給付つき税額控除は◎なのに定額給付金は×の「なぜ?」
(3月15日)
 神奈川県の松沢知事は、定額給付金を「愚民化政策」とこき下ろした。一人当たり1万2000円も配ったら、国民におねだり体質が芽生え、自主自立の精神が損なわれるのだという。まあ、1〜2ヶ月遊んで暮らせるぐらいもらえるならまだしも、1万2000円から2万円程度のお金で国民は堕落もしないしバカにもならないでしょう。旧正月を前に一人約1万円の消費券配布で盛り上がっていた台湾の人たちや、今回、定額給付金を受け取って喜んでいる人々は、知事から見れば「愚民」ということになるのだろうか。
 民主党などの野党も定額給付金を選挙目当てのバラマキなどと激しく攻撃しているが、その民主党も「給付つき税額控除」なるものを政策として掲げている。同党の鳩山幹事長は「定額給付金とはぜんぜん違う」といっているが、そんなに違うのだろうか。
◇元は給付つき定額減税
 公明党は昨年8月、「定額減税」の実施を強く主張。ただ、それだけでは所得が課税最低限以下の世帯や住民税非課税世帯に恩恵が及ばないため、そこには減税額に見合った給付を行なうことを提案した(給付つき定額減税)。その後、所得税と住民税の減税時期がズレて効果が分散してしまうことを防ぐ等の理由から、給付金方式で一括実施することになったのだ。
 いっぽうの「給付つき税額控除」。所得控除方式では、どんなに控除額が大きくても課税対象所得はマイナス(0円以下)にはならないので減税のしようがないが、税額控除方式では当初の所得税額より税額控除が大きければ、税額はマイナスとなり、その分の金額を減税=給付金として受け取ることができる。こちらは米国や英国、カナダなど先進諸国で導入され世界的な潮流にもなってきてはいるが、所得により給付額が変わるほか、継続を前提とした制度だけに、実施には所得の捕捉や複雑な制度設計が必要だ。一回限りで、しかも急いで実施したいことから、今回は「定額給付」ということになった。
◇唯一の家計支援策
 いずれにせよ、方程式の立て方は異なるものの、ともに導き出される「解」には、それほど大きな差がないにもかかわらず、野党が定額給付金ばかりを槍玉にあげ「反対」「廃止」と叫んだのは、政策よりも政局を優先してきたからにほかならない。
 国民の8割近くが定額給付金を評価しない(ただし9割以上は受け取る)という「世論調査」があるが、いっぽうで、こんな分析もある。
 「野党やマスメディアが盛んに批判したために、少なからぬ国民が、給付金には胡散臭さを示さないと具合が悪いと思っているのである」「野党はいったい何を根拠にして『定額給付金は国民に迷惑』と決めつけているのだろうか」(田原総一朗氏 週刊朝日1月23日号)
 雇用対策、中小企業支援、学校耐震化など、総額75兆円規模(21年度当初予算まで)の経済対策のうち2兆円の定額給付金は唯一の家計支援策だ。果たして口を極めて罵らなければいけない政策なのだろうか。