高齢社会の重い課題である、孤独死。
(3月21日)
 神奈川県では孤独死予防のための具体策はおろか、その実態調査も行なっていませんでした。
 おのでら慎一郎は、平成22年第1回定例会の代表質問を準備するにあたり、関係部局に対し、「手始めとして、高齢化の著しい県営住宅で孤独死の実態調査を行なうべきである」と主張し、質問を準備しました。持ち時間の関係で、代表質問ではなく、その後の予算委員会で同僚の亀井たかつぐ議員(横須賀市選出)に質疑を行なっていただいた結果、県が調査に乗り出すことになりました。
 おのでらが準備していた質問原稿と、県が調査を始めることを報じた3月21日の神奈川新聞の記事を掲載しておきます。

 私の地元の県営住宅で、一人暮らしのお年寄りが、誰にも看取られず、亡くなっているという、いわゆる「孤独死」と見られるケースが徐々に多くなってきています。
 孤独死という言葉は、もともとは神戸新聞が震災後の4月5日に使い始めた言葉で、法医学的に定義されてはいませんが、URによると「団地内で発生した死亡事故のうち、病死または変死の一態様で、死亡時に単身居住している賃借人が、だれにも看取られることなく賃貸住宅内で死亡した事故(自殺および他殺を除く)」ということだそうです。今や、孤独死は高齢化社会が進む日本の中で、大きな問題のひとつとなっています。千葉県松戸市の常盤平団地では、2001年秋、団地に住む59歳の独身男性が死後3年経って、白骨死体で発見されました。「人生の最期がこれではあまりに切ない。」このような住民の思いから、この常盤平団地では、「孤独死ゼロ作戦」が展開されています。
 「いのちを守りたい」の一言から始まった鳩山首相の施政方針演説でも「一人暮らしのお年寄りが、誰にも看取られず孤独な死を迎える、そんな事件をなくしていかなければなりません。」と、孤独死の問題に触れていました。高齢化に伴う一人暮らしの増加、核家族の普遍化、また、リストラなどが孤独死を発生させる社会的背景にあります。高齢者が家族とともに暮らせない住宅の貧困も、もちろん一因です。そうした社会のゆがみが孤独死という形で表面化するのです。政府にはぜひ、孤独死防止のための具体策を望みたい
 ところが、本県でこの孤独死について調べようと思っても、その数すらはっきりとしないことがわかってまいりました。警察では、事件性の有無が重要ですから、「変死」というデータはありますが、独居かどうかは関係ありません。県営住宅でも、いわゆる「事故住宅」はわかりますが、「孤独死」という統計はないとのことであります。
 和歌山県では、高齢化の進展に伴い、孤独死が深刻化していることから、07年度に実態調査を行ったとのことであります。
 県内でも、市町村による独自の取組みが進んでおります。川崎市は、一人暮らし高齢者に定期的に電話をかける「福祉電話事業」や、ペンダント型の通報装置を使い、緊急通報の二十四時間受信・対応を行う「緊急通報システム事業」などを実施しているとのことであります。
 また、横浜市都筑区の市営住宅・勝田団地では、自治会や民生委員などが市の支援を受けて「かちだ地区おもいやりネットワーク連絡会」を08年6月に結成し、高齢者に緊急連絡先を登録してもらったり、夜に居室の照明がついているかどうかなどを確認する「さりげない見守り」に取り組むなど、住民レベルの取組みも始まっております。
 このように、他県や市町村、民間レベルでは様々な取組みが展開されているにもかかわらず、本県では、県営住宅における孤独死の実態すら把握できていないのが実情であります。これからますます高齢化が進む本県において、これまで何らの実態調査すらなされていないのは非常に残念であります。
 東京都の都営戸山団地では、「シルバー専用棟」を設置しております。このシルバー専用棟では水道が12時間使用されないと住み込みの生活協力員や警備会社に通報され、居間、トイレ、キッチンなどの各部屋に設置された通報ボタンで外部に救助を求めることができます。また、玄関ドアの鍵の抜き差しで、居住者が外出中か滞在中かを管理室に知らせるシステムも設置されているのであります。
 すべての孤独死に行政が対応することは難しいかも知れませんが、せめて、県が設置している県営住宅において、孤独死を防ぐような、何らかの取組みを行うべきではないかと強く感じるところであり、そのためには、住宅施策と福祉施策の連携は不可欠であります。
 そこで知事にお伺いします。
 少子高齢社会が進む中で、人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むことであります。県営住宅における孤独死を防ぐための取組みに、県として一刻も早く着手すべきであると考えますが、知事のご所見をお伺いします。
平成22年3月21日 神奈川新聞