8月2日

「酒と映像と芝居の日々」

 保土ヶ谷駅西口から帷子商店街を歩き、踏切を渡ると、右手に大嶋屋という酒店があります。商品のほとんどが冷蔵ケースのなかという、気合の入ったお店です。店主の樋口伊喜夫さんが選び抜いたベルギービールと吟醸酒が、ゆっくりと、違いのわかるお客を待っています。
 日大芸術学部の出身で、記録映画の撮影・制作もされている樋口さんですが、実は、もうひとつの顔を持っています。劇団でお芝居の演出なども手がけているのです。今日は、その劇団<横浜にゅうくりあ>の公演がありました(『マリアルーズ号の夏』あかいくつ劇場)。
 1872(明治5)年、帆柱の修理のため横浜港に入港したペルーの帆船のなかに230人もの清国人が捕らわれていることを知った、時の神奈川県権令・大江卓は、多くの困難を乗り越えて清国人を解放します。これが、日本の人権運動の原点といわれる「マリアルーズ号事件」です。権令とは、今でいう副知事ですが、このとき、大江卓、25歳! すばらしい県政の大先輩の存在を、恥ずかしながら、このお芝居で初めて知りました。
http://www.age.ne.jp/x/yokohama/ijinkan/ooe.htm
http://www.city.yokohama.jp/me/naka/contents/rekisi-4.html
http://www.city.sukumo.kochi.jp/kankou/h06.html

酒はしみじみ味わって飲まなきゃ、という気持ちにさせる店です。店内に立っているのが店主の樋口さん。
 また、樋口さんのカメラワークについては、映画マニアのホームページで次のように紹介されていました。
http://www.asahi-net.or.jp/~uy7k-ymst/0111/zakki0111.htm
『怪異談・生きてゐる小平次』
(1982年・ATG/監督:中川信夫)
 中川監督77歳の時の作品で遺作。前作『お勝兇状旅』から13年経過していましたが、中川監督が持つ独特の美学が遺憾なく発揮されています。老監督の作品とは思えない斬新な映像ですよ。(中略)それと、カメラがこれまた素晴らしい。撮影を担当した樋口伊喜夫という人を私は知らないのですが、その鋭い映像感覚はタダ者ではありませんよ。
人間の尊厳とは何か、を考えさせられる
『マリアルーズ号の夏』。