■産業振興特別委員会(7月4日)
<質疑一覧>
 中小企業支援について


<質疑>
 私からは、神奈川R&Dネットワーク構想による中小企業支援について、何点かお尋ねをしたいと思います。
 午前中に神奈川県産業集積促進方策、いわゆるインベスト神奈川についての説明がありました。それによると、今日までに14件の申請があり、もう既に10件の助成が決まっていると伺いました。中でも大企業の研究所の新設・増設というのが大変多く、認定済みのところで最近申請が出された横河電機と山武を入れて、こういった研究所等の集積の効果を県内の中小企業に普及させるために、神奈川R&Dネットワーク構想というのを県が打ち出したものと認識しています。これについては午前中に説明がありましたが、この内容についてお伺いをいたします。
 まず1番目に、この構想の主な取組内容の中に、大企業保有技術を中小企業へ移転するということがあります。その一環として、先ほどもお話が出ましたけれども、技術連携フォーラムを2月8日に日産自動車総合研究所において、5月27日に東京応化工業にて行ったということです。これについて少し中身を教えていただきたいのですが、まず一つは、日産の方は加工技術フォーラムとあります。また東京応化工業は電子材料技術フォーラムとありますが、難しいことを聞いてもよく分からないと思いますので、まず、これはどんな形式で、どんなことをやったのでしょうか。そして参加人数に関しては、日産の方は69名、そして東京応化工業の方が51名となっていますが、これも、固有名詞を出すのは難しいと思いますが、どんな会社・企業のどんな方々が来られたのか。また、そこに集まられた中小企業の方々の反応についてもお伺いしたいと思います。生の声として、大変よかった、役に立ったという声もあるかと思いますし、少しうちには難しいという声もあったと思うのですが、その辺のことも含めて、その技術連携フォーラムについてお伺いしたいと思います。

<答弁> 工業技術担当課長
 まず、日産自動車で行われたフォーラム及び東京応化工業で行われたフォーラムの内容ですが、日産自動車で行われたフォーラムは高度な加工の技術についてで、車をつくるといっても、いろいろな高度な加工をします。例えば非常に小さな穴を正確にあける技術や非常に硬いものを削る技術などで、日産が持っている技術について、集まられた皆さんに御披露して、それも講演形式と、その後に実際見学ということで行いました。
 もう一つ、東京応化工業について、東京応化工業が一番得意なものというか、まずこの会社ができたのは、皆さん御存じのコンピューターの中にCPUという小さな集積回路が入っているわけですが、そのCPUをつくるときに絶対必要な材料で、レジプトという材料があります。それは、非常に小さなところに、光を当てて感光させ、その部分を溶かすという、専門的に言うとややこしいことなのですが、なくてはならないレジプトというものをつくり、それが発展した会社で、そういう回路をつくる関係の非常に細かいことを行う技術を持っています。その技術について、皆さんに御披露して、それとも同時に、同社は材料の開発もしていますので、東京応化工業が考えた以外の用途もほかの企業にあるのではということで、材料の特性の紹介も兼ねて実施しました。
 そこに集まったのが、どういう人なのかということですが、これは非常に幅が広がっております。特に日産自動車の場合は機械メーカーから電子メーカー、特に決まったところはありませんでした。東京応化工業の方は、やはり元々電子材料ですので、そちらの方の企業さんがわりと多いという傾向でした。
 また、反応ですが、両方とものフォーラムで、非常に活発な質問がなされたということです。このフォーラムが終わった後のアンケートでは、両方とも、是非技術導入したいという企業がかなりたくさん出てまいりました。数についてはまだこれは、うまくいくところもいかないところもありますので差し控えさせていただきますが、両方とも複数社出ています。そして日産自動車の場合には、もう企業から研究生という形で日産自動車に既に行き、その技術を習得している会社もあるということです。具体的にそういうようなことを進められ、これが製品化されていけばいいと思っています。そういう意味では、参加された企業さんから非常にいい感触を受けております。




<質疑>
 フォーラムの状況は分かりました。今後、このフォーラムに関連したことでもいいのですが、この技術移転関連の計画があれば教えていただけますか。

<答弁> 工業技術担当課長
 今お話しした日産自動車とか東京応化工業と同じような形のフォーラムで、既にもう年内に計画が決まっているのが1社あります。ほかにも、先ほど工業振興課長からお話ししましたR&D推進協議会の中で行っているということです。また、同じような形式の技術移転のフォーラムを来春竣工する予定の企業で、竣工後すぐに実施したいということです。
 もう一つ、少し特殊な技術の連携の形ですが、大企業の方に、中小企業のオンリーワン技術、独自技術を持っていって展示をし、大企業がそれを見て、パートナーを探したいという要望が大企業の方からありました。それを産総研でいろいろな中小企業に声をかけ、仲立ちをし、大企業の方で返事をしてもらい、うまくいけば共同研究やアウトソーシングあるいは何か発注みたいな形になればいいのではないかということがあります。
 そしてまた、共同研究について、共同研究を予定されている研究所と、それから先ほどお話にありましたが、大企業同士、大企業と中小企業、あるいは産学協同の共同研究ができるように、協議会の中で詰めていく予定です。もう既に、協議会が始まる前から、準備をし、是非やりましょうという話は大企業の方からあります。




<質疑>
 大企業の研究所などを集積することで、当然、波及効果として中小企業にメリットが出てくるということは、理屈としては非常によく分かります。その一方で、その技術を公開していく大企業にとって、どんなメリットがあるのかということが大きな問題だと思います。知的財産を流出させるわけですから、その見返りとして、どんなメリットを提供し得るのかということがあります。休眠特許といっても、大変な元がかかっているわけで、その辺は当然明確な見返りというものが必要だと思うのですが、その辺について御説明いただければと思います。

<答弁> 工業技術担当課長
 一つには、大企業のメリットということですが、先ほど、例えば日産自動車で行っております高度な加工技術について、技術移転することによりまして、例えば自社で本当はやりたかったが、自社でそういう加工はとてもできないので、今まで、その加工精度がそこまでいかない、ある程度劣るような企業の部品を使っていたが、技術移転することにより、その企業の加工精度が高くなり、大企業は非常に精度の高い加工をした部品を納入してもらえるようになるという、要するにアウトソーシングということができるようになるというのが一つ。
 もう一つは、休眠特許のお話が今ありましたが、大企業が、中小企業と大きく違うところは、売上高がある程度に達しないものというのは製品化、事業化しないということがほとんどです。例えばマーケットの売上げがたかだか10億円ぐらいにしかならないというと、まず大企業は製品化しません。しかしながら、それを製品化する技術は持っているというような場合に、それを非常に低いロイヤリティーで中小企業に移転することによって、ロイヤリティー収入が入ってくることになります。休眠特許の場合はただ維持費を特許庁に払うということが起きるだけですので、少なくても少しずつ収入が入ってくるのと同時に、中小企業の技術力が上がっていけば、それはまた神奈川県の産業の活性化につながって、自らもその恩恵を受けていくということなりますので、最終的には休眠特許で、安いロイヤリティーで使ってもらっても、最終的にはメリットがあるというふうに考えております。




<質疑>
 今の御説明だと、本当に八方うまくいくような感じで思ってしまうのですが、大企業と中小企業の間の技術移転というのは、その技術を公開するだけでは当然うまくいかないと思います。当然大企業と中小企業の間の体力差みたいなものもあると思われますし、そこをうまく調整させるというのか、そのために大変な支援が必要ではないかと思いますので、その中で県が具体的にできる支援、それはどんなことを考えているのか教えていただけますか。

<答弁> 工業技術担当課長
 県ができる支援ということで、いろいろありますが、特に技術支援に限らせて御説明させていただきたいと思います。委員がおっしゃるとおり、まず大企業と中小企業ですと、技術レベルがかなり違うところがありますので、そのまま大企業の持っている高度な技術を中小企業に導入しようと思っても、必ずしもうまくいきません。そこで、技術の翻訳というか、その間に中間技術というのがありまして、その中間技術をいろいろ御支援、御指導するということを産総研が行い、中小企業と大企業の間のギャップを埋めることができるのではないかと思います。それからもう一つ、いざ今度は技術導入を中小企業がしても、それを本当に大企業で実施していたような同じような精度が出るかというのは一つの大きな問題がありますので、きちんとした試験や分析等が必要であり、そういう面で、産総研がまた御支援したいと思います。
 また、技術以外の知的財産の面ですが、これは先ほどの御答弁でお話ししましたが、知的財産で、中小企業が非常に不利益をこうむらないように支援するため、今年度から、中小企業センターに委託し、知的財産の支援に関する事業を始めていきます。




<質疑>
 先ほども話が出たと思うのですが、R&Dネットワーク構想では、大企業から中小企業への技術移転ということだけではなく、県内中小企業が有するオンリーワン技術の大企業での活用ということもうたわれているのですが、これに関しては県はどういう形でかかわっていくことを考えているのでしょうか。

<答弁> 工業技術担当課長
 これは先ほどの答弁の繰り返しにはなりますが、産総研の方で、そのオンリーワン技術を技術分野別に整理して、大企業の方に紹介していきたいと思っています。これは今回インベスト神奈川で研究所の新設・増設を決定されている企業の方すべてにお会いしてお話をしたのですが、県内に優秀な中小企業のうわさは聞いており、自分たちもある何企業かとはお付き合いしているけれども、全体像は分からないということです。そこで、産総研が中小企業といろいろ日ごろからお付き合いしていることは皆さん御存じですので、是非紹介してくれないかということで、産総研の方で、分野別に整理して御紹介していくということをやりたいと思っています。




<質疑>
 今、産総研で、技術によって整理をして紹介をしていくということがありました。例えば中小企業が優秀な技術を持っているから、大企業の下請で入れるとか、そういうことではなく、もっとこれから考えられる中小企業の新しいメリットも当然考えて、このネットワーク構想があると思うのですが、この辺についてお聞きしたい。

<答弁> 工業技術担当課長
 実際に今いろいろな中小企業さんからの声であるのは、自分たちは結構高度な技術、独自のオンリーワン技術を持っているが、どうも下請としてしか見てくれないという部分があるということです。中小企業のすぐれた技術を持っている方が特に、自分たちをパートナーと見てほしいということをよくおっしゃっていますので、県としては、きちんと目ききをして、大企業の方に、これは非常にすぐれた技術であり、下請という意識ではなくパートナーとして見て、私どもがコーディネートしまして共同研究を進めていただくということをやっていきたいと考えています。大企業の方も、まず中小企業の方だけが来ただけではなかなか判断できないということがありますので、その間に立って、単に大企業にオンリーワン技術を使ってもらうだけではなく、共同研究をして、新しいものを生み出していく、付加価値の高い製品等を生み出していくというものにつなげていくということを産総研で是非コーディネートしていきたいと思っています。




<質疑>
 R&Dネットワーク構想、これがいわゆるこのインベスト神奈川のパターンとしたら、少し違うのでしょうけれども、中小企業支援を一番大きなねらいにしているということで、これを本当に実効あるものとするために、今後想定される最も大きなハードルというか課題があるとすれば、どんなことが考えられるのでしょうか。

<答弁> 工業技術担当課長
 今、考えられる一番大きな課題は何かといいますと、先ほどお話ししました共同研究で、何か付加価値の高いものを作っていくときに、大企業では、通常、すぐにビジネスにつながるような研究成果がすぐに出てしまうという場合には、完全に秘密にしてしまうという面があります。これとは逆に今回のR&Dネットワーク構想のように技術連携をしていこうという、オープンイノベーションについて、大企業では、普通どういうような共同研究をオープンイノベーションとして表に出していくかといいますと、割とリスクが高い、あるいはかなり開発に、基礎から製品化まで長い年月を要する、そういうようなものは大企業が代役だとか、ほかの企業と連携してやりたがっていこうとします。しかしながら、よほど余力があるところではないと、そのリスクが高いもの、長い期間かかるものはなかなかできないということです。そこで現在考えているのは、すぐビジネスにつながらないけれども、少し中期的な形で一緒に取り組んでいけば、いつか必ず花開くというようなのが見えているような研究、そのテーマ探しをしていきたいと思っています。そのテーマ探しを、R&D推進協議会を中心として、その分科会等で執務者レベルの会議なども予定していますが、そういう中で検討していくことが、今一番大きな課題ではないかと考えています。




<要望>
 それでは最後に要望を申し上げます。インベスト神奈川を策定して以来、世界的企業も含めて名立たる企業が神奈川県内に本当に大規模な投資を決定しているということで、当然その分、県も大企業に対して大きな優遇をしているわけですから、本当にこのチャンスを逃さずに、こうした企業の立地の効果を、とにかく県内の中小企業にしっかりと波及をさせていく必要があります。当然このインベスト神奈川の効果というのは、非常に波及を受けるその中小企業の収益とか雇用の促進とか、そういうものを全部含めて、これは計算をしていることだと思うのですが、とにかく中小企業へ、いい意味でしっかりと波及をさせていくということは大事かと思います。ですから、県がこのR&Dネットワーク構想でいろいろな取組を考えていることは理解をいたしました。また、とにかく県内の経済の基盤を支えている中小企業、そういった中小企業の集積の効果を少しでも多く、また幅広く御要望し、このネットワーク構想の中に盛り込まれている様々なフォーラムとか共同研究とか、そういったところに少しでも多くの中小企業が参画して、そして何よりも成果をきちんと得られるように、先ほど来たくさん名前が出ていますが、産総研がコーディネータとしてしっかりと積極的に働き掛けていっていただけるよう要望いたしまして、私の質問を終わります。