4年前の、公共広告機構のCMが心に残っている。心に深い悩みや苦しみを抱える若者に対し、どう向き合っていいか戸惑う私たち。深夜、居場所を求めて、街のよどみに身を沈める若者たちがいても、見て見ぬふりをし、あるいは眉をひそめて傍らを通り過ぎるだけの私たち。
夜回り先生こと水谷修先生は、これまで何千人という、そうした十代の若者たちと向き合い、彼らを救うために、文字通り、自身の命と生活を投げ打って実践をされてきた。
自らが関わりながら、ドラッグで死なせてしまった若者の話をするときの先生の顔は、後悔と怒りで、まるで慟哭する鬼のようだ。
大麻に対しては他の薬物と区別し寛容であるべきだと主張する人たちがいる。たしかに大麻は毒性も習慣性も弱いが、そこに精神作用や刺激を求めて手を出している以上、コカインや覚せい剤等にエスカレートしていくのは時間の問題。大麻はゲートウェイ(入り口の)ドラッグにはならないという説もあるが、私が以前、働いていた業界の周辺でも、大麻だけでは済まずに覚せい剤やコカインなどに手を染め、人生をしくじった人がいたという事実がある。
少なくとも、少年少女からは、すべてのドラッグを遠ざけなくてはならない。そして、家庭は子どもが無条件で心休めることのできる場所でなくてはならない。
この日の講演は、それを教えてくれた。