■文教常任委員会 かながわ教育ビジョンの策定について(平成18年12月14日)
<質疑一覧>


<質疑>
 教育ビジョンについて幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど、教育ビジョンについて、本委員会に素案の報告がございまして、御説明をいただいたところでありますけれども、言うまでもなく、今、教育というのは本当にいろいろな課題を抱えているところです。そうした中で、県教育委員会のみならず関係部局ですとか、市町村、学校、地域、家庭、さらには企業など、社会全体で子どもたちの教育を支えていくということに、教育ビジョンの策定の趣旨があるのだと伺いました。当たり前の話ですが、教育の問題というのは学校だけでは到底やり切れないということについては、私もそう思っておりますし、そうした意味では、教育ビジョンづくりというのは大変関心を持つとともに、期待をしているところでもあります。
 国では、安倍新総理のもとで教育再生会議が発足いたしました。本質的な課題について、今、いろいろな議論が行われている。去る11月29日には、いじめ問題の緊急提言が発表されました。提言の中身については種々意見があるようでございますけれども、直面する課題について正面から受け止めて、迅速な対応を図ったという点では評価されるのではないかと思いますが、そうした国の動向を踏まえつつ、今回報告された教育ビジョンの素案につきまして何点かお伺いをいたします。
 まず、素案の報告に際しての説明では、教育ビジョンの中で、教育の現状でありますとか、課題をどのようにとらえているのかということについて、詳しい説明はなかったように思いますが、その点はどのように整理されているのか、お伺いしたいと思います。

<答弁> 教育政策課長
 教育をめぐる現状と課題の部分については、第1章、素案の8ページから13ページに詳しく出ておりますが、この文については骨子案と、内容的にはそれほど多く変わっておりませんでしたので、説明を省略させていただいております。ただ、簡単な御説明をさせていただきたいと思いますが、8ページ、9ページは、地域、家庭の問題の課題認識ということで、地域の連帯感の希薄化と家庭の教育力の低下について書かせていただいておりまして、その中から学び合う、教え合うことから生まれる、新しい地域の姿の創出が求められています。それから、家庭での子育てや教育を改めて見詰め直し、次代を担う子どもたちを育てることの大切さを共有できる環境づくりが必要という課題認識をさせていただいております。
 さらに、10ページの方は、学校現場の認識についてです。今の学校現場の状況は、なかなか子どもたち一人一人に向き合う時間が足りないという現状をここで記させていただいて、しっかりと子どもたち一人一人に向き合う学校運営、それから学校全体を組織として、一体となって取り組むことが必要であるという認識をさせていただいているところであります。
 11ページは、(4)子どもの思いと育ちの姿と書いてあります。これは骨子案をかなり変更した部分ですが、ここでは不登校、いじめ問題についての基本的な認識を、子どもたちの暗い面ばかりではなくて、明るい面も少し出してほしいという意見が、いろいろありましたので、12ページで子どもたちは大人たちが感じているよりも前向きな思いを抱いているということをデータからお示しするとともに、そういった子どもたち一人一人の思いと育ちを大人たちがしっかりと見詰めて、かかわっていくことが必要だろうという認識をさせていただいています。
 13ページにつきましては、生涯を通じた「学び」への対応ということで、だれでも学び続けることや学び直しのできる環境をつくる必要があるという課題ということで整理をさせていただいているところでございます。




<質疑>
 現状認識ですとか、課題についての認識についてはおおむね分かりました。9月定例会で報告をいただいた骨子案と比べると内容がより詳細にはなっているわけですけれども、今後この素案をもとに、さらに議論を深め、肉付けをして、最終案をまとめていくということなのだと思います、今の課題認識や現状認識に対しての具体的な対応策については、この素案の中にもまだ盛り込まれていないような印象を受けたのですけれども、それはこれから教育ビジョンの中に盛り込んでいくのですか。それとも、そういった具体的なことは盛り込まないのですか。

<答弁> 教育政策課長
 私どもとしては、県としての具体的な取組の方向性について、第4章で八つの柱にまとめてまいりたいと考えてございます。素案では、かなりお示ししてきたと思っておりますが、さらには第5章で、より集中的・横断的な取組ということで八つ整理させていただいております。ただ、具体的なという部分で、いわゆる実施計画レベル、事業レベルのお話になりますと、これにつきましては現在、新しい総合計画を県で策定しておりますので、こちらでは施策の方向性をきちんとお見せしていく、そして具体的な事業計画については、総合計画の方に位置付けをお示しするような整理をさせていただいているところでございます。




<質疑>
 具体的な事業計画については、どうなのですか。

<答弁> 教育政策課長
 具体的な事業計画レベルにつきましては、新しい総合計画の方にきちんと出てまいると聞いているところでございます。




<質疑>
 これまで、神奈川県では、いじめですとか、暴力行為という問題行動が全国的に見ても極めて深刻な状況にあるという議論がされているわけですけれども、教育ビジョンが、これからの神奈川県の教育の総合的な指針、方向性も定めていくということであれば、教育長も緊急アピールも出されたほど深刻ないじめの問題といった重要な課題については、きちんと正面から受け止めて、県民に見える形で解決の道筋をこの中で示していく方が良いのではないかと思うのです。これは今だけの問題ではなくて、もう何十年前からあるし、多分これから将来にわたってもなくならない問題だと思うのです。そういったことに対しての受け止め方、そして解決の道筋といったものをこの中でも示していくべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

<答弁> 教育政策課長
 確かに、骨子案の段階でそういう御意見をいろいろいただいております。私どもとして、いじめの問題に対する課題認識をより強く求めた形で、いろいろ整理させていただきまして、素案の36ページの第5章で、「重点的な取組み」の中に、「心ふれあう教育」を根幹に入れさせていただいておりますけれども、そこで、「緊急的な対応が必要ないじめに対する早期発見・早期対応の取組みと併せ、問題の根源的な解決をめざします」と整理をさせていただいているところでございますが、いじめの問題は私ども教育委員会でも大きな問題としてとらえておりますので、この素案をもとに、いろいろなところで御意見をいただきながら、最終的には整理させていただきたいと思っております。




<質疑>
 今、御説明いただいたところは、私も読んでアンダーラインを引いたのですけれども、問題の根源的な解決を目指すというのは当然の姿勢だと思うのですけれども、そこに具体的な方策といったことをどのようなスタンスで取り組んでいくのか、今後より明確にしていただきたいと思います。書いてあることは、当然このとおりなのだけれども、では、どうすれば良いのかということを是非、お示しいただければと思うのです。
 もう一つ、18ページの「かながわらしい教育に向けて」というところに、「ふれあい教育」の成果と課題というのがありました。「昭和50年代の過熱する受験競争や、知識偏重的な教科中心の学校教育のあり方などをめぐり、県民をあげての「騒然たる教育論議」をきっかけとして、人や自然とのふれあいによる体験的な活動を重視した「ふれあい教育」が生まれ、現在まで、かながわの教育の根幹をなしてきました。」とありますけれども、ふれあい教育についての評価は、その後にプラスの面、マイナスの面など、残されている課題に関して触れられていますね。
 次の(2)「今こそ大事な心ふれあう経験」というところを見ると、「「ふれあい教育」は、かながわの教育ビジョンの中でも、継承していくべき不易なものといえます。」ということでございます。
 次のページを見ますと、ふれあい教育が打ち出される以前の競争の原理として「科学の知」という言葉を使っていますけれども、そこに偏っていた。それから、子ども自身が実感をもって獲得する「臨床の知」の重要性が指摘されたと。今度は、「行動の知」という言葉がここで使われていますね。「教育ビジョンでは、学びとったものを生かして、自らの生き方とともに、他者や社会と積極的にかかわり合って、未来を創造できる人間力の育成に向け、「行動の知」の体得をめざします。」とあります。これを読んでいると、いわゆる「科学の知」という部分を否定しているように読めるのです。
 今、一つの問題として、学力低下の問題が言われています。これに関しては、神奈川県の実態というのはどうなのですか。

<答弁> 子ども教育支援課長
 一般的に言われているところでは、知識、理解という部分と、それらを活用してこれから組み立てて生きていく、自ら学び考える力といった両面から考えていくというのが今の学習指導要領において求められており、生きる力というものに結び付いていますが、私どもの方では、学習状況調査を見る限り、例えば算数や数学における計算問題などで、一定の改善の状況がやや見えています。ただ、これはまだ短い時間での比較になっておりますので、はっきりしたことは申し上げられません。
 一方で、じっくり考えて、自分の意見を組み立てていく力とか表現力というところに、一定の課題があると認識しております。




<質疑>
 知恵というのも知識のないところに出てくるのかどうかと、私も大変疑問に思っているのですけれども、これだけ読むと、結局、「科学の知」というものが否定されて、置き去りになったまま行ってしまうのかなという不安があるのですけれども、それに関してはいかがですか。

<答弁> 教育政策課長
 委員がそのように思われたということは、私ども、この表現が不十分だったと思います。私どもが言っていることは、そういうことではございません。資料の絵にもありますけれども、ふれあい教育というのは、まず「科学の知」の取得に偏った時代に対して、人と自然とのふれあいの体験を通じた、いわゆる「臨床の知」といったものを合わせ持つという、両方持つという考え方です。私どもは、それをさらに発展させ、人と社会との深いかかわりの中で、より自ら自立する「行動の知」へ持っていく方に行かないかという、三つとも組み合わせた形をねらっておりまして、私どもは当然「科学の知」も必要ですし、「臨床の知」も必要ですし、そしてその上に「行動の知」をということになります。




<質疑>
 「科学の知」というものが、必要以上に軽視されるような風潮があるのではないかと少し心配するところだったのですけれども、そういうことはないわけですね。

<答弁> 教育政策課長
 そういうことはございません。重点的な取組の三つ目の「学び高め合う学校教育」という中では、基本をしっかりととらえた学力向上に向けた取組というのも続けていきたいと思っております。




<要望>
 今、教育をめぐって、実に様々な課題が山積している状況でありますが、この教育ビジョンが目指している方向というのは大変重要なものであると思いますし、全体的には大変意義のあることだと思います。今後のビジョンづくりにおきましては、広く議論を尽くしていただいて、是非、県民の期待にこたえるものにしていただきたいと要望いたしまして、この質問を終わります。