■文教常任委員会 高等学校奨学金について (平成18年12月14日)
<質疑一覧>


<質疑>
 次に、高等学校の奨学金について質問をいたします。
 神奈川県の奨学金予算というのは平成13年度から18年度までの5年間で見ますと、当初予算額で4倍にも伸びているにもかかわらず、毎年応募者が募集人員を上回っています。昨年度、今年度と不採用者が出ている。所得制限などをクリアしているのに、奨学金がもらえないという高校生が出てきているわけですけれども、その一方で、最近は給食費の未納だとか不払い、公共料金の滞納ということが増えていると報道にもありますけれども、神奈川県の奨学金の返還率も残念ながらどんどん低下していると聞いています。
 私どもの会派の渡辺議員が6月定例会の一般質問で、債権管理を含めた奨学金業務の民間委託ということについて質問をさせていただきました。その際、教育長から制度見直しについて検討していくという御答弁をいただいていますので、それに関連して幾つかお尋ねをさせていただきたいと思います。まず、昨年度から新たな奨学金制度を実施していると承知しておりますが、確認のため、簡単で結構ですので、御説明願います。

<答弁> 高校教育課長
 平成17年度に神奈川県奨学金貸付条例を改正いたしまして、制度を改正いたしました。きっかけは国の日本育英会の奨学金業務が、高等学校の部分は都道府県に移管されるということがございまして、私ども、それまで高等学校育英奨学金と特別奨学金の2本を持っておりました。さらに、旧日本育英会の奨学金がございまして、3本立てでございましたが、それを県の奨学金として受け止めなければいけないという中で、制度の分かりやすさも求めまして、一本化して制度改正をしたというところでございます。
 その中で、多少中身も改善を図ったところがございまして、例えば貸付けの月額の引上げ、公立高校はそれまで月額1万8,000円でございましたが、それを2万円、私立は月額3万円でしたが、それを4万円というような貸付月額の引上げ、さらに、以前の特別奨学金というものは、実質給付という形でやっておりましたけれども、一本化をする中で、原則返還をしていただくと。一定の免除要件を設けましたが、返還をしていただく。そのようなところを主に内容とした制度の改善を図っているところでございます。




<質疑>
 先ほど、平成13年度から18年度にかけて、当初予算額の4倍も伸びているということを申し上げましたけれども、この5年間で応募者数の推移はどのようになっているのでしょうか。また、応募状況の特徴的なものがあれば、お聞かせいただきたいと思います。

<答弁> 高校教育課長
 この5年間の応募者の推移ということでございますが、人数的に、非常に急激に増加をしております。平成14年度が合計いたしますと1,280名でございました。平成15年度が2,032名、平成16年度が2,465名でございました。ここまでは全員採用がかないました。平成17年度はさらに増えまして3,238名で、107人の不採用がございます。平成18年度は、さらに増えまして、4,519名の応募者、300名を超える不採用という状況になっております。お話にございましたけれども、応募者数で見れば3.5倍程度増えておりますし、予算の面では4倍くらい、この5年間で増加しているところでございます。
 そうした中で、特徴的なことでございますが、平成17年度に制度を改正しまして、それまで実質給付の部分もあったわけですが、すべて原則返還していただくという改善を図ったのですが、それでも応募者の増加が続いているというのが一つの特徴でございます。
 もう一つは、公立・私学という別の内訳を見てみますと、公立の方は平成14年度が1,004名でございましたが、今年度は2,489名ということで、2.5倍ほどの増加。それに対しまして、私学の方は276名が2,030名まで増えて、7.4倍ほど増加してきているということでございますから、私学の方も応募者が大変に増えているということが特徴ということになります。



<質疑>
 私学の伸びがすごいですね。渡辺議員の質問のときに、奨学金の業務を銀行などの金融機関に業務委託するという提案をさせていただいて、それに対して御検討いただけるということだったのですけれども、埼玉県などはもう実現をしているようですが、本県において委託化というのは、今、どのような見通しになっているのかをお聞かせいただきたいということと、現在の返還率を併せて教えていただけますか。
<答弁> 高校教育課長
 まず、返還率の方のお話でございますが、平成14年度には7割弱ということでございましたが、それが徐々に低下をしまして、平成17年度には5割を切るというような状況でございます。
 また、6月の定例会で御質問いただきまして、銀行などへの業務委託ということですが、この間、私どもも検討をさせていただいております。具体的に、幾つかの民間の金融機関にいろいろ御相談をして御意見も伺ってきたところでございますが、かなり大きな課題もあって、それをクリアできる見通しがないと委託は難しいというような御意見を複数の金融機関から頂だいしました。具体的に、どのようなところが問題点になるかということでございますが、まず1点目といたしまして、金融機関は成人に対して貸付けをされるわけでございますが、当然十分な資格審査のようなものをやられた上で貸付けを行っていく。奨学金の場合、貸付対象者は生徒でございますので、未成年者であるということでございます。当然、金融機関が行うような資格審査というものはございませんので、返済の見込みを重視します金融機関の貸付けとは考え方がかなり大きく異なっているということです。
 2点目といたしましては、返還率が低いということがございますけれども、それは金融機関としてはリスクが大変大きい。普通、金融機関では、こうしたリスクは利子に転嫁するわけでございますが、奨学金は無利子でございますので、仮に利子に反映させるとしても、これは相当な高率になってしまう。
 3点目といたしまして、延滞金の債務保証のようなものを、例えば保証会社に委託するということも考えたわけでございますが、これもまた保証料が相当に高額になると。そうしたものを県の予算として計上していくことは、県民の方々の御理解を得られるのだろうかというようなお話がございまして、こうした問題をクリアしていかないとなかなか金融機関に委託をしていくことは難しいというのが、現状の段階の整理でございます。
 ただ、私ども、その部分についてさらに検討させていただきたいと思っております。例えば全部ということではなくても、基本的な事務の委託といったことの可能性はないのかというようなことについても、検討していきたいと考えておりますが、現段階での状況で申し上げまして、民間の金融機関に直ちにお引き受けいただけるような状況ではないというのが実感でございます。



<質疑>
 いわゆる中小企業の制度融資のように、金融機関が実際に資金を貸し付けるという仕組みですよね。そうなってくると、なかなか今、御説明いただいたようなことで、大変難しい部分も出てくるのかなと思います。奨学金というのは、例えば返還が滞ったときに、何か押さえるものがあるかというとそれもありませんし、難しいのかなと思うのですが、例えば埼玉県にお話を聞いたりされていますか。
<答弁> 高校教育課長
 私ども、大変埼玉県の取組には関心を持ちましたので、いろいろ事情等もお伺いしたところでございます。なかなか詳細の部分までは分かりにくいところもございましたけれども、お話を伺う中で、本県の奨学金の性格とは多少異なるところがあるなと思いましたけれども、県の予算には、県単で賄う部分と国からの交付金で賄う部分がございます。本県の場合は、圧倒的に県単の方が大きいということなのですけれども、埼玉県は逆に国からの交付金の方が圧倒的に大きいということで、今後も交付金というのはある程度一定のものとして安定的に来ると思いますけれども、そうした基盤的なものの違いがあるというようなことは一つ感じたところでございます。
 もう1点は、埼玉県が委託されようとしている銀行ですけれども、お聞きする範囲の中では、平成15年ころ、国から相当大規模な資金投入を受けたグループに属されている銀行と伺っておりまして、そうしたことがあって、委託ということをお願いしやすいような状況もあったのではないかということを感想として持ったところでございます。詳しいところまでは分かりにくいところがございますけれども、本県とは少し状況が違うなということで、私どもの方で、金融機関に埼玉県ではこのようなこともというお話もさせていただいているのですけれども、非常に難しいのではないかというような厳しいお言葉をいただいたという状況でございます。



<質疑>
 その厳しい言葉というのを我々も聞かせていただいた方が良いのではないですか。
<答弁> 高校教育課長
 大変申し上げにくいのですけれども、失敗するのではないかというような金融機関の方の御意見でございました。



<質疑>
 なかなか厳しい見通しであるということでしょうか。たしかに金融機関が貸し付けるような形というのは大変難しいことだと思うのです。それを危惧するのはある意味で当然だと思います。
 先ほど、高校教育課長から、部分的な事務の委託だったら可能性はあるかもしれないというお話があったのですけれども、それはどういうことですか。
<答弁> 高校教育課長
 今、未済の部分の回収が非常に大きな課題になっております。そうした中で、銀行が基本的な債権管理まで行うというのは難しい。埼玉県でも、債権の管理は県が行うと聞いておりますので、そういうことではなくて、債権管理の中で必要になります督促の業務を民間に委託するということは可能性があるのではないかと考えております。現在、私どもの課員が文書あるいは電話等の督促というようなことも行っておりますけれども、例えば電話等につきましても、昼間はなかなかつかまりませんので、夜間、遅い時間に担当の職員が督促を重ねているというような状況もございます。
 そうしたことを含めて考えますと、例えば民間の業者に依頼して、そうした督促の電話等の事務をやっていただく、あるいは今後、さらに強い何らかの措置をとる場合に、住所の確認ですとか、ある種のお知らせの文書の手渡しということも必要になってこようかと思っております。そうした部分を民間の業者に委託するというような方法が考えられるのではないかと、私どもは思っております。ただ、このことにつきましても、当然コストということになりますので、そのコストと私どもの事務の負担の見合いをしていかなければいけない、コスト的に見合うか、あるいは私どもがいろいろな形で取り組んでいくのが良いのか、もう少し検討していかなければいけない状況にございます。




<質疑>
 銀行が貸し付けるということではなくて、回収の部分だけ民間委託していくというのも一つの方法だと思うのですよね。とにかく返還率を何とか高めなければいけないというのは間違いのない事実ですので、どのような委託の仕方があるのか。確かに、教育委員会の職員の方々が電話をして、催促や督促をしてということもあるのでしょうけれども、そういうところにマンパワーを投入するのは、本当にもったいない話なのではないかという気もしています。そういう業務に長けているところに任せるというのも、一つの方法なのかなと私は思います。
 どれぐらいの人数をそこに振り向けているのか分からないのですけれども、例えば住所が変わったけれども、電話番号は変わっていないのに、連絡が来なくなったとかというような、実際に返還している方からの話も聞いたことがあるし、どうしても、全部カバーし切れないのだと思うのです。今、どれぐらいの人数と頻度でこの問題にかかわっていらっしゃるのですか。
<答弁> 高校教育課長
 基本的には、担当班があるわけなのですけれども、担当班の中での業務だけでは到底らちが明かないということで、私どもの課を上げて、取り組んでいるところでございます。昨年度までは機械的といいましょうか、決められたやり方でやってまいりましたけれども、本年度につきましては、それをさらに強化する中で、例えば文書でお知らせをいたしますけれども、その回数も増やしているわけなのですが、それでらちが明かないとお電話を差し上げて、例えば1回で、お支払いしますというお返事をいただくこともあるのですけれども、なかなかそうならないで、10回近くお電話するというようなこともございます。平均すると今年度11月末現在で、お一人の方について、平均3回以上のお電話を差し上げているような状況がございます。文書督促もそれに応じたような形で、昨年度の3倍程度、私どもは行っているという状況でございます。



<質疑>
 そこまでやっても返還率がどんどん下がっていくというのは、本当に何とかしないといけないなと私も思います。例えば、先ほどコストの問題が出ました。民間委託をすれば、それだけコストがかかるということもあるのだけれども、実際にそれによって戻ってくる金額と比べるということも必要なのかなと思うのです。もちろん、職員の皆さんが大勢で取り掛かる、それとの見合いということもあると思うのですが、確かにこれもコストがかかることかもしれないけれども、口座引き落としなど、貸し付けるとき、また返還が始まるときに、借りた方の口座から引き落とすというような約束をすると。奨学金は、借りるときは皆、いろいろ手続をするのですが、返済ということを忘れてしまうのです。毎月、口座から自動引き落としということになれば、返済という意識を持つと思うのですが、口座引き落としについて、考えたことはありますか。
<答弁> 高校教育課長
 返還金の納入は、納入通知書を金融機関に持っていっていただいて、そこで払い込んでいただくという仕組みでございますので、私どもとしては、今、お話しがございました銀行の自動口座振替を是非とも実現したいと考えております。私どもが奨学金を管理しておりますコンピュータシステムに、そうした機能が今のところございませんので、その部分の改善も図りながらやっていきたいということで、是非とも実現をしたいと考えているところでございます。



<質疑>
 コンピュータのシステムを変えていくのに、どのぐらいのお金がかかるのか、試算をしたことがあるのですか。
<答弁> 高校教育課長
 自動口座振替で約4,000万円のシステム改修費がかかるという試算になっているということでございます。



<質疑>
 是非、具体的に進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思いますが、今の状況をお伺いするに、もちろん民間委託というのは一つの大きな方法だと思いますけれども、奨学金について制度の見直しということも検討していくと、教育長からお答えをいただいているわけで、ある意味で中長期的な視点も持って検討しなければいけないとも思うのですが、この点についてはどのようにお考えなのでしょうか。
<答弁> 高校教育課長
 本来の奨学金制度そのものでございますけれども、平成17年度に条例を改正して新たな制度にした2年目ということでございます。余り短い期間の中で制度が大きく変わっていくということは、なかなか難しい面もあろうかと思いますが、現状の中で条例改正をして制度を改正すべきもの、それから現条例の制度間の中で、運用の中で改善できるものについては、いろいろな観点から考えていかなければいけないということで、検討をしております。例えば、一つといたしまして、所得格差が拡大しているという中で、経済的な支援が本当に必要な家庭、あるいは生徒に配慮した制度ということはできないか。今は年収800万円以下の方につきまして、手を挙げていただくことはできるわけなのですが、そうしたものに、ある段階を設けるようなことは考えられないかというようなことでございます。
 また、今、私どもが収入要件のみで人を選んでいるという形になっておりますけれども、条例そのものを見ますと、学業の成績に優れた人というような要件も入っております。そうした中で、貸付けをするときに、そうした成績要件というようなことを一部導入することはできないかというようなこと。さらに、昨年がそうでしたけれども、本年度も不採用者を出していますので、多くの不採用者を出さないような安定した制度をどのようにできるのか。例えば、貸付単価にしましても、先ほど申しましたような状況でございますが、一律で良いのかどうか、ある段階を設けるようなことは考えられないか、そうした中で募集枠そのものを広げていくことはできないか等、制度の中での改善ということも当然考えていかなければいけないということで、いろいろ悩みは深いわけでございますが、今、いろいろな形で検討を進めているところでございます。
 今の制度で2年やっているところでございますので、やや中期的にといいますか、遠くない将来に向けて制度の改善をしていきたいと考えているところでございます。



<質疑>
 少し角度は変わるのですけれども、最近、私立高等学校の奨学金の応募が大変増えているということでございましたけれども、以前は、神奈川県内の私立高校に通う生徒のみというように私は確認したことがあるのですが、それは今でも同じですか。
<答弁> 高校教育課長
 かつてはそうでございましたが、日本育英会の制度が県に移管されましたときに、神奈川県内に住んでいるのですけれども、県外の私学に通われている方も育英会は対象にしておりましたので、その精神を引き継いでおりますので、例えば、神奈川県内に住んでいて東京都の私学に通われている生徒の方もその対象にしているということでございます。



<要望>
 ありがとうございました。
 最後に、要望をさせていただきますが、奨学金というのは、本来きちんと返還されていかなければ、それを原資に織り込んで、次に奨学金を希望する生徒に対応していくというのはできないということなので、返還率を上げるというのは大変重要なことだと思います。口座振替には、システム改修が4,000万円くらいかかりそうだということだったのですけれども、返還率を上げる上では特に有効な方法だと思いますので、今後、それについて積極的に検討していただきたいと思います。また、県の教育委員会の貴重なマンパワーを督促に割くというのも問題なのかなと思いますので、督促業務の民間委託ということも検討をしていただきたいと思います。返還実績を少しでも向上させて、制度をうまく回していけば、奨学金を本当に必要とする生徒にさらに広く貸付けができるわけですから、是非、御努力をお願いしたいと要望いたしまして、私の質問を終わります。