金でまかなわれているが、これはWasserwerk Bürstadtでも同じ。1.7ユーロ/m³のなかに、配水管の管理や、水源林を保全するためのコストが含まれている。