<海外県政調査の報告>調査の記録

10.環境税のメリットは何か。(2)

Dr. Walter Witzel, MdL
Haslacher Str. 61, 79115 Freiburg
Tel. 0761/7 11 54  Fax. 0761/7 11 59

もう後戻りはできない
 環境税の導入がEUで検討され始めた頃、EUは、まだ小さなEUでした。ドイツが先駆を切ったわけですが、当時はCDU(キリスト教民主同盟)も反対はしていなかったのです。彼らは政治的判断で、反対に回りました。2000年には、「環境税で物価が上がっている!」「道路改修費に充てる金額が下がっている!」などと、CDUは批判しました。
 しかし、この税収が年金財源に充てられなければ、2003年あるいは2004年の時点で年金は間違いなく破綻していました。これについては、CDUも認めているのです。

 本来であれば、もう一段階、税率を引き上げたいのだが、原油高の問題もあり、経済にダメージを与える恐れがあります。同じ政権党のSPDから、エネルギーに税金をかけすぎると消費が冷え込むという意見も出ている。「経済活性化のために、むしろ減税を」というSPDと論議を深めていかなくてはならないでしょう。ただ、年金財源の中で、環境税の占める割合は10%弱までになっています。後退させることは難しい。
 誰しも、ガソリンの値段が上がることは歓迎しないでしょう。1995年の「緑の党」党大会で、エコロジー専門家が当時1リットル2マルク弱(1ユーロ弱)だったガソリンを、5マルク(2.5ユーロ)にすべきと主張し、メディアや他政党から総スカンにあいました。その後、党勢が落ち込んでしまった苦い経験があります。
 いまだに、そのことをもって我々を急進的という人が少なくありません。しかし、その額はともかく、嫌われるからこそ、税の効果が出てくるのです。今、各地で公共交通の経営がうまくいっているのは、もちろん企業努力もあるのでしょうが、ガソリンの税金が上がって、自動車の使用が控えられていることを忘れないでほしいと思います。

 増税を主張しているにも関わらず「緑の党」を支持してくれているのは、平和や環境に強い関心を持つ人々です。未婚、既婚を問わず、女性が多いことも特徴。
 「反戦」はもちろんですが、兵役の義務については問題がないと考えています。18歳〜27歳を対象に徴兵していますが、その期間は10か月から1年間と、以前より短縮している。また、条件はあるが、宗教上の信念から兵役の拒否を認める制度も作りました。コソボ紛争の時は派兵を許しましたが、これは、彼の地で生きる人びとの人権を守る必要があったからです。

Dr.Witzel(長身!)を囲んで記念撮影
 Witzel氏の話から、連立に加わってからの「緑の党」の変化を見てとることができた。
 しかし、与党となった今も、街角に「Info Stand」を設置して情報を提供したり、街に出て集会を行なったり、インターネットを活用して市民の政治参加を促すなど、草の根市民政党としての姿勢は忘れていない。
 しかし、環境税を一般財源化し、その税収を社会保障などに充てて国民の負担を軽減する、いわゆる「税のグリーン化」「税収中立」は、私たちは「善」と捉えがちだが、ドイツでは一概にそういう反応ばかりとも言えないことがわかった。昨日のSWEGの主張と、必ずしも論点が噛みあっていたとはいえないが、今後の環境新税論議にさまざまな示唆を与えてくれた会見であった。