後期高齢者医療制度<1>
そんなに極悪非道な制度なのか。

(2008年4月29日)

 後期高齢者医療制度が評判悪い。名前も良くないというので福田総理が「長寿医療制度」なんてどお? と。これも、なんだかなぁ。4月27日の衆院山口2区補選でも、結局これが与党候補の足を引っ張った。
 日本の国民医療費は約33兆円(平成17年)。そのうち65歳以上の患者(人口の約2割)が約17兆円を使い、65歳未満が残りの約16兆円を使う。人口にして約1割の75歳以上はというと約11兆円。実に国民医療費の3分の1を占める。これは仕方のないことだ。年をとれば病気にかかりやすくなるし、慢性疾患も抱え込む。日本の医療保険制度は世界に冠たるものだが、老人医療費の増大や保険料収入の減少などによって、国保も政管健保も健保組合も厳しい収支状況が続いている。
 高齢者が空前の勢いで増え続けるなか、「老い」というものを社会がどのように引き受けていくのか。持続可能で合理的なシステムを、国民負担の増大を避けつつ、今から組み立てることは可能なのか。今回の新たな制度の課題は、まさしくそこにあった。
 「75歳以上を切り分けるなんて、世界にも例がない」「平成の姥捨て山だ」「被扶養者だった人にまで保険料を負担させるのは酷だ」「年金から天引きするのは年寄りいじめ」……こうした批難に対し政府は、わが国の高齢化が世界に類例のないスピードで進んでいること、家族制度が崩壊し「棄老」が問題化するなかで、むしろ社会の役割を再構築しようとする制度であること、同世代間においては負担をなるべく公平にすべきであること、保険料を徴収するためにムダなコストや手間をかけないこと、等々を挙げて反論しているし、どれもわからない理屈ではない。
 しかし、政治は理屈よりも感情によって動かされる。「みのもんた」が吼え、「爆笑問題」が咬みつき、先日テレビを見ていたら「えなりかずき」までが叫んでいた。ここまでメディアが総攻撃すれば、「よくわからないけど、とんでもない制度にちがいない」と国民が思ってしまうのも仕方ない。
 わたしたちの『公明新聞』も含め、政府・与党側は「低所得者層では、むしろ負担が軽くなる」等、新しい制度の利点を理解してもらおうと、メッセージを発し続けている。しかし、説明を求めているのは負担が変わらなかったり軽くなった人ではなく、「冗談じゃない。ウチはどうしてくれるんだ!」という人々である。また、そうした声を受け止め、国につないだり、ていねいに説明させていただいたりするのが、わたしたち議員の仕事であるとも思う。
 一定期間やってみないと、この制度に対する評価は下せないだろう。たとえば、「かかりつけ医」を持つことで、高齢者への診療や投薬の重複は防げるようになるのか。そして、その結果、医療費の増大を抑えることができるのか。制度の目的は是とする私だが、果たして思惑通りに事が進むのかどうか。そちらのほうが問題だと思っている。