■ 文教常任委員会 高校の奨学金について(2月28日)
<質疑一覧>
 高校の奨学金について


<質疑>
 次は、高校の奨学金について、お尋ねをしたいと思います。
 平成19年度から奨学金の申込要件として、2年生、3年生を対象に前年度の評定の平均値が3.0以上でなければ申し込めないということになるということですが、新たに成績に関する基準を設ける理由、また、そこに至った背景を教えてください。

<答弁> 高校教育課長
 高等学校の奨学金について、平成19年度から従来は収入の要件のみを応募の要件としてまいりましたけれども、それに加えまして、来年の2、3年生ということでございますけれども、前年度の成績が5段階の評定で3.0以上というものを一つの応募要件として加えさせていただこうと考えているところでございます。
 その背景でございますけれども、1点は、ここ数年奨学金の応募者が年次ごとに増加をしてくるという中で、私どもも毎年、相当の努力をしまして予算の対応を図ってまいりましたけれども、平成18年度も私どもが予定をしました人員に対して相当数上回るというような応募がありまして、大幅な予算流用もさせていただきながらやらせていただいておる、なおかつ、一定数不採用者も出さざるを得ないという厳しい状況になってきておるということが1点ございます。
 もう1点は、奨学金を借りて御卒業された方は、一定の条件になりましたら返還をいただくと、免除の方以外は返還をいただくということですが、その未納額がここ数年増加をしてまいりまして、平成17年度には収入率が47.8%ということで50%も割り込むという状況になって、返していただけないということで、私どもは返していただくお金を奨学金の原資に充てていくという考え方で進めておりますので、その原資の確保自体が非常に危機的状況になってきている。
 このような局面になってまいりました中で、奨学金を今後安定的に運営していくにはどうしたら良いのか、多々検討しなければならない観点がございますが、平成19年度につきましてはその中で一たん奨学金の趣旨、原点に立ち戻るというようなことも考えたところでございます。
 神奈川県の奨学金は貸付条例で定めているものでございまして、その中ではどのように規定されているのかと申しますと、学業の成績が優れ、心身が健全であって、学資の援助を必要とする者と規定されております。こうした原点に一たん立ち戻ってみると、厳しい県の予算の中からそうしたものを充てているわけでございますので、日々努力をされ、勉学その他に意欲を持って頑張っていきたいという生徒に奨学金を支給させていただき、学業を全うしていただく。そして、やがて仕事をするようになればきちんとした形で御返還をいただく、そうしたことをもう少し徹底して生徒にも伝えていかなければいけないという趣旨で今回条例の本旨に立ち戻りまして、成績要件を改めて定めた次第でございます。




<質疑>
 これはあくまでも仮定の話ですが、仮に同じ学力を持っていたとして、Aという高校では3.5の評定が付くけれども、Bという高校では2.8しか付かないということが現実にあるのでしょうか。

<答弁> 高校教育課長
 仮定上のお話ですのでなかなか難しいところもあろうかと思いますけれども、3.0としましたのは、高等学校の成績は5段階、5から1までということでございまして、3という成績は目標に対しましておおむね満足できると判断されるものという規定になっております。ちなみに4というのは十分満足できると判断されます。2につきましては努力を要すると判断されています。このような位置付けでございますので、それが具体的にどういうことかということにつきましては、県立高校も様々な実情がございますので、高校ごとにその目標の設定をさせていただいているところでございます。
 そうした中で、御質問のようなところにつきましては仮定の話ですので、非常にお答えしにくい部分もありますけれども、客観的に学力があるとして、学校の中で評定が上下するということは純粋にはあり得ると考えております。




<質疑>
 これは、はっきり言って、スケールがあってそれに当てはめるということにならないと難しいと思いますけれども、その上で今、奨学金を受けている生徒に大変影響が出るものだと思うのです。今回の予算でこういうことになって、平成19年度から新しい制度が発足するわけですよね。そのときに、本来の奨学金の性格、条例の本旨といったことも含め、また、3.0以下だと切られるよということを、現在の高校1年生、高校に入ってくる生徒、保護者たち、学校に対していつごろからどのように御説明されていくのか教えてください。

<答弁> 高校教育課長
 ただいまの点につきまして、私どもが一番悩んだようなところでございますけれども、これは平成19年度当初予算にかかることでもございますので、その部分の進行に合わせながら、できるだけ早くお知らせしたいというジレンマの中でやってまいりましたけれども、昨年の11月に各学校を通しまして、こうした成績に関する要件を平成19年度から設ける予定だというようなことをお知らせしております。そして、お知らせの文書を配布しまして、各学校において、現在お借りしている生徒全員にそれをお配りいただきながら、御理解をお願いしたというところです。
 また、県立高校の校長会の中でも基本的な方向性について、お話をさせていただきました。また、保護者の方の御関心も当然ございますので、高等学校のPTAの連合会といった場でもこの時期に御説明をさせていただいております。私学関係についても同様の対応をさせていただいておるところです。
 こうした形で進めてまいりましたけれども、具体の3.0というものにつきましては、予算が確定をいたします中で公表するという中で、今年の2月の学校長会議の中で御説明をし、お諮りいただいたということでございます。




<質疑>
 3.0という成績要件は、あくまでも勉強の面において普通に頑張っているというレベルから出てきたものなのか、それとも財政上の数字の上からどこで切るのかといったときに、3.0だということになったのか、そのあたりについて御説明願います。

<答弁> 高校教育課長
 私の方としては、3.0というものが目標に達したものという整理、理解がございますので、そうしたものを基準にお出しいただきました。そして、こうしたものについての全体の調査があるわけではないのですけれども、一定のリサーチもさせていただきながら3.0クリアというのはそれほど高い目標水準ではないと。つまり高校生が日常の勉強をきちんとやっていただければ、可能だという考えを持ちながら進めてきたところでございます。




<質疑>
 各学校の校長先生ですとか、PTAの皆さんへの周知が図られてきたとお聞きしましたけれども、今のところ疑問の声だとか抗議の声というものは来ていませんか。

<答弁> 高校教育課長
 これは様々な実態があるわけでございますので、もう少し時間をかけて進めていただけないかとか、そうしたものについての御意見というものは幾つか頂だいしているところでございます。




<質疑>
 それは学校側ですか、それとも保護者の側ですか。

<答弁> 高校教育課長
 これは学校関係におきましても保護者の関係におきましても、そうした意見は承知しているところでございます。




<質疑>
 平成19年度の当初予算ということでやむを得ないのかもしれませんけれども、少し急かなという印象を私は持っております。今、1年生において3.0を下回る成績の生徒で、今回奨学金を打ち切られそうな状況にある生徒というのはどれぐらい推定されますか。また、今、奨学金を受けている高校生のどれぐらいのパーセンテージになりますか。

<答弁> 高校教育課長
 それにつきましては、平成18年度の応募者のデータに置き換えまして、一定の推計をさせていただきましたけれども、今年度の応募者、2、3年生という部分で見させていただきましたが、応募者が2,506人ということでございました。その中で要件が充足できない者は352人ということで、約14%ということでございます。
 11月の段階でそうしたことを是が非ともお知らせしておきたいと思いましたのは、現在二学期制の高校も相当増えておりまして、前期2回の試験、後期2回の試験ということで、11月の段階ですと、12月と3月のあと2回チャンスがあるというようなことも思いまして、是非頑張ってくれというメッセージも含めてその段階でお示しをさせていただいた状況でございます。




<質疑>
 今回成績要件を導入せざるを得ない状況になったのは、将来戻ってくるべき返還金が返ってこないということが大きな原因であると思いますので、返還率を上げるためにさらに力を入れる必要があるのではないかと思います。
 現在、督促は職員の皆さんのマンパワーに頼っておるということでありますけれども、返還の督促業務に関しての民間委託ということも考えていただきたいのですけれども、これに関してまだ可能性というのはありますか。

<答弁> 高校教育課長
 12月に御質問いただきまして、それについても併せて検討させていただきたいと御答弁させていただいたと思います。例えば電話督促をやるにしましても、私どもの課員がかなり夜遅い時間に電話をするということなども相当回数を行ってきている状況もありまして、費用対効果というのは大きいのだと思いますけれども、そうした面で一定の費用で相当の効果があるということであれば、民間に委託というのは非常に有効な方策だと思っております。しかし、その効果が上がらなければ、委託することは難しいのではないかということですが、私どももその辺の検証がまだ十分にできておりません。
 同様の課題に直面している国を含めてでございますけれども、国の方の日本学生支援機構は大学生の奨学金をやっておりますけれども、そこでは督促の部分で民間委託をされているということを聞いております。これは相当規模が大きいですので、いわゆるスケールメリットが生かされていると思います。地方の都道府県レベルですと、私どもが承知しているところだけでは1県1府のみがそうしたものをされていると承知しております。現在、我々はその辺の状況を詳しく聞いております。
 いずれにせよ、費用的な面で一定の費用が必要になりますが、それに対する効果ということを十分に吟味しませんと、私どもとしましても苦しいところでございます。
 また、再度お話にございました納入に関して、現在は窓口に納入通知書を持っていっていただいて払い込んでいただくという仕組みでございますけれども、これについては平成19年度ではすぐに実現いたしませんでしたけれども、引き続き検討して口座の自動振替という形で、より返していただきやすい形が実現できるように頑張ってまいりたいと思っております。




<質疑>
 今、県の奨学金制度も大変難しい状況にあるというのは分かりますし、それによって今回制度の見直しが行われるわけでありますけれども、これは今回見直して当分様子を見ていくということなのか、それとも、さらに見直しを行っていく予定があるのか。

<答弁> 高校教育課長
 課題が様々にございますので、議会も含め、各方面から奨学金の在り方はどうなのかという御意見をいただいております。そうした中で、今回の見直しの部分だけで終わるというようなことは考えておりません。制度そのものの本格的な見直しというようなことも、我々は近い将来やっていきたいと思っております。
 現在の制度自体が平成17年度に変えたもので、2年間の運用という部分がございまして、余り短いサイクルでという思いはございますけれども、奨学金の現状はもう待ったなしのような状況もございますので、平成19年度以降、しっかりした形で制度を見直していくと。例えば、応募時の収入要件は現在、おおむね800万円以下とさせていただいている。貸付単価につきましても、全国的にもかなり高い水準で融資させていただいている。そうしたことも含めまして、適正な在り方、そして真に必要とされている方にお貸しすることができるような方策を今後検討させていただきたいと考えております。




<要望>
 成績要件の導入ということについては、原資にも限りがあるということでやむを得ないことだと思いますが、学校現場がこれによって混乱することがないように周知徹底をさらに図っていただき、新しいシステムが円滑に導入できるように努力して、運用していただきたい。
 また、返還実績を上げていけばそこから返還率もさらに上がっていくだろうと、そして奨学金の充実にもつながっていくだろうと思います。本県の制度は、全国的に見ても大変充実した制度の部類に入ると思うので、そういう制度をこれからもうまく回していけるように、ただいま申し上げた督促業務の民間委託についても是非これからも前向きに検討していただきたい。