■平成21年2月定例会 平成21年度関係諸議案(平成21年3月24日)


 <意見と要望>
 公明党県議団を代表して、本定例会に提案された平成21年度関係諸議案につきまして、意見と要望を交え、所管常任委員会における審査結果に賛成の立場で討論を行います。

 まず、はじめに、「神奈川県地球温暖化対策推進条例」についてであります。
 今回の県条例案は、このまま議決されますと、本体の施行は7月1日であります。施行までの間に県当局は条例の骨格ともいうべき「指針」を定めるとともに、大規模事業者はもとより、中小企業や零細企業、さらには県民の二酸化炭素排出量削減の基本となる「規則」も定めることとなります。この間、県当局では、パブリックコメントも計画しており、大変にタイトな日程となっております。このように、県民や28万1千にも上る大規模事業所以外の事業所も含めた、きめ細かな削減の取組みを推進していくには、施行までの時間が不十分と考えます。条例案に明記された多くの「努力規定」について、県民総ぐるみで取り組み、削減実績につなげていくためには、準備時間の確保がどうしても必要であります。
 また、「事業活動温暖化対策計画書制度」が2010年1月1日に施行される予定になっておりますが、一方で、改正省エネ法に基づき、フランチャイズとして対象となる事業がまとまるのは2010年9月頃と想定されており、県に対する削減計画の受付を2010年1月に開始する必然性はないものと受け止めております。県だけが独自に施行するのではなく、国の省エネ法の改正施行、そして、横浜市の生活環境保全条例の改正施行と整合性をとることにより、多くの事業所や県民にとって、より分かりやすい条例となるものと考えます。

 ただいま指摘させていただいた様々な点について、再度ご検討をいただくためにも、本条例案は継続審査とすべきであります。

 次に、「神奈川県在宅重度障害者等手当支給条例の一部を改正する条例」案についてであります。
 本県では、障害福祉分野の施策制度がまだ十分に整備されていなかった昭和44年から、在宅重度障害者に対する手当支給を開始し、障害者ご本人とその家族への支援に取り組んでまいりました。
 その後、障害福祉制度が措置制度から支援費制度、そして現在は障害者の地域生活移行を目指す障害者自立支援法へと変容する中で、一律の現金給付を見直して重度重複障害をお持ちの方に重点化するという県の考え方は一定理解いたします。
 しかしながら、ここで重要なのは、見直した財源をどのように使うのかということであります。今回、ご報告いただいた「新たな障害者地域生活支援策の構築」では、「かながわの障害福祉グランドデザイン」に掲げられた「すまい」「生きがい」「ささえあい」の理念に沿った形で、居住支援や日中活動支援、バリアフリーの推進などに取り組んでいくとのご説明がありました。しかしながら、「すまい」「生きがい」「ささえあい」の理念に沿って、財源を有効に活用し、具体的にどのような施策を展開していくのか、もう少し議論を深める必要があると考えており、本議案につきましても継続審査とすべきであります。

 次に、「平成21年度神奈川県一般会計予算」案について、いくつかの意見と要望を申し上げます。
 まずは、新型インフルエンザ対策についてであります。
 この件につきましては、これまでの委員会での議論等を踏まえ、昨年12月には、県の第3次行動計画が取り纏められたところでありますが、市町村への支援という観点で、本県の行動計画には具体性が欠けております。
 今後は、先駆的に取り組んでいる自治体などの情報を集め、市町村に紹介するなど、もっと、県として、市町村の計画・マニュアル策定に対し、一段と支援し、連携していくべきであるということを、提言として強く申し上げておきます。
 あわせて、新型インフルエンザに対する県民向けのガイドライン作成、広報周知及びパンデミック時のパニック状態への対処のため、警察、消防等、他機関との連携、協力に努められるよう要望いたします。

 次に、雇用・経済対策についてであります。
 まず、かながわ求職者総合支援センターにつきましては、現在、離職を余儀なくされている方々が増加していることを、我々としても大変心配しており、厳しい雇用情勢の中で、かながわ求職者総合支援センターの果たす役割は大変大きいものがあると考えております。早期の支援センター開所とともに、関係機関の連携強化を図りながらより多くの方々に効果的な支援を行っていただくことを要望いたします。あわせて、ふるさと基金事業及び緊急雇用基金事業の充実を図っていただくことを強く要望いたします。

 続きまして障害者の雇用促進等に関する法律の改正についてであります。昨年12月19日に障害者の雇用の促進等に関する法律が改正され、同12月26日に公布したことを受けまして、県内の中小企業におきましてもこの改正法令の影響が想定されるところであります。特例子会社の在り方や、納付金制度の活用などにより、雇用の創出を図るという、これらの法改正の趣旨を事業者にしっかり理解していただくとともに、厳しい経営環境の下で障害者雇用の取組みを進める中小企業に対する支援策の充実に取り組んでいただくよう要望いたします。
 とりわけ特例子会社に関する予算減額につきましては、予算委員会の質疑等も聞いていまして、いささか不安を感じたところであります。このような法改正に、しっかりと整合する施策の展開を要望しておきたいと思います。
 また、新年度から実施されるインベスト神奈川、ポストインベストの検討に当たりましては、企業との連携やサポート体制こそが重要であり、この視点から、施策のありかたについて十分に検討していただくとともに、インベスト企業につきましても障害者の職場定着を支援するために、是非、CSR(企業の社会的責任)の視点から、取組の一層の充実を促していただくよう要望いたします。

 次に制度融資の保証状況についてであります。まさに地域経済の担い手である中小企業を取り巻く経済環境は、日に日に厳しさを増しているといっても過言ではありません。せっかく作った緊急保証制度が、100%機能し、効果が出るようにすることが大切であります。しっかりと制度の活用を促進していただくよう、またそのために関係機関と密接に連携していただくよう、強く要望しておきます。
 次に、「神奈川県地方独立行政法人評価委員会条例」、「地方独立行政法人神奈川県立病院機構定款」など、県立病院の独立行政法人化についてであります。
 県民には、独立行政法人化により、コスト重視、経営重視となり、医療の質が落ちてしまうのではないか、公立病院であるからこそ行うことができた不採算医療は切り捨てられてしまうのではないかという根強い懸念があります。公立病院の目的でもある地域医療や、公立病院であるからこそ担いつづけることができた採算性のよくない医療など、県民にとって必要な医療が、独立行政法人に伴う合理化の名のもと、切り捨てられることがないように強く要望するとともに、独立行政法人化について、県民が不安を抱くことがないよう、県民への更なる広報に努められることを要望いたします。

 最後に、「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」についてであります。
 この条例案について、県民を受動喫煙の健康被害から守るという理念については、もとより反対するものではありませんが、神奈川県内に店があるというだけで、生活の基盤が揺らいでしまう事業者等が出てしまうのではないかという懸念をわが会派としては抱いておりました。そこで今回、県民を受動喫煙の被害から守るという条例の理念を守りつつ、事業者の方々の生活権とのバランスをどのように取るべきかを勘案し、たばこ販売店や、床面積700平方メートル以下のホテル・旅館などについては、営業上の影響の大きさなどから、規制対象から除外する修正案を提出させていただきました。また、同様の理由から、規制対象外と位置付けられていた小規模飲食店の床面積要件から調理場を除外する修正も行ったところであります。
 また、罰則規定につきましても、一体誰が、どのようにして喫煙禁止区域での喫煙を取り締まるのか、罰則規定が濫用されるという新たな問題が起きてしまうのではないかなど、様々な懸念があるため、具体的な運用を、時間をかけてよく検討していただきたいとの考えから、飲食店などへの罰則の適用日を一年遅らせる修正案を提出いたしました。県当局におかれましては、条例の施行に向けて、具体的な運用をよく検討し、条例施行により新たな問題が生じることのないよう、より細やかな計画と実行を要望するものであります。

 討論の結びに当たりまして、一言、申し添えたく存じます。
 「自縄自縛」という言葉があります。言うまでもなく、これは自らの言行によって、自らを縛り、身動きが取れなくなるさまを指す言葉です。さきの予算委員会において、わが会派の鈴木委員が、「知事は2年前の選挙に際し、11本のいわゆる先進的条例の制定をマニフェストに掲げたが、この2年間で経済情勢は一変している。政策の優先順位も当然、変化している中で、条例制定にこだわるべきではないのではないか」という質問に対し、知事は「マニフェストで県民に約束した以上、制定を完遂する」といった旨の答弁をされました。
 経済のめまぐるしい変化に巻き込まれ、もがいている人々への対策や弱者救済策こそ急がれる今、多額の血税とマンパワーを注ぎ込んでマニフェストの実現に走るべきなのでしょうか。知事におかれては、ご自身を縛っている縄を、一度、お解きになることも必要なのではないか、と私たちは思っています。
 ちなみに、私は、社会生活に課せられるルールは必要最小限であることが望ましいと考えています。私たちは、世の中の変化に直面すると、半ば自動的に「新しいルール作りが必要」という言葉を口にしますが、本当に必要かどうかを顧みることも大切です。
 たとえば、エコロジーという、どこからも文句をつけられそうにない思想でさえ、法律化あるいは条例化されれば、また、新たな管理社会を生じさせるということを肝に銘じなければなりません。
 しかし、行政であれ議員であれ、政治にかかわる人間というのは、何かと決まりを作りたがる困った習性を持っています。であるのなら、せめて、屋上屋を架すような規則だけは作るまいと、自らを戒めていく必要があると思うのであります。

 以上、意見と要望を申し上げ、公明党県議団といたしましては、本定例会に提案されました平成21年度関係諸議案に対し、所管常任委員会における審査結果に賛成をいたします。