現在開会中の第159通常国会に、国土交通省と農林水産省により「景観法案」が提出されました。これは、全国の自治体が各々定めている、いわゆる「景観条例」の根拠法になるものとして、その成立が待たれているものと承知をしております。
この「景観法案」は、景観形成に関する基本理念を定め、また、景観形成に向けての国・自治体・事業者・住民の責務を明確にする一方、景観計画の策定、景観計画区域・景観地区等における規制や、景観整備機構の指定等については、自治体に強い権限を与えるものとなっております。
元来、日本は風光明媚な国でありました。「海岸線の美しさ、よく耕されている土地、濃く豊かな緑の草木、入り江の奥に林に囲まれてある村々、緑の丘を流れ下りて静かに牧場の間をうねる渓流。それらを眺めて心を楽しませた」。これは、ペリー提督が『日本遠征記』のなかで記した浦賀の様子です。また、昭和30年代頃までは、貧しければ貧しいなりの様式や秩序のようなものが保たれていたように記憶しております。
それが今では、どうでしょう。35年にわたって日本で暮らし、日本の村里を愛し続けたアメリカ人作家、アレックス・カーは現代日本を「ひょっとすると世界で最も醜いかもしれない国土である」とこきおろし、社会経済学者の松原隆一郎氏は「清潔で新しくはあっても秩序のないことにかけて、これほど突出している景観を持つ国は世界に類を見ない」と散々の評価です。
残念ながら、私も同感です。高度経済成長のなかで、あまりに行政が景観のコントロールを怠ってきた当然すぎる帰結だと、国も反省したからこその、今回の法案であると思っております。
さて、本県では、いわゆる「景観条例」は定めておりませんが、昭和62年に「魅力ある景観づくり指針」を定めて、市町村の条例づくりを支援してきております。
他県では、県みずからが「景観条例」を制定し市町村をリードしている例が多いようですが、本県の場合、従来から市町村が景観政策に積極的に取り組んでいるので、県は「指針」にとどめて、市町村の自主的な施策展開を側面からサポートする形をとっているものと思います。
今回の「景観法案」では、歴史的な街並み、景観上重要な建造物や樹木のほか、農山村部の里山や田園、屋敷林なども広く保全の対象に含めるとともに、自治体の権限が強化されるため、市町村においても条例改正が必要になってくると思われます。
また、新総合計画(案)を見ますと、「観光」や「ツーリズム」などの施策を今後、積極的に展開することとしておりますが、美しい風景は地域のイメージを高め、経済的な価値をもたらしてもくれます。
一方、カー氏や松原氏の指摘を待つまでもなく、一般市街地など普段、目にする風景が崩壊しつつあることは、誰の目にも明らかであります。これは、これまでの景観条例が特別で重要な地区ばかりに光を当て、一般市街地に対する視点に欠けていた結果であると考えられます。
そこで、知事にお伺いします。今回の「景観法」制定を機に、県はどのような施策をもって景観形成を促進させるお考えなのか。また、どのように市町村の条例改正をサポートしていくのか、所見をお聞かせください。
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