最先端科学技術の社会実装支援について


<質問要旨>

 本県の科学技術力の向上と新たな産業の創出に向け、最先端技術の社会実装を促進するために、KISTECをどのように支援し活用していくのか、所見を伺う。


<答弁> 黒岩知事

 県立産業技術総合研究所(KISTEC)では、大学等の有望な研究シーズを育成し、成果を企業等に結び付ける研究や、ライフサイエンス分野における技術等の性能を評価する方法の開発など、科学技術の振興に幅広く取り組んでいます。
 その結果、例えば、研究シーズから育成した成果が企業の新事業へ展開されたり、企業が開発した抗菌・抗ウイルス製品等の性能を評価するサービスを開始するなど、多くの実績に繋げています。
 しかし、最先端の科学技術を研究し、成果を社会実装に繋げるためには、常に新たな研究と事業化の促進に取り組むことが重要です。
 そこで、KISTECでは、今後産業界において、生産性の向上などに大きな変革をもたらす生成AI技術を活用した新事業の創出支援に取り組んでいきます。
 また、これまで培った評価法開発の知見を活かし、創薬・再生医療・細胞医療等の分野でも、企業の製品の信頼性を評価する方法の開発に向けて、産学公で連携し、進めていきます。
 県としては、KISTECの取組を中期目標の達成状況により評価し、必要な改善と対策を促すとともに、本県の技術開発力の向上と新たな産業の創出に向けて、連携・協力して取り組んでまいります。

<要望>
 まず、最先端技術の社会実装支援についてでありますけれども、これまでも神奈川発の新技術というのは脈々と社会実装されていると思っています。
 一例を挙げると、光触媒、あるいはマイクロ流体工学というものは、毎年、数百億円もの経済効果を生み出し続けているというふうに伺っております。
 光触媒はコロナ禍で抗菌性能が注目されて、電車の吊り革だとか、抗菌スプレーとか、多くの製品が販売、実装されたということは記憶に新しいところであります。
 これは先ほど、知事の御答弁にもありました。
 こうした抗菌作用が実際にあるのか、有効性はあるのか、安全に使用できるのか、当然、社会実装に不可欠な課題については、県の支援によってコロナウイルスまでも対応可能な検査施設が殿町に設置されたということで、大変なバックアップがあったんだと思っております。
 また、マイクロ流体工学、これも広大な化学プラントで行っている化学合成を、極端に言えば机の上で行うことができる技術ということで、いよいよ本格的に事業拡大ステージに移行しつつあるというふうに伺ってます。
 もちろん県内にはまだまだ価値のある新技術がたくさん存在しておりますので、とにかく社会実装に至るまでのサポート、これを充実させることが大変重要であるというふうに質問の中で申し上げてきた次第であります。
 今、KISTECでは理事長が「運営から経営に」という転換を目指しているというふうにも伺いました。県の科学技術振興と軌を一にするものと考えますので、この先端科学技術の産業の下支えを確実に行うために、KISTECを一層支援、活用していただければというふうに思っています。
 また、質問の中で申し上げなかったのですが、脱炭素関連ですね、これの研究開発の成果の社会実装というものも、これから本格化してくるのではないかというふうに思っています。
 水素製造の基礎技術の研究を、今、東京工業大学とKISTECで推進をしているというふうに伺ったんですね。今、その成果をもとに企業により安価かつ安定的に水素を供給できるシステムを開発していると。現在、十数社の企業コンソーシアムが応用研究の実用化に取り組んでいるということでありますけれども、そうなると大学とかコンソーシアム企業は共同で安全に実証実験を展開するためのオーガナイズが必要になってくると。今、水素ガス保安法というのでしょうか、法律があって、大学における研究では水素の製造装置というのは1台しか稼働できないと、これを何とか十数台並べて稼働する、そうした事業が期待されるわけですけれども、当然、安全性の確保などの面で広いスペースが必要になってくると、これらの条件に対応できる実証実験の場ですね、こういうことについても、できれば県としてバックアップをしていただければというふうに思っています。
 もちろんこうした脱炭素社会に向けての社会実装のサポートというのは、県だけではなかなか実施できないことだと思いますが、川崎市が脱炭素を大きな施策として打ち出していますし、神奈川県は全域が国家戦略特区でありますので、こうした特区を活用することによって規制を突破すると。川崎や神奈川のお互いの強みを活かして、例えば、JFEの跡地などもありますので、そういうところで企業コンソーシアム企画したらどうかなと、そんなことも提案させていただければなと思っています。