平成20年12月定例会にて意見及び要望を述べました。(12月18日)
公明党県議団を代表して、本定例会に提案された諸議案につきまして、意見と要望を交え、所管常任委員会における審査結果に賛成の立場で討論を行ないます。
■神奈川県自治基本条例について
この条例は、県民の意思が市町村を通して表明されうることを踏まえ、県と市町村の関係、すなわち「市町村の県政参加」という視点を加えていることが特徴であります。具体的には、市町村との間に協議体制を作って、市町村の意見をしっかり聞いていくということであり、条例案を作るにあたっても、市町村と協議を重ねてきたということでありますが、私どもの会派において首長の方々からお話を伺う限りでは、一応の説明は受けたものの、意見は求められていないという首長さんが多数いらっしゃいます。「今後は、この条例に基づいて市町村の意見をしっかり聞いていくのだ」と言われても、条例案を作る段階で市町村の意見を十分に聞いていないというのでは、この先が思いやられます。このまま条例を制定しても、「仏つくって魂入れず」になってしまうのではないかと、大いに懸念するところであります。
自治基本条例の運用にあたっては、県民に対する県政参加への呼びかけとともに、県内市町村の自治に十分配慮しながら、市町村長の理解を求め、協力をお願いすることが何より大切であります。市町村との協議体制、県民投票制度などについて検討を深めていただき、それをもとに慎重に審議させていただきたいと思います。
■神奈川県犯罪被害者等支援条例について
犯罪被害者の力になりたい、という条例制定の趣旨自体は非常に尊いものであり、全く否定するものではありません。しかしながら、既に国において犯罪被害者等基本法が制定され、それに基づく基本計画もつくられている状況において、さらにこのような理念条例を定めようという以上は、この条例がなければ県として思うような犯罪被害者等の救済ができない、そのための実効性ある計画も策定できないという、緊張感のある説得力が必要と考えますが、現段階では不十分と判断せざるを得ませんでした。
ところで、平成18年2月定例会予算委員会において、わが会派の此村議員が「がん対策条例」の必要性について質問した際、知事は「条例をつくったから、そっちの方が担保できるとか、そういう議論ではない」「何も条例でなくても、きちっと対応します」と述べられています。また、文化芸術振興条例をめぐる議論で、知事は「中心の人物がやれば(これはキーマンさえいれば、ということでしょうか)、条例がなくても(規則等に基づいて)仕事はできる」とおっしゃっていました。このたびの犯罪被害者等支援条例は、どうなのでしょうか。所管常任委員会での質疑を聞く限りでは、条例がなければ本県として犯罪被害者等への支援ができないといったものではなく、施策として行なっていくことで十分に対応可能と思えるものでした。いうまでもなく、真の目的は条例の制定そのものにあるのではありません。具体的な犯罪被害者等支援の実施こそ目指すところであり、実効性のある支援計画を急ぐことに都道府県の責務があると考えております。また、条例をつくるにしても、計画の素案もなしに条例案だけ出されても、議会として検討のしようがありません。具体の事業を定める実施計画等には議会の承認が不要という通例は承知の上で申し上げますが、条例の審査に際しては、可能な限り事業の計画等が示されるべきであります。本条例につきましては計画の素案も含め、もう少し具体的な提案をしていただき、それをもとに慎重に審議させていただきたいと思います。
■神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例の素案について
この受動喫煙防止条例について、見直しなどを求める意見書の提出が、県内の市町村で相次いでいると報道されております。秦野市議会は「対象施設に全面禁煙または完全分煙の選択を強制するもの」「小規模飲食店ではスペースの問題で完全分煙は難しく、全面禁煙とせざるを得ない施設も多く、事業存続にかかわる。たばこ販売業者はより一層苦しい生活を強いられることとなり、県や市町村の税収不足にもかかわる」と指摘しています。
知事は、先日の定例記者会見で、「一般の県民ベースで見ると、7、8割は賛成。そういう声を出さないサイレントマジョリティの皆さんの意識も総合的に判断したい」と述べられているようですが、そもそも「公共的施設」という言葉が県民に認知されていないのであります。もっと、わかりやすい表現で、条例によって、どのような規制を行なおうとしているのか、広く県民に認知をしていただいた上でないと、「7、8割は賛成」などと言い切れないのではないでしょうか。
また、経済に対する影響も懸念されるところであります。知事はよく香港の例を挙げて「売り上げ減少はない」と言っておられますが、香港の新聞によれば「やはり客は3割方、減っている。ただ、香港は地理的に外に出にくいから、このような政策が実現できた」ということなのだそうです。BBCのニュースは、イギリスのパブの75%で売り上げが減少し、閉鎖する店が続出している原因のひとつは禁煙法にあると報じています。本県でこの条例を施行したときに、同様の現象が起こらないという保証はありません。
喫煙がいくつかの病気の一因となる可能性については否定しませんし、他人のたばこの煙を強く忌避する方の気持ちも理解いたしますが、条例化による規制の影響についての検証がまだまだ足りていないと感じております。特に、大きな負担や減収が懸念される事業者への支援という点で配慮が不十分であります。条例化を進めるには、一方で生業(なりわい)を断たれる、生活の糧を失う県民も出るということに、是非とも目を向ける必要があります。今後の検討にあたっては、そうした配慮を忘れぬよう強く要望いたします。
■中小企業・小規模事業者への貸し渋り対策について
この問題については、わが会派の代表質問でも取り上げましたが、中小・小規模事業者の状況は大変厳しいものになっております。
いわゆる「貸し渋り」や「貸し剥がし」にあって、今後の資金繰りに多くの事業者が不安を感じているのが実情であり、今まさに中小企業や小規模事業者は生きるか死ぬかの戦いの真っ只中にいます。こうした現状に鑑み、県においては的確な状況把握を行ない、より一層の金融支援に取り組まれるよう要望いたします。
■厳しい財政環境下における自治体の経営力について
国内の経済状況が日に日に悪化する中、本県の財政状況も景気に呼応し、一段と悪くなっていくものと思われます。そうした状況にあっては、民間企業の経営感覚をもって財政運営をしていくことも重要でありますが、890万県民の福祉を後退させることがあってはなりません。経営感覚を研ぎ澄ませ、責任ある財政運営を行なうよう強く要望いたします。
以上、意見と要望を申し上げ、公明党県議団といたしましては、本定例会に提案された諸議案について、所管常任委員会における審査結果に賛成をいたします。