■交通・地域活性化特別委員会 羽田空港の国際化と観光振興について(平成18年9月28日)
<質疑一覧>


<質疑>
 本日いただいた資料あるいは御説明をいただいた内容につきましては、これまで各委員の皆様から出尽くした感もありますけれども、神奈川口における羽田空港への連絡道路の整備に向けた取組ということにつきましては、6月定例会で、私どもの会派の此村議員からも代表質問で取り上げさせていただいたところでございますので、その内容も踏まえて、羽田空港の国際化に対する動きに対して幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 代表質問に対しての御答弁の中でも、なかなか2009年の羽田空港の再拡張・国際化までに連絡道路を開通させるのは厳しい状況であると伺っていますし、また、今日は神奈川口基盤整備調整室長からも同様のお話をいただいています。
 先ほども話が出てきましたけれども、11月25日の神奈川新聞の記事の中に、漁業補償交渉がなかなか難航して2009年の国際化が難しくなったとありました。国土交通省は何とか工期を短縮して、10月5日の供用開始を目指したいという記事でありましたけれども、それでもなかなか難しいのかなというのが、今日の質疑を聞いた上での印象でございます。
 それで、この連絡道路の検討体制も、先ほど話が出ておりました羽田空港跡地に関連して、幹線道路網整備検討会議から基盤施設検討会に変わりました。連絡道路のルートについては、今の段階では概略ルートだと思いますけれども、跡地に関連してどういう課題があるのかをお伺いいたします。

<答弁> 都市計画課神奈川口基盤整備調整室長
 空港跡地に関する課題ということでございますけれども、羽田空港の空港跡地でございますけれども、戦後、米軍の接収によって約3,000人の住民の方々が48時間以内に強制的に退去させられたという歴史的な背景がございまして、いまだに地元、大田区の方々は跡地については強い関心をお持ちであると聞いております。
 ただ、空港跡地の土地利用につきましては、200ヘクタールから53ヘクタールへとだんだん減ってきているわけですけれども、これまで大田区や東京側の経済団体が独自の提案を行ってはいるものの、土地の所有者である国とか関係者である東京都などとの調整というのは整っていなかったということがございます。ようやくこの12月4日に、5年ぶりに羽田空港移転問題協議会、通称、三者協というものが開催されまして、空港跡地の範囲と面積が示され、それでやっと土地利用に関して具体的な検討に入っていける状況になったということでございます。
 いずれにいたしましても、概略のルートであれ、構造であれ、空港跡地の中に道路を通さなければならないということで、空港用地内で造成される土地の高さとか空港内の道路、あるいは建築物等の位置との調整、また、空港跡地の基盤施設との整合なども図りながら進めていかなければならない。このようなところが大きな課題になっております。




<質疑>
 この連絡道路の概略ルートや構造を検討するに当たっては、土地利用とか事業性とか、環境の問題もありますし、また交通といった検討項目に基づいて検討を進めなければならないということであります。
 空港跡地の土地利用については、今、御説明いただきました。また、先ほども出ていた多摩川の河川環境に関する課題というのもあると思いますが、そのほかにはどういった課題が具体的にあるのでしょうか。

<答弁> 都市計画課神奈川口基盤整備調整室長
 連絡道路の課題でございますけれども、構造的にトンネルを求める動きもございますが、その事業性ということにつきましては、一般的にトンネルというのは橋りょうに比べて建設費や維持費が高いという課題がありまして、費用対効果を検討する上で、便益と費用の比率が1以上にならないと社会的に整備する意味がないということもございますので、この辺をしっかりと計算していく必要があると考えています。
 また、各ルートでございますが、特に上流側と中央ルートで橋りょう構造とした場合に、滑走路のちょうど延長線上にございまして、航空法によって厳しい高さ制限がございます。したがって、橋りょう形式の場合、施工方法に関して非常に技術的な工夫が要求されるということでございます。
 次に、交通に関してでございますけれども、中央ルートを延伸していきますと、国内線と国際線の両ターミナルを結ぶ空港内の空港連絡道路に直結する形になります。そうしますと、外からの大きな交通の流れが空港内の道路に行くということになります。そこで渋滞を引き起こす、空港機能に影響を及ぼすのではないかという懸念がございます。
 また、いずれのルートの場合も、トンネルの場合ですと、閉鎖された空間が長く続く形になりますので、自転車や歩行者の利用に安全上非常に課題が大きい。
 このような課題がございますが、今後、これらの課題を検討して、それを比較衡量して、関係機関の間で合意案を見つけていきたいと考えております。




<質疑>
 羽田空港については、再拡張ということもありますし、また、国際線の旅客ターミナルも、今、PFI事業で進んでいるということでもありますが、神奈川県としては、国際化の一層の推進に対して国にいろいろな要望を行っているということです。今日の資料にもありましたけれども、例えば3,000キロメートル圏まで就航してほしいとか、深夜とか早朝に遠くからの便を受け入れてほしいとか、貨物専用便は再拡張を待たずに就航をしてほしいとか、いろいろなことがあると思います。そういった、県が国に対して行っている要望について、国の受け止め方というのはどんな感じですか。また、その実現の見通しというか、要望が受け入れられる見通しというのはどれぐらいあると考えていますか。

<答弁> 京浜臨海部活性推進課長
 国においては、成田空港は国際線の基幹空港、羽田空港は国内線の基幹空港という考え方に基づいて就航範囲を決めるという基本的な部分は一貫して変わっておりません。ただ、神奈川口構想に関する協議会の場で、国土交通大臣自らが知事、市長ときちんと意見を交わす、要望を受け止めるということをやっていただいております。また、130ほどの経済団体で構成しております羽田空港国際化・神奈川活性化期成同盟会の会長なども、国土交通大臣と話をしております。きちんと時間をとってお話を聞いていただいて、大臣からは御説明等もいただいております。真しに受け止めていただいていると思います。
 また、国土交通大臣の9月の記者会見では、記者から、就航範囲等についていろいろな要望があるけれども大臣はどう考えるか、という内容の質問もありました。その際の大臣の発言でございますけれども、「就航先について、来年辺りから本格的にその議論が始まってくるものと思っています。成田の役割、羽田の役割というものもきちんと踏まえた上で、今後、経済界の方々も含めまして、そうしたお声も聞きながら検討していくことになると思います。」という発言がございました。これは、国においても、県や経済界等の要望を真しに受け止め、その実現に向けて検討されるものと考えてございます。




<質疑>
 我々も、できることは一生懸命取り組んでいかなければいけないと、改めて思います。
 先ほど、いそもと委員からの要望の中にもありましたけれども、羽田空港の国際化に関して、調査研究の一環ということだと思いますが、今年の夏に羽田空港の国際線利用者にアンケートをされております。それで、その数がちょっと少ないのかな、という話がありましたけれども、このアンケート結果というのはどんなもので、また県としてはどういうふうに受け止めておりますでしょうか。

<答弁> 京浜臨海部活性推進課長
 このアンケートは、主に観光客が利用する国際チャーター便の実際のニーズ調査を行ったものであります。これは、実際に夜、羽田に行きまして、7便ほどの出発便の方々に直接意見をお聞きしたものでございまして、実は273人を集めるのは大変でございました。
 資料6ページにございますが、国際チャーター便を利用する理由を見ますと、時間の有効活用、空港へのアクセスの利便性が大きなポイントになっています。それから、羽田空港からの就航希望先はハワイが圧倒的に多いです。それからアジア、ヨーロッパ、アメリカ本土、オーストラリアと広範囲にまたがっております。観光へのニーズは、今後ますます増加していくと思っております。羽田空港は24時間空港でございますし、深夜、早朝の距離制限等はございませんので、観光地への国際便の積極的な導入といったものを働き掛けていくに当たりまして、このアンケートを利用してまいりたいと考えてございます。




<質疑>
 羽田から海外に出発しようという方々にアンケートをとって、大体予想される答えが返ってきていると思うのですけれども、これが国際化された後は、今度は外国からお客様がたくさん来るだろうと、また来てほしいと思うわけです。
 当面のところ、羽田に降り立つお客様というのは、この2,000キロメートルの範囲から来るお客様、海外からの観光客なのですが、これをどうやって神奈川県の観光振興につなげていくのかということもあると思います。神奈川口ができれば、羽田空港というのは東京都と神奈川県にまたがって立地する空港ということで、神奈川県という名前も、もしかするとこれまで以上に外国に知ってもらえるようになるのかもしれません。それが大前提ですけれども、これは東京都だって必死にこれから誘致とかいろいろなことで動くでしょう。でも、神奈川県が中国や台湾のお客様に対して、横浜中華街をアピールしても余り興味を持ってもらえないでしょうし、どうやって神奈川県の魅力をアピールして観光振興につなげていくのかも大きな課題だと思うのです。
 2009年の再拡張・国際化、もしかすると遅れるかもしれませんけれども、それを見据えた現在の取組について教えていただきたいと思います。

<答弁> 観光振興担当課長
 羽田空港の再拡張・国際化を見据えての取組につきましては、平成17年度から既に実施しておりまして、まず、川崎市、横浜市と県が連携して、なおかつ国のビジットジャパンキャンペーンとの地方連携事業ではありますけれども、台湾からの旅行会社及びメディアの方を招聘いたしまして実施いたしました。それによって旅行商品の造成ですとか現地テレビ局での放映、旅行関連雑誌等への記事掲載などによりPRをしていただく、こういうことで昨年はやってまいりました。ちなみに、この台湾は2,000キロメートルを超えているということですので、やはり一つのアピールということでやっております。
 今年度につきましては、実は、今週来ておりまして、明日帰る予定なのですが、上海から旅行会社あるいはメディア関係者を招へいして、平成17年度と同じように、神奈川県内の観光スポットを実際に自分の目で見てもらうと。それを自国に帰って商品化に結び付けていただく、こういうことをねらって取り組んでいます。
 いずれにしましても、羽田空港の国際化のメリットそのものは、神奈川県にとっても大変重要なものでありますので、鎌倉や箱根をはじめ、県域全体の観光振興につながるように取り組んでいきたいと考えております。




<質疑>
 今、観光という面でお話をいただきましたけれども、観光という面ももちろんそうですし、あるいはビジネスという面でもアジアとのつながりというのは、ますますこれから強くなってくると思います。供用開始時期が近づいているということもありますので、今後、羽田空港の国際化の推進に向けて、県としてどのような取組を進めていこうとしているのか教えていただきたいと思います。
 また、産業振興という視点も充足してオール神奈川の課題になると思うのですが、もしかすると、川崎市の限られた地域の開発というところに意識がいってしまうこともあるかもしれません。やはりこれは神奈川県としてもお金を出していることですし、オール神奈川として考えなければいけない。そのためには、そういう産業振興という視点も充足していかないといけないと思うのですが、それを含めて今後の取組について教えていただきたいと思います。

<答弁> 観光振興担当課長
 羽田空港の再拡張・国際化につきましては、資料の中にもありましたけれども、まず、アクセス時間が短縮される。それから、国の試算ですと年間約700万人の集客数が見込まれる状況にあります。また、日本への外国人旅行者数は東アジアからおよそ397万人というのが現在の実績であります。平成17年は673万人の外国人が来たわけですが、これは全体の約6割を占めております。この地域をターゲットとした観光客誘致は重要なマーケットという認識でおります。
 一方、国におきましては、今年7月でありますけれども、日・中・韓の3国で観光担当大臣によって、3国間の国際観光交流拡大に向けた宣言をされました。これは阿寒町で行われたのですが、北海道宣言というものが採択されたということであります。同時に、本県におきましても先月、第6回友好県省道交流会議において、友好提携先である中国の遼寧省、韓国の京畿道と3地域間の相互間交流の促進について覚書を交わしたところであります。本県としては、こうしたことを前提にして、横浜市、川崎市と東アジアをターゲットとして誘客の取組を今後も進めていきたいと考えております。
 また、遼寧省、京畿道との友好交流を活用して、3地域による相互の観光展への出展などもお互いにしていこうということを確認したところであります。あわせて観光情報の総合PR、どちらかといいますと、今までは神奈川県と京畿道、神奈川県と遼寧省という関係であったものを、この3地域相互に交わしていこうという確認であります。
 また、2009年3月には富士山静岡空港の開港も予定されておりますので、静岡県、山梨県と連携した富士箱根国際観光テーマ地区への取組も、さらに進めていきたいと考えております。
 いずれにしましても、観光面におきましては、国のビジットジャパンキャンペーンとの連携を図りながら、さらに取組を進めていきたいと考えております。

<答弁> 京浜臨海部活性推進課長
 観光振興担当課長から、観光産業を中心として広域的な取組の御説明がございました。その他の物流とか様々な面がございます。そういった面で若干補足させていただきますと、羽田空港の国際化は意外と知られておりません。知っていてもその中身、例えば就航範囲がどのくらいであるとか、あるいは24時間運用であるとか、そういったことはほとんど知られていなくて、我々の取組も御理解いただいていないのかなと思っています。
 そこで、羽田空港の国際化の内容というものを、産業界の方々等にきちんと知っていただくことが大事だろうと思っております。そういうことで、我々はずっとフォーラムというのを開催してきてございまして、神奈川県にとって望ましい羽田空港の再拡張・国際化ということをテーマに、国土交通省あるいはターミナル事業者等からいろいろな事業構想等を聞く、そういう機会等を設けたりしております。また、物流事業者等とも、市や国等と連携しながら意見を交換する機会等も設けてございます。あと、羽田空港国際化・神奈川活性化期成同盟会、130数社の企業と協働してそういう機会を設けてございますので、そういった方々と一緒に、空港の国際化、活用方法について認識を深めてまいりたいと考えてございます。




<要望>
 先ほどの御答弁の中にもありましたけれども、国際線の就航というのは相手の国との交渉事であるということで、これは国の専管事項ということではありますけれども、2,000キロメートル、3,000キロメートルという単なる距離だけの就航先ではなくて、周辺の利用者の利便性にも十分配慮した就航先となることが望ましいと思います。
 羽田空港への連絡道路の整備については、様々難しい課題があるようでございますけれども、その道路整備も含めたアクセスの改善とともに、国際化の一層の充実がなされるよう、神奈川県の立場で、何よりも県民の利益に資するようにしっかりとした取組をこれからも行っていただきたいということを御要望申し上げて、質問を終わります。