「設計者であり、現場監督。」

 編集者は、意外とツブシがききません。写真を撮らせればカメラマンにかなわないし、文章は作家やライターほど達意ではないし、レイアウトの線を引くのはデザイナーというプロがいる。ほかにも、スタイリスト、ヘア&メイク、イラストレーターetc.と、いろいろな専門家の助けを借りなければ誌面を作ることができません。

 それでは、編集者は何のためにいるのか。

 上にあげたそれぞれのプロは、もちろん、高い能力も持っていますが、人一倍、表現欲求の強い人たちです。その能力や欲求を生かしながら、あらかじめ決められたテーマに適った誌面を作るためには、きちんとした設計図が必要です。
 編集者とは設計者であり、また、その設計図どおりに作業を進めさせる現場監督なのです。

 設計図を作る段階でも、プロの協力は不可欠です。また、現場監督として作業を監理するほか、スムーズに仕事が進むように、取材先へのアポイントメント、撮影の段取り、アシ(移動手段)やメシ(スタッフの食事)の手配等にも抜かりのないようにします。

 政治家も然り。自分で道路を作れるわけではないし、建物を建てられるわけでもありません。川をきれいにできる技術も持っていないし、階段の手すりひとつ付けられるわけでもない。
 ことごとく専門家の知恵をお借りしながら政策を練り上げるわけですし、また、それを実行に移すときにも専門家の力を集結させなくてはなりません。

 編集者も政治家も、ともにオーガナイザーとしての能力が求められていると、私は思います。